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第三章 南へ
04 サウストリア
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最初はどうなる事かと思っていた南への旅は、サウストリア領に入った頃から多少穏やかなものになった。
花の咲く時期、サウストリアには魔物がほとんど現れる事はなく、初めて見る美しい景色は心を穏やかにもさせた。
流石にウエストリア領を出たので、バーナードも帰る事を諦めたのかもしれないが、野営が続いていたのでミュールの街でイスレイン家の屋敷に留まる事になった。
「ドロテアに行けば、僕は転移門を使ってタルパスまで帰る事が出来るのに」
しばらく大人しくしていたバーナードが又ぶつぶつ言いだす。
「転移門を使って移動すると酔うぞ」
「えっ?」
「俺でも最初は気分が悪くなったんだ。普段魔力を使っていないバードが転移門を使ったら大変な事になるぞ」
「大変な事ってなんだよ」
「行先を間違えて、北に行くとか」
「えっ!?」
「そんな話、聞いた事は無いと思うけど、、、」
「酔う奴がいるのは本当だ」
「ウルフ、バードを揶揄ったらダメだよ」
「せっかく出て来たウサギが、巣穴に戻ったら大変だ」
ウルフレッドがバーナードを連れ出したい気持ちは分かるし、その必要性も感じている。
彼の考える魔道具は、決して悪いものでは無いが、今の自分達が使える物でも無いのが事実だった。
「バードの考える物は、先に進み過ぎていて今は使いようが無い」
「さき?」
「そうだ、もっと先の世の中であれば使えるかもしれないが、、、今が無ければ先にも進むことはできない」
「もっと現実的な物って事?」
「そうだな。悪いとは思うが、遊ばせておく余裕は無いからな」
「そう言えばいいのに」
「そんな事をしたら面白くない」
最後の一言が、ウルフレッドの戯言だとしても、余裕が無いと言うのは本当だろう。
イズル王は十数年をかけて、王都に二つ目の外壁を作ると言う“国策”を行った。
この数年前に完成した城壁を作る為の費用は、領主達の負担となり、それはエルメニアの領主を疲弊させていた。
そして疲弊した領主達の中には、自領の領民達との約定を守れないものを生じさせてもいる。
領主は領民の安全を守る責任があり、彼らを養っていく義務を負う。
領主である貴族との約定が守られていない場合、領民は自領を出る事も、領主である貴族自身を放逐する事も出来る。
放逐された貴族の領地は王室に召し上げられ、他の貴族に与えられる。
エルメニアの領民達は、ある意味自分達で仕える領主を選ぶ事も出来るが、新しく自分の土地に来た貴族とは新しい約定を結ばなければならない。
その約定が必ずしも以前のものより良いとは限らないし、何度も領主の変わる土地を欲する者が現れなければ、自分達を守ってくれる人もいなくなる。
過度な約定を領民と結んで、領主の力が弱くなれば従う貴族も少なくなり、騎士達が減れば農地や領民を守る事も出来ない。
領主とその土地で生活する者達は、主従であると同時にお互いを守る相手でもあった為、領主である貴族が力を失うと、領民達の生活も悪くなるのが普通だった。
ウエストリア領は、一人の領主が治めている。
王都にいたセリス様の手腕によるものか、以前から余裕があった為か、“国策”でウエストリアの領民の生活が極端に悪くなる事は無かったが、この十数年は、明らかに街道や街の整備に手が回らなくなっているのも事実だった。
やっと四年前に外壁が完成し、王都の問題からは解放されたが、翌年から日照りが続いたため作物の出来が悪く、その為の治水工事が終わったので、ウルフレッドもやっと外に行く事が出来ている。
彼がそれほど余裕は無いと感じているなら、今の生活が守られていても、ウエストリアでさえ余裕のある状態ではないという事になる。
「バードに何を作らせたいと思っているのさ」
「まず、魔物が近くに来なくなる魔具だな」
「篝火では、消えるからだめなの?」
「火事になる事も多いからな、もっと安全な物でないと困る」
「なるほどね、、、他には?」
「そうだな、もっと簡単に誰でも使える魔道具ならそれでいい。火を付ける、水を温めるなどの道具かな」
「火を付けるのは、火種を残す必要が無くなるね」
「そうだな」
「温めるのは?」
「俺が浴槽に入るのが好きなだけだ、湯を運ぶより水を運ぶ方が楽だ」
「そう言うこと?」
「仕方ないだろう? 俺はバードでは無いんだ、アイツが考えるような妙な物は思いつかん」
「ウルフが素直にそう言えば、バードは喜んで考えると思うけど、、、」
「言っただろう、そんな事をしたら面白くない」
照れ屋なのか意地っ張りなのか、彼は始めて会った頃から本当に変わらない。
花の咲く時期、サウストリアには魔物がほとんど現れる事はなく、初めて見る美しい景色は心を穏やかにもさせた。
流石にウエストリア領を出たので、バーナードも帰る事を諦めたのかもしれないが、野営が続いていたのでミュールの街でイスレイン家の屋敷に留まる事になった。
「ドロテアに行けば、僕は転移門を使ってタルパスまで帰る事が出来るのに」
しばらく大人しくしていたバーナードが又ぶつぶつ言いだす。
「転移門を使って移動すると酔うぞ」
「えっ?」
「俺でも最初は気分が悪くなったんだ。普段魔力を使っていないバードが転移門を使ったら大変な事になるぞ」
「大変な事ってなんだよ」
「行先を間違えて、北に行くとか」
「えっ!?」
「そんな話、聞いた事は無いと思うけど、、、」
「酔う奴がいるのは本当だ」
「ウルフ、バードを揶揄ったらダメだよ」
「せっかく出て来たウサギが、巣穴に戻ったら大変だ」
ウルフレッドがバーナードを連れ出したい気持ちは分かるし、その必要性も感じている。
彼の考える魔道具は、決して悪いものでは無いが、今の自分達が使える物でも無いのが事実だった。
「バードの考える物は、先に進み過ぎていて今は使いようが無い」
「さき?」
「そうだ、もっと先の世の中であれば使えるかもしれないが、、、今が無ければ先にも進むことはできない」
「もっと現実的な物って事?」
「そうだな。悪いとは思うが、遊ばせておく余裕は無いからな」
「そう言えばいいのに」
「そんな事をしたら面白くない」
最後の一言が、ウルフレッドの戯言だとしても、余裕が無いと言うのは本当だろう。
イズル王は十数年をかけて、王都に二つ目の外壁を作ると言う“国策”を行った。
この数年前に完成した城壁を作る為の費用は、領主達の負担となり、それはエルメニアの領主を疲弊させていた。
そして疲弊した領主達の中には、自領の領民達との約定を守れないものを生じさせてもいる。
領主は領民の安全を守る責任があり、彼らを養っていく義務を負う。
領主である貴族との約定が守られていない場合、領民は自領を出る事も、領主である貴族自身を放逐する事も出来る。
放逐された貴族の領地は王室に召し上げられ、他の貴族に与えられる。
エルメニアの領民達は、ある意味自分達で仕える領主を選ぶ事も出来るが、新しく自分の土地に来た貴族とは新しい約定を結ばなければならない。
その約定が必ずしも以前のものより良いとは限らないし、何度も領主の変わる土地を欲する者が現れなければ、自分達を守ってくれる人もいなくなる。
過度な約定を領民と結んで、領主の力が弱くなれば従う貴族も少なくなり、騎士達が減れば農地や領民を守る事も出来ない。
領主とその土地で生活する者達は、主従であると同時にお互いを守る相手でもあった為、領主である貴族が力を失うと、領民達の生活も悪くなるのが普通だった。
ウエストリア領は、一人の領主が治めている。
王都にいたセリス様の手腕によるものか、以前から余裕があった為か、“国策”でウエストリアの領民の生活が極端に悪くなる事は無かったが、この十数年は、明らかに街道や街の整備に手が回らなくなっているのも事実だった。
やっと四年前に外壁が完成し、王都の問題からは解放されたが、翌年から日照りが続いたため作物の出来が悪く、その為の治水工事が終わったので、ウルフレッドもやっと外に行く事が出来ている。
彼がそれほど余裕は無いと感じているなら、今の生活が守られていても、ウエストリアでさえ余裕のある状態ではないという事になる。
「バードに何を作らせたいと思っているのさ」
「まず、魔物が近くに来なくなる魔具だな」
「篝火では、消えるからだめなの?」
「火事になる事も多いからな、もっと安全な物でないと困る」
「なるほどね、、、他には?」
「そうだな、もっと簡単に誰でも使える魔道具ならそれでいい。火を付ける、水を温めるなどの道具かな」
「火を付けるのは、火種を残す必要が無くなるね」
「そうだな」
「温めるのは?」
「俺が浴槽に入るのが好きなだけだ、湯を運ぶより水を運ぶ方が楽だ」
「そう言うこと?」
「仕方ないだろう? 俺はバードでは無いんだ、アイツが考えるような妙な物は思いつかん」
「ウルフが素直にそう言えば、バードは喜んで考えると思うけど、、、」
「言っただろう、そんな事をしたら面白くない」
照れ屋なのか意地っ張りなのか、彼は始めて会った頃から本当に変わらない。
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