エルメニア物語 - 黄金の狼は退屈な日常を満喫する -

小豆こまめ

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第三章  南へ

13 バーナードの相手(1)

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 結局、早く船を造りたいバーナードと一緒に、二か月もしない間にサウストリアからタルパスに戻ったファーレン達をライオネルが迎えてくれた。

「六か月とは思いませんでしたが、、、まさか二か月で帰って来るとは思いませんでしたよ」
「これでも頑張ったんだよ」
「まぁ外に出ただけでも良しとすべきなんでしょうが、、、、、、それよりバードは、何を始めるつもりですか?」

 バーナードが保管箱から魔道具の設計図を取り出し始めるので、ライオネルが慌てて声をかける。

「ライにも見て欲しいんだよ」
「私もファーと同じで魔道具については、良く分かりませんよ」

「ウルフが“守りの魔具”を作れって言うんだけど、魔具の事は良く分からないし、僕だけだと時間が掛かりそうなんだよなぁ」
「それならイリノアの街にいるゼム殿に相談する方がいいでしょう」

「ゼムって、ウルフの火炎を作った人だよね?」
「えぇ、剣も火炎も彼が作ったものですよ。新しい物を考えるのも好きな人ですし、、、バードとは話も合うのではないですか?」

「イリノアの街かぁ、、、」
「あちらにもバードの研究室を作る事は出来ますよ?」
「そうなんだけど、、、」

「バードはカストリアの家を離れられない理由があるんだよ」
「理由?」
「別にそんな事はないよ、、、」

「何かカルイザに問題があるなら、私の方で対処する事も出来ると思いますが、、、」
「本当に?」

 バーナードが嬉しそうな顔をするので、それは良くないとたしなめる。

「バード、そこは自分でなんとかしようよ」
「何の話をしているんですか?」
「いや、、、その、、、」

「バードは、メルサ夫人の侍女と約束を交わしたいみたいだよ」
「ダニエラ嬢とですか?」
「知っていたの?」

「ダニエラ嬢が学び舎に行かれたのは、私がウエストリア家にいる頃の話ですから」
「僕がエラを気に入っているなら、妻に迎えればいいって、ウルフが、、、」

「それは良いと思いますが、それなら私が手伝う事は出来ませんね」
「でも約束事なんてどうすればいいんだよ、相手が貴族なら家に申し込む事も出来るけど、、、」
「ではゼネルト家を通しますか?」

「それは嫌だよ、縁を切った家との関わりを彼女に持たせたくない」
「では本人に申し込むしかありませんね」

「本人に?」
「はい」
「直接?」
「それがいいのでは無いですか?」

「断られたら?」
「諦めるか、何度も申し込むかのどちらかでしょうね」
「そんなぁ」

 バーナードが相変わらず情けない声を出す。

「確かにダニエラ嬢と話を進めるなら、急いだ方が良いかも知れませんね」
「ウルフが騎士達にも人気があるって言っていたけど、、、」

「侍女にしては礼儀作法もしっかりしていますし、妻にと考える者は多いと思いますよ」
「そんなのどうでもいいよ」

「気にしないのですか?」
「彼女はとっても楽しそうに僕の話を聞いてくれるんだ」

 言葉で説明するのは難しいが、バーナードは、彼女の考え方やプラス思考な所が好きだった。

 何かを新しく作ると言う事は、失敗の積み重ねだ。

 魔道具の設計図を何枚描いても、頭の中で何度シュミレーションしても、実際作ってみれば八割の物は思った様に動かないし、残り二割は、全く動いてくれない物が出来上がる。

 何度も失敗を繰り返し、少しずつ思った様に動かして行くのだが、分かっていても失敗が続けば落ち込む。
 だが彼女は、そんな失敗を繰り返すバーナードを凄いと言う。

『こうして何度も頑張っている人がいるから、私達が使う道具か出来上がるんですね』

 エラは、繰り返される失敗が無駄では無いと言って笑い、自分もミスをして母上に叱られたが、次は間違えないと胸を張ってみせる。

 そういう彼女が可愛いと思うし、このまま側にいて欲しいと思う。

「では、そのままの気持ちを伝えるしか無いのでは?」
「そうなんだけど、、、」

 今まで何の疑いも無く、ずっと屋敷にいてくれるものだと思っていたので、エラが他人の妻になる可能性があるとは考えてもいなかった。

「何を迷っているのですか?」
「だって、僕が彼女を望んでいいのか気になるだろ?」

 自分と結婚するという事は、貴族であった身分を捨て、既に自分の道を歩き始めたエラをまた縛る事になる。

「無駄なことを、、、」
「考えているだけさ」
「バード、相手の事をいくら考えても理解など出来ませんよ」

「じゃぁ、どうするのさ」
「話し合うべきでしょうね」
「話し合う?」

「貴方の気持ちを伝えて、彼女が何を考えているのか、バードの事をどう思っているのか本人と話すべきでしょう」
「本人と?」

「他の誰と話すと言うんですか」
「直接?」

 ライオネルが呆れて答える。

「ダニエラ嬢は既に16歳になられていますし、メルサ夫人がバードの気持ちに気付かず、他の者と縁を結ばせようと考えても知りませんよ」
「分かってるよ」

 母が家に仕える娘達の面倒を見るのが、自分の責務だと思っている事は良く知っている。
 だが、その母がエラを自分の婚約者と考えていないのは、バーナードが彼女に相応しく無いと思っているからではないだろうか?

「バード、メルサ夫人がどう思っているかでは無く、ダニエラ嬢がどう思っているかですよ」
「そうだよ、それに大切なのは、君がこれからどう彼女を幸せに出来るかだ」

「分かってるよ、『どうしても手に入れたいなら、必死になるしかない』だろ?」

 人を相手にして来なかったのは自分の責任なのだから、まずエラに受け入れて貰えるよう頑張るしかない。
 それに失敗なら何度も経験しているから、今更怖がっても仕方がない。
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