エルメニア物語 - 黄金の狼は退屈な日常を満喫する -

小豆こまめ

文字の大きさ
37 / 74
第四章 ミリオネア

02 ガリウス

しおりを挟む
「なぁ、昨日の銀貨は使えたか?」
「またお前か」

「まだあるんだ、使えたなら交換してくれよ」
「これはダメだ」
「ダメ?」

「これはガネイ銀貨と言って、エルメニアの銀貨では無いからな、いくら貴族でも使えば捕まる」
「知ってたのか?」
「調べれば分かる」

「ちぇ、使えないのかよ」
「だが、交換所に持っていけばエルメニア銀貨と変えて貰えるぞ」
「本当か?」

「銀には違いないからな。只、含まれている銀の量も少ないし、鋳造し直す必要があるからガネイ五枚でエルメニア銀貨一枚ってとこだろうな」
「五分の一かよ」

「どうせ海の中から拾ったものだろう」
「元手が無いからと言って、安く手放したら儲けが減るじゃないか」
「なるほどな」

「なぁ、いいのか?」
「何がだ」
「昨日交換して貰った銀貨だよ、使えないんだろ?」

「嫌だと言ったら買い戻してくれるのか?」
「あぁ、銀貨一枚の価値がないなら仕方がない」

 少年がエルメニア銀貨をポケットの中から取り出して、ウルフレッドに差し出す。

「お前、面白いな」
「俺は全然面白くないよ、これで銀貨に交換出来れば、一儲け出来ると思ったのにさ」

「ふ~ん、では儲けてみろ」
「おれは商売人だぜ、偽物を本物だと言って売るつもりは無い」
「そうでは無い、俺はこの銀貨を気に入ってる」

「気に入ってる?」
「そうだ。ガネイ銀貨は古い物だし、細工も美しいからな、エルメニア銀貨と交換しても惜しくない」
「そうなのか?」
「あぁ」

「つまり銀貨としてでは無く、珍しいから欲しくなったという事か?」
「そうだ」

「エルメニア銀貨と交換するくらい、この銀貨って珍しいのか?」
「あぁ、それに古いものを身に付けていると良い事があると言うだろう?」
「分かった」

 ウルフレッドと話していた少年が、納得したのかと思えば、今度はオルグの方を向いて話しかける。

「なぁ、あんたもこの銀貨を買わないか? 今ならエルメニア銀貨一枚にまけとくよ」
「最初から一銀貨だったと思うが、、、」
「これからは、“一銀貨と二十銅貨”にしようと思ってさ」

「ハハッ、負けたなオル」
「分かりました」

 エルメニア銀貨を一枚渡して、ガネイ銀貨を一枚貰う。
 確かにガネイ銀貨の細工は綺麗だが、オルグは物を集める趣味は無い。

 どんな時でも自由に動けるように、なるべく身軽にしているため、保管箱さえ持ち歩かないのに財布に入れる事の出来ない銀貨など邪魔でしかない。

 だが古いものを身に付けると、“良い事がある”以外にも“身を守る”とも言われているので、ウルフレッドが持っていろと言うなら仕方がない。

 国を離れている間、オルグは食べ物が合わず体調を崩す事があって、それ以来、彼が気にしている事は知っている。

「銀貨に細工して、首から掛けられるようにすればいい」

 こういう所は本当に細やかだと思うが、彼は『お前がいないと、俺が困るからだ』と言うに違いないので、好きに言わせていると、隣でまた少年に知恵を付けている。

「古い硬貨を磨くなよ」
「綺麗になった方がいいだろ?」

「古いものは、古く見えるからいいんだ」
「そんなものか?」
「あぁ」
「へぇ~、変わってんなぁ」

「それからガネイ金貨を持っているなら、人に知られるな」
「なぜ?」
「金貨の方は、銀貨よりずっと数が少ないし、エルメニア金貨以上の価値がある」
「そうなのか?」

「そう言った物を集めている者なら、高値で引き取るだろう」
「お前もか?」
「俺は興味が無いな。金貨になっても細工は変わらないと聞いているし、見てみたいとも欲しいとも思わん」

「金貨かぁ、俺が銀貨を見つけたのも偶然だったからなぁ」
「無理して海を探すなよ」
「分かってるよ、いくら金貨を見つけても、魔物に喰われてしまっては意味が無いからな」

 そう言ったかと思うと、少年が礼を言って離れて行く。

「名前も聞かなかったね」
「あぁ」

「気に入っていたみたいなのに、、、」
「また会う事があるさ」
「まぁ、確かに、、、彼は商売の為なら、ウエストリアの屋敷にでも売り込みに来そうだ」

「次は何を持って来るか、楽しみになっただろう」
「僕に買わせようとしないなら、何を持って来てくれてもいいよ」

 翌日、やっとミリオネア行きの船が決まって、ロートアの街を離れた。

 オルグにガネイ銀貨を売りつけた少年は、後にガリウス商会の主となってウエストリアに来るようになった。
 彼が来た時は、ウルフレッドと同席しないようになったので、あれ以来、彼に商品を売りつけられた事は無い。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【読切短編】転生したら辺境伯家の三男でした ~のんびり暮らしたいのに、なぜか領地が発展していく~

Lihito
ファンタジー
過労死したシステムエンジニアは、異世界の辺境伯家に転生した。 三男。継承権は遠い。期待もされない。 ——最高じゃないか。 「今度こそ、のんびり生きよう」 兄たちの継承争いに巻き込まれないよう、誰も欲しがらない荒れ地を引き受けた。 静かに暮らすつもりだった。 だが、彼には「構造把握」という能力があった。 物事の問題点が、図解のように見える力。 井戸が枯れた。見て見ぬふりができなかった。 作物が育たない。見て見ぬふりができなかった。 気づけば——領地が勝手に発展していた。 「俺ののんびりライフ、どこ行った……」 これは、静かに暮らしたかった男が、なぜか成り上がっていく物語。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

処理中です...