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第四章 ミリオネア
08 ヒューイ(2)
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足早に“精霊使い”が離れて行く。
「逃げられたな」
「ウルが追い詰めるから」
「気になっているのはオルも同じだろ?」
「そりゃあ、あれだけ他の人と気配が違えば気になるよ」
「知られたく無いと言う訳か、、、、、、」
「探る事は出来るよ?」
「敵意でも感じれば調べる必要もあるだろうが、、、アイツからどうも敵意を感じ無いんだよなぁ」
「嫌われているのにね」
「そうなんだよなぁ」
「そこは否定しないんだ」
相変わらずだ。
それが人であれ、物であれ、興味のある事柄を、中途半端にする様なウルフレッドでは無かった。
だが相手が本当に嫌がるような事はしない。
"精霊使い"が只の人では無いとは思っている様だが、勝手に調べる様な事をしたく無いと思っているみたいだ。
すると"精霊使い"が座っていた場所に何かが落ちている。
「なんだろう?」
「どうした」
「彼の物かな?」
オルグが拾ったのは、銀色のロケットで、ウルフレッドが開けると中に綺麗な女性の絵姿が描いてある。
「これは見事だ」
「もう、人の物を勝手に」
「不可抗力だ」
確かに無理に開けてはいないが、不可抗力と言える状態でも無かった。
「また会う事になりそうだ」
「彼の物だと?」
「だろうな、良く似ている」
「彼の瞳が、緑色ならね」
「明日、分かるさ」
「これ以上、嫌われないでよね」
「俺は、嫌われたいとは思ってないぞ」
「そう見えないんだけど?」
「あまり素直に反応するから、面白いと思っているだけだ」
「帰りの船に乗れなくならないよね」
「心配するな、精霊にそう言った思考は無い」
「なぜそう思うの?」
「彼らの行動はよく言えば素直、悪く言えば単純で、どちらかと言えば肯定的な気持ちに強く反応する」
「肯定的?」
「つまり『帰らせたくない』より『帰りたい』という願いの方が叶いやすい」
「何を根拠に」
「精霊達はこちらの魔力の強さより、願いの強さの方により反応する。子ども達だと、主張の強い方という事だな」
「つまり、こちらが『帰りたい』と強く願えば、そちらが優先されるってこと?」
「多分な」
「曖昧だなぁ」
「大丈夫さ、アイツだって顔も見たくない相手を、何時までも島に残さないだろう」
「ウル、こんな所で敵を作らないでね」
「オル、何度も言っているが、俺は敵を作っているつもりは無い」
ウルフレッドがどう思っているかではなく、彼がどう感じているかが問題だ。
彼は昔から何とも思っていない相手には優しく出来るのに、気に入った相手を困らせてみたりする。
その反応が面白いと思っているからなのだが、気にいられた方は迷惑な話だ。
おまけにウルフレッドはそれを分かっていて、敢えて困らせているから本当に質が悪い
翌日、世話になっている家の近くにいると彼がやって来る。
「ちょっと話があるんだけど、、、」
船の"精霊使い"が、ウルフレッドに話しかける。
ちょうど朝食を食べていたので、ウルフレッドの周りには子ども達が沢山集まっていた。
「ありがとな、しばらくこの兄ちゃんと話があるんだ」
そう言うと、子ども達も良く分かっていて離れて行き、十分に離れるとウルフレッドの方から話しかける。
「なんだ」
「昨日拾った物を返して欲しい」
「何故、俺が持っているのを知っているかは聞かないが、俺が拾った物が、お前のだとは言えないだろう?」
「僕の物だよ」
「俺には分からん」
「どうすればいいのさ」
「身内の絵姿だと言うのなら返すさ」
「瞳の色を見せろって事?」
「それが同じなら、身内と言われても納得出来る」
「何故、そんなに瞳の色を知りたいのか理解出来ないよ」
「俺には何故、そんなに隠すのかが理解出来ないな」
「別に分かっているなら、敢えて見る必要なんか無いだろ?」
「推測に過ぎない答えを、知りたいと思うのは当然だろ?」
こういう言い合いで、彼がウルフレッドに勝てるとは思えない。
暫く考えていた彼が、ため息をつきながらフードで隠すように僅かに瞳を開ける。
ロケットに描かれた女性と同じ色の瞳が現れ、その瞳がウルフレッドを睨む。
妙な人を敵にしたくないのに、睨まれた本人は気にする様子も見せず、持っていたロケットを彼に渡している。
「誰の絵なんだ?」
「えっ?」
「その絵姿だよ」
「周りの人に見せていないの?」
「見せて欲しかったのか?」
「そうじゃないけど、、、」
ミリオネアは、僅か数百年前に出来たエルメニアとは、比べものにならないくらいずっと昔からある国だ。
色々な伝説も語り継がれているが、かつて精霊王の娘が他国から来た人に恋をして、国を離れたことも昔語りのように残っている。
ヒューイが持つ細密画ほどでは無いが彼女の絵姿も残っていて、ロケットの絵を見せれば誰を描いたものか知る事は出来るはずだった。
「、、、姉だよ」
「そうか、悪かったな」
彼がウルフレッドをもう一度睨みながら言っているのが聞こえてくる。
「貴方は本当に嫌な人だな」
もっと知られたくない所まで踏み込んで来られれば、“排除する事”も“敵になる事”も出来ただろうに、それをさせないウルフレッドを、“嫌な人”としか言えない彼に少し同情する。
それも“嫌な人”と言われて嬉しそうに笑っているような人なのだから、この島にいる間は我慢してもらうしかない。
そしてひと月余り、のんびりとした時間をミリオネアで過ごしエルメニアに戻ると、思ってもいない事態になっていた。
「逃げられたな」
「ウルが追い詰めるから」
「気になっているのはオルも同じだろ?」
「そりゃあ、あれだけ他の人と気配が違えば気になるよ」
「知られたく無いと言う訳か、、、、、、」
「探る事は出来るよ?」
「敵意でも感じれば調べる必要もあるだろうが、、、アイツからどうも敵意を感じ無いんだよなぁ」
「嫌われているのにね」
「そうなんだよなぁ」
「そこは否定しないんだ」
相変わらずだ。
それが人であれ、物であれ、興味のある事柄を、中途半端にする様なウルフレッドでは無かった。
だが相手が本当に嫌がるような事はしない。
"精霊使い"が只の人では無いとは思っている様だが、勝手に調べる様な事をしたく無いと思っているみたいだ。
すると"精霊使い"が座っていた場所に何かが落ちている。
「なんだろう?」
「どうした」
「彼の物かな?」
オルグが拾ったのは、銀色のロケットで、ウルフレッドが開けると中に綺麗な女性の絵姿が描いてある。
「これは見事だ」
「もう、人の物を勝手に」
「不可抗力だ」
確かに無理に開けてはいないが、不可抗力と言える状態でも無かった。
「また会う事になりそうだ」
「彼の物だと?」
「だろうな、良く似ている」
「彼の瞳が、緑色ならね」
「明日、分かるさ」
「これ以上、嫌われないでよね」
「俺は、嫌われたいとは思ってないぞ」
「そう見えないんだけど?」
「あまり素直に反応するから、面白いと思っているだけだ」
「帰りの船に乗れなくならないよね」
「心配するな、精霊にそう言った思考は無い」
「なぜそう思うの?」
「彼らの行動はよく言えば素直、悪く言えば単純で、どちらかと言えば肯定的な気持ちに強く反応する」
「肯定的?」
「つまり『帰らせたくない』より『帰りたい』という願いの方が叶いやすい」
「何を根拠に」
「精霊達はこちらの魔力の強さより、願いの強さの方により反応する。子ども達だと、主張の強い方という事だな」
「つまり、こちらが『帰りたい』と強く願えば、そちらが優先されるってこと?」
「多分な」
「曖昧だなぁ」
「大丈夫さ、アイツだって顔も見たくない相手を、何時までも島に残さないだろう」
「ウル、こんな所で敵を作らないでね」
「オル、何度も言っているが、俺は敵を作っているつもりは無い」
ウルフレッドがどう思っているかではなく、彼がどう感じているかが問題だ。
彼は昔から何とも思っていない相手には優しく出来るのに、気に入った相手を困らせてみたりする。
その反応が面白いと思っているからなのだが、気にいられた方は迷惑な話だ。
おまけにウルフレッドはそれを分かっていて、敢えて困らせているから本当に質が悪い
翌日、世話になっている家の近くにいると彼がやって来る。
「ちょっと話があるんだけど、、、」
船の"精霊使い"が、ウルフレッドに話しかける。
ちょうど朝食を食べていたので、ウルフレッドの周りには子ども達が沢山集まっていた。
「ありがとな、しばらくこの兄ちゃんと話があるんだ」
そう言うと、子ども達も良く分かっていて離れて行き、十分に離れるとウルフレッドの方から話しかける。
「なんだ」
「昨日拾った物を返して欲しい」
「何故、俺が持っているのを知っているかは聞かないが、俺が拾った物が、お前のだとは言えないだろう?」
「僕の物だよ」
「俺には分からん」
「どうすればいいのさ」
「身内の絵姿だと言うのなら返すさ」
「瞳の色を見せろって事?」
「それが同じなら、身内と言われても納得出来る」
「何故、そんなに瞳の色を知りたいのか理解出来ないよ」
「俺には何故、そんなに隠すのかが理解出来ないな」
「別に分かっているなら、敢えて見る必要なんか無いだろ?」
「推測に過ぎない答えを、知りたいと思うのは当然だろ?」
こういう言い合いで、彼がウルフレッドに勝てるとは思えない。
暫く考えていた彼が、ため息をつきながらフードで隠すように僅かに瞳を開ける。
ロケットに描かれた女性と同じ色の瞳が現れ、その瞳がウルフレッドを睨む。
妙な人を敵にしたくないのに、睨まれた本人は気にする様子も見せず、持っていたロケットを彼に渡している。
「誰の絵なんだ?」
「えっ?」
「その絵姿だよ」
「周りの人に見せていないの?」
「見せて欲しかったのか?」
「そうじゃないけど、、、」
ミリオネアは、僅か数百年前に出来たエルメニアとは、比べものにならないくらいずっと昔からある国だ。
色々な伝説も語り継がれているが、かつて精霊王の娘が他国から来た人に恋をして、国を離れたことも昔語りのように残っている。
ヒューイが持つ細密画ほどでは無いが彼女の絵姿も残っていて、ロケットの絵を見せれば誰を描いたものか知る事は出来るはずだった。
「、、、姉だよ」
「そうか、悪かったな」
彼がウルフレッドをもう一度睨みながら言っているのが聞こえてくる。
「貴方は本当に嫌な人だな」
もっと知られたくない所まで踏み込んで来られれば、“排除する事”も“敵になる事”も出来ただろうに、それをさせないウルフレッドを、“嫌な人”としか言えない彼に少し同情する。
それも“嫌な人”と言われて嬉しそうに笑っているような人なのだから、この島にいる間は我慢してもらうしかない。
そしてひと月余り、のんびりとした時間をミリオネアで過ごしエルメニアに戻ると、思ってもいない事態になっていた。
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