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第七章 アッタリア戦
10 ヘイズ・マクシミリアン(2)
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ウエストリア領内に入ってからは、散々な日々が続いていた。
領内に入れば兵の食事や自分の宿泊など、滞在した街が歓迎してくれるだろうと思っていた。
兵がいれば街の守りにもなるし、国境付近に騎士を集めている辺境伯の代わりに自分たちが守護すれば、辺境伯ではなく、自分の領民になりたいと考える者も出てくるはずだった。
だが領民は街から一歩も出ず、歓迎するどころか、敵に向けるような目でヘイズ達を睨む。
訓練されていない領民を連れて行軍を急げば、どうしても街道沿いの畑や人気の無い人家をあさる者が出る。
こちらも行軍を急がせる必要があったので、多少の事は見ないふりもした。
自分は敵国からこの土地を守るために、わざわざ兵を連れて来ているのだと言い訳しながら、兵をせっせと急がせやっと国境の手前、ミスリルの峡谷に近づく。
野営の準備もそこそこに戦の状況を確認するべく、ウエストリア伯や他の貴族たちと話をする。
戦禍を受けている所も見られなかったので、ウエストリア伯は国境付近でなかなかの戦果を挙げているようだったが、今までは先を急ぐ必要もあったので、戦の状況を全く知る事が出来なかった。
これから戦いが本格的になるのであれば、自分は良いときに来た事になる。
アッタリア兵と辺境伯の兵が戦い、お互いが疲弊した頃、自分たちが戦に参加できると考えていたが、こちらに着いて早々、まったく当てが外れた事を知らされた。
「既に兵が引いているとはどういう事だ」
「昨夜、ヘステリアの荒野までやって来たアッタリア兵に、ウエストリア伯が攻撃したそうです」
「それでなぜアッタリア兵が逃げて行くのだ」
「詳しい事は分かりません」
「ですが、『ほとんどのアッタリア兵が、武器を捨てて砂漠に逃げ帰った』と聞いております」
先に着いた貴族の使者から説明を受ける。
「ウエストリアに、千のアッタリア兵を倒す力があったというのか?」
ヘイズ・マクシミリアンは、信じられなかった。
「王都から来ていた平民達が多くの力を使ったと」
「平民達?」
「はい、数年前よりウエストリア伯が、平民に魔力操作の方法を教えていたようで、、、」
「王都の民を使っていたという事か」
「我々もこちらに着いたばかりなので、詳しい事は分かりませんが、その様な事があったと聞いております」
使者が教えてくれる。
さすがに領内の兵だけでは難しかったのだろう。
知らない間に王都の民まで使っているとは、してやられたように感じ悔しさが募る。
早く他の貴族たちと話をする必要がある。
これで戦が終わってしまっては、自分がなんのために此処まで来たのか分からなくなってしまう。
おそらく戦に参加していない貴族たちも同じ気持ちのはずなので、なんとかしなければならない。
ウエストリア伯には、まだまだ戦を続けて貰わなくてはならなかった。
簡単に手にした勝利は、血気盛んな若造を、次の戦いに誘う事を後押しすると思われたが、この交渉はなかなか上手くいかなかった。
「僕は行きませんよ」
王都からやって来た貴族達が、この機会にアッタリア兵を倒し、砂漠の鉱山を手に入れるべきだと説得しても彼の返事が変わる事は無かった。
「なぜ、兵を進めない。アッタリア兵が引いた今が好機ではないか」
「どうしてわざわざ砂漠の中まで、敵を追いかけて行く必要があるのです?」
「辺境伯としてこの地を治めているなら、敵を屠る事はウエストリア伯の責務であろう」
王都から来た貴族達を従え、ヘイズが声高に叫ぶ。
貴族達は少しでも利を得るために自分の意見には賛成していたし、貴族の義務と言われればそれを無視する事など出来ないはずだ。
「そんな責任はありませんよ」
「なんだと!? 若いからといって西方辺境伯の義務を放棄するつもりなのか!?」
「私の義務は、敵が国に攻めて来ないよう守る事であって、敵の国に攻め入る事ではありません」
「アッタリアを倒せば、国を守る事になる。同じ意味だと言っているのだ」
「私にとっては全く違うものですよ」
「そうやって誤魔化して、義務を放棄するならそれなりの覚悟があると言うのだな」
「どうぞご自由に、評議院に訴えるなり好きにして下さい」
「我々が辺境伯の代わりに、義務を果たしても問題ないのだな」
「あなた方が自分の兵を動かすのを止める事はできませんが、ウエストリアの力は当てにしないで頂きたい」
数百年前、エルメニアを建国した二人の青年は、自分達が持つ魔力の強さを自覚していた。
それ故、国に住む人たちを守るため、力を使う事を選んだが、他国を滅ぼすために力を使う事を禁止した。
ほとんど目にする事の無くなったエルメニアの建国憲章には、魔力を使って他国に攻め入る事を禁じている。
そして二人の血を受け継ぐ、王室とウエストリア家にはその教えが強く根付いている。
領内に入れば兵の食事や自分の宿泊など、滞在した街が歓迎してくれるだろうと思っていた。
兵がいれば街の守りにもなるし、国境付近に騎士を集めている辺境伯の代わりに自分たちが守護すれば、辺境伯ではなく、自分の領民になりたいと考える者も出てくるはずだった。
だが領民は街から一歩も出ず、歓迎するどころか、敵に向けるような目でヘイズ達を睨む。
訓練されていない領民を連れて行軍を急げば、どうしても街道沿いの畑や人気の無い人家をあさる者が出る。
こちらも行軍を急がせる必要があったので、多少の事は見ないふりもした。
自分は敵国からこの土地を守るために、わざわざ兵を連れて来ているのだと言い訳しながら、兵をせっせと急がせやっと国境の手前、ミスリルの峡谷に近づく。
野営の準備もそこそこに戦の状況を確認するべく、ウエストリア伯や他の貴族たちと話をする。
戦禍を受けている所も見られなかったので、ウエストリア伯は国境付近でなかなかの戦果を挙げているようだったが、今までは先を急ぐ必要もあったので、戦の状況を全く知る事が出来なかった。
これから戦いが本格的になるのであれば、自分は良いときに来た事になる。
アッタリア兵と辺境伯の兵が戦い、お互いが疲弊した頃、自分たちが戦に参加できると考えていたが、こちらに着いて早々、まったく当てが外れた事を知らされた。
「既に兵が引いているとはどういう事だ」
「昨夜、ヘステリアの荒野までやって来たアッタリア兵に、ウエストリア伯が攻撃したそうです」
「それでなぜアッタリア兵が逃げて行くのだ」
「詳しい事は分かりません」
「ですが、『ほとんどのアッタリア兵が、武器を捨てて砂漠に逃げ帰った』と聞いております」
先に着いた貴族の使者から説明を受ける。
「ウエストリアに、千のアッタリア兵を倒す力があったというのか?」
ヘイズ・マクシミリアンは、信じられなかった。
「王都から来ていた平民達が多くの力を使ったと」
「平民達?」
「はい、数年前よりウエストリア伯が、平民に魔力操作の方法を教えていたようで、、、」
「王都の民を使っていたという事か」
「我々もこちらに着いたばかりなので、詳しい事は分かりませんが、その様な事があったと聞いております」
使者が教えてくれる。
さすがに領内の兵だけでは難しかったのだろう。
知らない間に王都の民まで使っているとは、してやられたように感じ悔しさが募る。
早く他の貴族たちと話をする必要がある。
これで戦が終わってしまっては、自分がなんのために此処まで来たのか分からなくなってしまう。
おそらく戦に参加していない貴族たちも同じ気持ちのはずなので、なんとかしなければならない。
ウエストリア伯には、まだまだ戦を続けて貰わなくてはならなかった。
簡単に手にした勝利は、血気盛んな若造を、次の戦いに誘う事を後押しすると思われたが、この交渉はなかなか上手くいかなかった。
「僕は行きませんよ」
王都からやって来た貴族達が、この機会にアッタリア兵を倒し、砂漠の鉱山を手に入れるべきだと説得しても彼の返事が変わる事は無かった。
「なぜ、兵を進めない。アッタリア兵が引いた今が好機ではないか」
「どうしてわざわざ砂漠の中まで、敵を追いかけて行く必要があるのです?」
「辺境伯としてこの地を治めているなら、敵を屠る事はウエストリア伯の責務であろう」
王都から来た貴族達を従え、ヘイズが声高に叫ぶ。
貴族達は少しでも利を得るために自分の意見には賛成していたし、貴族の義務と言われればそれを無視する事など出来ないはずだ。
「そんな責任はありませんよ」
「なんだと!? 若いからといって西方辺境伯の義務を放棄するつもりなのか!?」
「私の義務は、敵が国に攻めて来ないよう守る事であって、敵の国に攻め入る事ではありません」
「アッタリアを倒せば、国を守る事になる。同じ意味だと言っているのだ」
「私にとっては全く違うものですよ」
「そうやって誤魔化して、義務を放棄するならそれなりの覚悟があると言うのだな」
「どうぞご自由に、評議院に訴えるなり好きにして下さい」
「我々が辺境伯の代わりに、義務を果たしても問題ないのだな」
「あなた方が自分の兵を動かすのを止める事はできませんが、ウエストリアの力は当てにしないで頂きたい」
数百年前、エルメニアを建国した二人の青年は、自分達が持つ魔力の強さを自覚していた。
それ故、国に住む人たちを守るため、力を使う事を選んだが、他国を滅ぼすために力を使う事を禁止した。
ほとんど目にする事の無くなったエルメニアの建国憲章には、魔力を使って他国に攻め入る事を禁じている。
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