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第八章 その後
01 戦の後(1)
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ウルフレッドが緑樹院で傷を癒やしていた頃、彼の代理を務めていたライオネルは、王都から来ていた貴族達に容赦がなかった。
「何だと? 我々に帰れと言うのか? それも三日以内にウエストリア領から出て行けと?」
全く意味が分からない。
確かに少し手を借りたが、それは領主に本来の義務を思い出させただけで、自分達に感謝するのが当たり前では無いのか?
本当にウエストリアの者達は礼儀を知らないと腹も立つが、領主が若いだけあって、確かに仕えている者達も若かった。
礼を知らない子どもに説明してやろうと、伝えに来た従僕に告げる。
「その使者をここに連れて来い、私が話をしてやろう」
「申し訳ありませんが、その書状をお持ちになった方は、そのままレトリア家の方に行かれましたので、、、」
全く疲れている自分を歩かせるとは、なんて気の回らない使者だと捨てておきたくなるが、出て行くのを了承したと思われても困るので、領主の天幕を尋ねる。
そこでヘイズを出迎えたのは、ラングロア家の当主だった。
「使者がこんな物を持って来たのでね、わざわざ足を運ばせて貰ったよ」
「先程、私が持って行った物ですが、、、何かご不明な点でもありましたでしょうか?」
「キミが? ここに何と書いてあるか知っているのか?」
「もちろんです。私が書いた物ですから」
「ライオネル殿と言われたな、ちょっと失礼だと思わないのか」
「何がですか?」
「いいか、我々は、昨夜アッタリアと戦って傷ついたばかりなんだ、その傷を癒す時間も与えず、帰れと言うのは礼儀に反しているとは思わないのかね」
「どなたが誰と戦っていらっしゃったのでしょう?」
「キミ、何を言っているんだ」
「私が聞いた所によると、マクシミリアン家の方々は、アッタリア兵が現れた途端、他の家の方々を見捨てて逃げられたと」
「無礼な事を言うと許さんぞ、私は敵を引き付けるために先に進んだだけだ」
「そして敵を引き付ける方が、一番先に戻って来られたと?」
「私達が敵を倒して先に進めただけの話だ」
「その割に、ご領地の方々は随分砂漠に残されていましたが」
「何を言っている」
「砂漠に残された領地の方々が、どうなったかご存知無いのですか?」
そんな事は気にしていなかった。
自分の事で必死になっていて、ついて来られなかった者達の事まで考えてはいなかったが、そんな事を口にする事など出来ない。
「そんな訳が無いだろう」
「それを聞いて安心しました」
「いいか、私は礼儀について話をしているんだ」
「礼儀ですか?」
「いいかね、人に手を借りた時は、それなりの礼を返すものだろう」
「申し訳ありません」
「分かればいいんだよ」
「いえ、伝え方に不手際があった事をお詫びします」
「まぁ、キミ達はまだ若い。私も煩く言うつもりは無いよ」
「そうではありません。我々は、ヘイズ殿に手を貸した覚えはあっても、手を借りた覚えはありません」
「なっ、なんだと?」
「ですから、三日以内にウエストリア領から引き上げ無い場合、領地に害をなす者と判断させて頂きます」
「ぶっ、無礼な」
頭に血が登り剣に手をかけた時、聞き覚えのある声がする。
「ライオネル様、何か問題でも、、、」
昨夜、自分の喉元に剣を向けた少年が入って来る。
ヘイズは、人を小馬鹿にしたように話すウエストリア伯が嫌いだった。
そして淡々と話すライオネル・ラングロアの事は苦手だった。
だがこのエリスと呼ばれる少年の事は恐ろしかった。
彼の瞳の中には、ヘイズへの嫌悪や憎しみが現れていて、僅かな機会でもあれば、貴族の命さえ奪いそうな粗野な所が見受けられる。
「なっ、何でも無い、私は礼儀について話を、、、」
「、、、礼儀?」
「エリス、大丈夫だよ、話は終わった所だ」
「私は終わってなど、、、」
「これ以上、ここでお話しても意味はありません。必要であれば評議院でも、枢機院でも申し立てて下さい」
「そんな事をすれば、、、」
「只、申し立てを行う前にエルメニアの建国憲章をご覧になる事をお勧めします」
「建国憲章?」
「王室の枢密院の壁に刻印されています。ウエストリアの屋敷にも同じ物がありますが、領主の不在時にお招きすることは出来ませんので」
「こちらは怪我人もいるのだぞ、三日など無理に決まっているだろう、、、」
「動けない様な怪我人はいないはずです」
「しかし、、、」
「ミスリルの渓谷を出た所に、商人達が荷馬車を沢山用意していますので、お使いになると良いのでは?」
「それは、、、」
「あゝ、せっかく来て頂いたのでこちらも渡しておきます」
青年が席を立ち、今まで書いていた書状をヘイズに渡す。
それには、ここに来るまでにマクシミリアン家の者達が、荒らした家や農地の被害状況が記載されていた。
「なんだこれは」
「ウエストリアからそちらに請求させて頂くものです」
「こんな物を、、、」
「申し上げた通り、ウエストリア家は、他家の救援を求めた覚えはありませんし、手を借りた覚えもありません。
ウエストリア領内に勝手に入って来た方々に、その賠償を求めても何の問題も無いと思われますが」
「冗談では無い」
「もちろん冗談を申し上げているつもりはありません」
ここで引いては大変な事になるのは分かっていたが、平民の少年が今にも剣を抜きそうで恐ろしく、王都で話を付ければいいと一旦引き下がる。
『覚えていろ』
天幕を出て呟くと、後を追って出て来た青年がまた追い討ちをかける。
「怪我の酷い人は、緑樹院でお預かりしています。マクシミリアン家の方々にかかった費用は、緑樹院から知らせが行く思いますので、そちらも覚えておいて下さい」
冗談では無い、ウエストリアから何の謝礼も無く、逆に領地を荒らしたと言われては、僅かに持ち帰った鉄など何の意味も無くなってしまう。
ウエストリアは自分達よりずっと多くの鉄を手に入れたと言うのに、賠償まで求めて来るとはなんて厚かましい連中だ。
王都に戻ったら、絶対、痛い思いをさせてやる。
「何だと? 我々に帰れと言うのか? それも三日以内にウエストリア領から出て行けと?」
全く意味が分からない。
確かに少し手を借りたが、それは領主に本来の義務を思い出させただけで、自分達に感謝するのが当たり前では無いのか?
本当にウエストリアの者達は礼儀を知らないと腹も立つが、領主が若いだけあって、確かに仕えている者達も若かった。
礼を知らない子どもに説明してやろうと、伝えに来た従僕に告げる。
「その使者をここに連れて来い、私が話をしてやろう」
「申し訳ありませんが、その書状をお持ちになった方は、そのままレトリア家の方に行かれましたので、、、」
全く疲れている自分を歩かせるとは、なんて気の回らない使者だと捨てておきたくなるが、出て行くのを了承したと思われても困るので、領主の天幕を尋ねる。
そこでヘイズを出迎えたのは、ラングロア家の当主だった。
「使者がこんな物を持って来たのでね、わざわざ足を運ばせて貰ったよ」
「先程、私が持って行った物ですが、、、何かご不明な点でもありましたでしょうか?」
「キミが? ここに何と書いてあるか知っているのか?」
「もちろんです。私が書いた物ですから」
「ライオネル殿と言われたな、ちょっと失礼だと思わないのか」
「何がですか?」
「いいか、我々は、昨夜アッタリアと戦って傷ついたばかりなんだ、その傷を癒す時間も与えず、帰れと言うのは礼儀に反しているとは思わないのかね」
「どなたが誰と戦っていらっしゃったのでしょう?」
「キミ、何を言っているんだ」
「私が聞いた所によると、マクシミリアン家の方々は、アッタリア兵が現れた途端、他の家の方々を見捨てて逃げられたと」
「無礼な事を言うと許さんぞ、私は敵を引き付けるために先に進んだだけだ」
「そして敵を引き付ける方が、一番先に戻って来られたと?」
「私達が敵を倒して先に進めただけの話だ」
「その割に、ご領地の方々は随分砂漠に残されていましたが」
「何を言っている」
「砂漠に残された領地の方々が、どうなったかご存知無いのですか?」
そんな事は気にしていなかった。
自分の事で必死になっていて、ついて来られなかった者達の事まで考えてはいなかったが、そんな事を口にする事など出来ない。
「そんな訳が無いだろう」
「それを聞いて安心しました」
「いいか、私は礼儀について話をしているんだ」
「礼儀ですか?」
「いいかね、人に手を借りた時は、それなりの礼を返すものだろう」
「申し訳ありません」
「分かればいいんだよ」
「いえ、伝え方に不手際があった事をお詫びします」
「まぁ、キミ達はまだ若い。私も煩く言うつもりは無いよ」
「そうではありません。我々は、ヘイズ殿に手を貸した覚えはあっても、手を借りた覚えはありません」
「なっ、なんだと?」
「ですから、三日以内にウエストリア領から引き上げ無い場合、領地に害をなす者と判断させて頂きます」
「ぶっ、無礼な」
頭に血が登り剣に手をかけた時、聞き覚えのある声がする。
「ライオネル様、何か問題でも、、、」
昨夜、自分の喉元に剣を向けた少年が入って来る。
ヘイズは、人を小馬鹿にしたように話すウエストリア伯が嫌いだった。
そして淡々と話すライオネル・ラングロアの事は苦手だった。
だがこのエリスと呼ばれる少年の事は恐ろしかった。
彼の瞳の中には、ヘイズへの嫌悪や憎しみが現れていて、僅かな機会でもあれば、貴族の命さえ奪いそうな粗野な所が見受けられる。
「なっ、何でも無い、私は礼儀について話を、、、」
「、、、礼儀?」
「エリス、大丈夫だよ、話は終わった所だ」
「私は終わってなど、、、」
「これ以上、ここでお話しても意味はありません。必要であれば評議院でも、枢機院でも申し立てて下さい」
「そんな事をすれば、、、」
「只、申し立てを行う前にエルメニアの建国憲章をご覧になる事をお勧めします」
「建国憲章?」
「王室の枢密院の壁に刻印されています。ウエストリアの屋敷にも同じ物がありますが、領主の不在時にお招きすることは出来ませんので」
「こちらは怪我人もいるのだぞ、三日など無理に決まっているだろう、、、」
「動けない様な怪我人はいないはずです」
「しかし、、、」
「ミスリルの渓谷を出た所に、商人達が荷馬車を沢山用意していますので、お使いになると良いのでは?」
「それは、、、」
「あゝ、せっかく来て頂いたのでこちらも渡しておきます」
青年が席を立ち、今まで書いていた書状をヘイズに渡す。
それには、ここに来るまでにマクシミリアン家の者達が、荒らした家や農地の被害状況が記載されていた。
「なんだこれは」
「ウエストリアからそちらに請求させて頂くものです」
「こんな物を、、、」
「申し上げた通り、ウエストリア家は、他家の救援を求めた覚えはありませんし、手を借りた覚えもありません。
ウエストリア領内に勝手に入って来た方々に、その賠償を求めても何の問題も無いと思われますが」
「冗談では無い」
「もちろん冗談を申し上げているつもりはありません」
ここで引いては大変な事になるのは分かっていたが、平民の少年が今にも剣を抜きそうで恐ろしく、王都で話を付ければいいと一旦引き下がる。
『覚えていろ』
天幕を出て呟くと、後を追って出て来た青年がまた追い討ちをかける。
「怪我の酷い人は、緑樹院でお預かりしています。マクシミリアン家の方々にかかった費用は、緑樹院から知らせが行く思いますので、そちらも覚えておいて下さい」
冗談では無い、ウエストリアから何の謝礼も無く、逆に領地を荒らしたと言われては、僅かに持ち帰った鉄など何の意味も無くなってしまう。
ウエストリアは自分達よりずっと多くの鉄を手に入れたと言うのに、賠償まで求めて来るとはなんて厚かましい連中だ。
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