68 / 74
第八章 その後
02 戦の後(2)
しおりを挟む
「本当にあれでいいんですか?」
「エリスは不満そうだな」
「師匠が賠償なんて求めるはずないじゃないか」
ウエストリアに来た貴族達がどうなろうと知った事では無いが、領主がウエストリアに賠償金を支払えば、結果的に困るのはその領民だ。
領主に連れて来られ、怪我までした人達が、これ以上困る事を師匠がするとは思えない。
「あの人はそう言う所が、甘いからなぁ」
「あんな奴、居なくなった方が絶対領民のためになるのに」
「それを決めるのは、私達では無いさ」
「分かってるけど、腹が立つ」
「それにヘイズは、ウルフがどんな人間か知らないからな」
「どう言うこと?」
「しばらくは、賠償をどう支払うか、頭を悩ませる事になる」
「そうか」
「彼の様な人間には、一番嫌なものだよ」
「ふ~ん、いい気味だ」
「それよりエリスの怪我はもういいのか?」
「僕は大丈夫だよ、師匠に、攻撃する時はちゃんと敵と距離を取る様に言われていたから」
「あまり離れている様に見えなかったが?」
「彼らに飛び道具は無かったからね、ちゃんと剣が届かない距離を守ったさ」
エリスが言いつけを最大限に利用して答える。
この弟子は、本当に師匠とよく似ている。
「そうか、では私も残りの家に書状を配って来るよ、そろそろ農地に出たいとみんなも思っている頃だからな」
ウルフレッドは、農地や畑が荒らされても、家が無くなっても、後から何とでもなるから心配するなと人を街から出さないようにしていた。
だが街からでも荒れた家や土地を見ることが出来るので、領民達は一刻も早く戻りたいと思っているはずだった。
第一、千人近い人間が集まっていると、煩いし、馬の餌や水を用意するだけでも大変な事になっていて、脅してでも早くいなくなって貰わなくては困る。
怪我だとか煩く言う者達もいるが、本当に治療が必要な人は、緑樹院で預かっていて、単なる打ち身や疲労でごちゃごちゃ言われたく無い。
ライオネルは、とりあえず金銭的な要求が一番分かり易いので、それを突き付けて王都の貴族達には帰って貰おうと考えていた。
昨夜、あれだけ酷い目に合っていても、ヘイズの様に何かと言い訳を探す貴族が多かったが、結局、書状で賠償などを知らせると、驚いてその日のうちに帰り支度を始める。
「エリス、ダリオンにローエングルグ家の騎士達と一緒に、彼らを監視するよう頼んでくれ」
「監視?」
「ミスリルから三日で領地を出るなら、寄り道をする余裕は無いと思うけど、妙な事を考える者はいるからね」
「分かった」
怪我か無いならエリスに動いて貰いたいが、ウルフが怪我をしている時に、彼が側を離れるとは思えない。
自分の所でウロウロしているのも、何か用事を言いつけられて、ウルフの様子を見に行きたいだけなのだ。
「気になるなら、ウルフの様子を見に行ってもいいぞ」
「今朝、ちょっと行って来た」
「そうなのか?」
「師匠が緑の服を着た人の事を、気に入ったみたいだった」
「ウルフが?」
「うん」
「へぇ、それは珍しいな」
「うん」
「知っている人だったか?」
「見た事ない人だったよ。」
「緑樹院か、、、ハーフスコードかリステアン家の人かなぁ」
「どうして?」
「今の緑樹院の長官は、ハーフスコード家の人だしね、この二つは、癒しの使い手が多い家なんだ」
「ふ~ん」
「なんだ、気に入らないのか?」
「美人だったけど、冷たそうな人に見えたんだ」
「へぇ」
「でも師匠は、そこが可愛いって」
「本当に驚いたな、先月までウエストリアに送られた絵姿を見て、この辺りが適当だと言って、クラウスに怒られていた所だぞ?」
「あ~あぁ、師匠に奥方が出来たら、ウエストリアの屋敷にいるのは難しいかなぁ」
「奥方が出来なくても、一人前になれば独立するものだ」
「ちぇ、エルダなんか要らないのに」
「エリス、約定は必要だよ?」
「そんな物が無くても、僕は師匠の弟子だもん」
「全く、、、約定を結んでも代わり無いだろ?」
確かにウルフレッドに仕えると言う意味では変わらないだろう。
だが今のウルフレッドとエリスの関係は、親子か兄弟に限りなく近く、それが主従の形に変わってしまう事が寂しいのだろう。
「エルダ、、、やっぱり要らないなぁ」
エルダは一人前になったと言う証の様なものだ。
本来、自分の籍や約定、それに連なる報酬などが記載されていて、生きて行く為には無くてはならないものだ。
だがエリスにとって大切な事は、たった一つなので、それ以外はどうでもいいと思っているのが問題だった。
今回の事で、貴族や騎士になる事も出来るのに、それらに全く興味を持たず、どうすればウルフレッドの側にいられるかそれだけを考えている。
人や物に執着しない所も、この師匠と弟子はとても良く似ている。
「エリスは不満そうだな」
「師匠が賠償なんて求めるはずないじゃないか」
ウエストリアに来た貴族達がどうなろうと知った事では無いが、領主がウエストリアに賠償金を支払えば、結果的に困るのはその領民だ。
領主に連れて来られ、怪我までした人達が、これ以上困る事を師匠がするとは思えない。
「あの人はそう言う所が、甘いからなぁ」
「あんな奴、居なくなった方が絶対領民のためになるのに」
「それを決めるのは、私達では無いさ」
「分かってるけど、腹が立つ」
「それにヘイズは、ウルフがどんな人間か知らないからな」
「どう言うこと?」
「しばらくは、賠償をどう支払うか、頭を悩ませる事になる」
「そうか」
「彼の様な人間には、一番嫌なものだよ」
「ふ~ん、いい気味だ」
「それよりエリスの怪我はもういいのか?」
「僕は大丈夫だよ、師匠に、攻撃する時はちゃんと敵と距離を取る様に言われていたから」
「あまり離れている様に見えなかったが?」
「彼らに飛び道具は無かったからね、ちゃんと剣が届かない距離を守ったさ」
エリスが言いつけを最大限に利用して答える。
この弟子は、本当に師匠とよく似ている。
「そうか、では私も残りの家に書状を配って来るよ、そろそろ農地に出たいとみんなも思っている頃だからな」
ウルフレッドは、農地や畑が荒らされても、家が無くなっても、後から何とでもなるから心配するなと人を街から出さないようにしていた。
だが街からでも荒れた家や土地を見ることが出来るので、領民達は一刻も早く戻りたいと思っているはずだった。
第一、千人近い人間が集まっていると、煩いし、馬の餌や水を用意するだけでも大変な事になっていて、脅してでも早くいなくなって貰わなくては困る。
怪我だとか煩く言う者達もいるが、本当に治療が必要な人は、緑樹院で預かっていて、単なる打ち身や疲労でごちゃごちゃ言われたく無い。
ライオネルは、とりあえず金銭的な要求が一番分かり易いので、それを突き付けて王都の貴族達には帰って貰おうと考えていた。
昨夜、あれだけ酷い目に合っていても、ヘイズの様に何かと言い訳を探す貴族が多かったが、結局、書状で賠償などを知らせると、驚いてその日のうちに帰り支度を始める。
「エリス、ダリオンにローエングルグ家の騎士達と一緒に、彼らを監視するよう頼んでくれ」
「監視?」
「ミスリルから三日で領地を出るなら、寄り道をする余裕は無いと思うけど、妙な事を考える者はいるからね」
「分かった」
怪我か無いならエリスに動いて貰いたいが、ウルフが怪我をしている時に、彼が側を離れるとは思えない。
自分の所でウロウロしているのも、何か用事を言いつけられて、ウルフの様子を見に行きたいだけなのだ。
「気になるなら、ウルフの様子を見に行ってもいいぞ」
「今朝、ちょっと行って来た」
「そうなのか?」
「師匠が緑の服を着た人の事を、気に入ったみたいだった」
「ウルフが?」
「うん」
「へぇ、それは珍しいな」
「うん」
「知っている人だったか?」
「見た事ない人だったよ。」
「緑樹院か、、、ハーフスコードかリステアン家の人かなぁ」
「どうして?」
「今の緑樹院の長官は、ハーフスコード家の人だしね、この二つは、癒しの使い手が多い家なんだ」
「ふ~ん」
「なんだ、気に入らないのか?」
「美人だったけど、冷たそうな人に見えたんだ」
「へぇ」
「でも師匠は、そこが可愛いって」
「本当に驚いたな、先月までウエストリアに送られた絵姿を見て、この辺りが適当だと言って、クラウスに怒られていた所だぞ?」
「あ~あぁ、師匠に奥方が出来たら、ウエストリアの屋敷にいるのは難しいかなぁ」
「奥方が出来なくても、一人前になれば独立するものだ」
「ちぇ、エルダなんか要らないのに」
「エリス、約定は必要だよ?」
「そんな物が無くても、僕は師匠の弟子だもん」
「全く、、、約定を結んでも代わり無いだろ?」
確かにウルフレッドに仕えると言う意味では変わらないだろう。
だが今のウルフレッドとエリスの関係は、親子か兄弟に限りなく近く、それが主従の形に変わってしまう事が寂しいのだろう。
「エルダ、、、やっぱり要らないなぁ」
エルダは一人前になったと言う証の様なものだ。
本来、自分の籍や約定、それに連なる報酬などが記載されていて、生きて行く為には無くてはならないものだ。
だがエリスにとって大切な事は、たった一つなので、それ以外はどうでもいいと思っているのが問題だった。
今回の事で、貴族や騎士になる事も出来るのに、それらに全く興味を持たず、どうすればウルフレッドの側にいられるかそれだけを考えている。
人や物に執着しない所も、この師匠と弟子はとても良く似ている。
0
あなたにおすすめの小説
【読切短編】転生したら辺境伯家の三男でした ~のんびり暮らしたいのに、なぜか領地が発展していく~
Lihito
ファンタジー
過労死したシステムエンジニアは、異世界の辺境伯家に転生した。
三男。継承権は遠い。期待もされない。
——最高じゃないか。
「今度こそ、のんびり生きよう」
兄たちの継承争いに巻き込まれないよう、誰も欲しがらない荒れ地を引き受けた。
静かに暮らすつもりだった。
だが、彼には「構造把握」という能力があった。
物事の問題点が、図解のように見える力。
井戸が枯れた。見て見ぬふりができなかった。
作物が育たない。見て見ぬふりができなかった。
気づけば——領地が勝手に発展していた。
「俺ののんびりライフ、どこ行った……」
これは、静かに暮らしたかった男が、なぜか成り上がっていく物語。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる