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第八章 その後
06 ファーレンの婚姻
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「全く、、、あのおばさんは」
「旦那様、その様におっしゃるものではありません」
「言いたくもなる」
「ファーネ様からの書状ですか?」
「娘とファーレンの話を進めたいと言って来ている」
「ファーネ様がイスレインの当主を務められて十年になります。そろそろ次の方に当主を譲りたい所でしょう」
「十年務めたなら、そのまま後十年くらいその場所にいればいい」
「それ以上に、ファーレン様の事も心配でしょうから」
「だからと言って、正式な婚約の申し込みでは無く、結婚の申し込みになる意味が分からん」
「余程ラミーネ様が、王都の噂を気にしていらっしゃるのでしょう」
セリス様が亡くなり旦那様はしばらく王都に留まっていたが、半年もするとウエストリアに帰って来た。
ルベス様が既に領主の仕事が出来る状態では無かった為だが、代理で領地を務め、その後一年も経たず後を継いだ。
領主になってからも旦那様はウエストリアを離れず、王都の代理をライオネル様と、昨年からはファーレン様にも任せていたら、ローエングルグ家に王都の貴族から、山の様な婚姻の申し込みが届くようになった。
ファーレン様は笑って取り合わないが、離れている女性からすると、気が気では無いと言う事なのだろう。
「ファーレンが器用に遊べるはず無いのに、何を気にしているんだ?」
「ラミーネ様がおられても、第二、第三夫人にと思う方はいらっしゃいますよ」
「アレにそれが出来るなら、この八年の間に別の相手が出来ているさ」
「そうですね」
「別の相手が出来ていれば、こんな書状など無視してしまうのになぁ」
旦那様が結婚の文字を消し、婚約と書き直した書状に署名する。
本来なら、婚約、結婚などはあくまで貴族の家同士の問題で、領主が何か言えるものでは無い。
イスレイン家がこうしてウエストリア家に許可を求めるのは、主家に対する礼儀であって義務では無い。
ウエストリア家は、ローエングルグ家と約定を結んでいるだけで、その家を出る人を縛る事は出来ない。
だが本当に旦那様がファーレン様をウエストリアから離さない様にするなら、この数年の間にファーレン様と個人的な約定を結べばいいだけだった。
六年前であれば旦那様も約定を結べる年齢になっていたし、ファーレン様もラミーネ様の事を、ちょっと面倒事から逃げる為の相手としか考えていないはずだった。
「婚約をお許しになるのですか?」
「子猿が五月蝿いからな」
「残念ですな」
「アレがローエングルグ家に入ってくれるなら言う事は無いが、それでは向こうが納得しないからな」
「条件をお付けになるつもりですか?」
「当たり前だ、僕の練習相手を連れて行くんだからね、ちゃんと別の相手を育てて貰うさ」
結局、婚約の一年後、ファーレン様はラミーネ様と結婚しイスレイン家に入る事になった。
「旦那様は、イスレイン家にこれらの申し入れをされるつもりですか?」
「そうだね」
「"婚姻後もイスレイン家の当主は、ファーネ様が務める"と言うのは、ファーレン様がお困りにならないためにですか?」
「それは、ファーネ殿への嫌がらせだよ」
「では、"毎年、ウエストリアの見習いを一人、イスレイン家で育てる"と言うのは?」
「これは、ファーレンへの"嫌がらせ"だね」
本来の目的を明らかにせず、"嫌がらせ"と誤魔化す所は旦那様らしい。
確かに"嫌がらせ"である事も間違っていないのだろうが、、、
「なぜ見習いを? 剣の上達が目的なら、騎士をイスレイン家に送った方がよろしいのでは?」
「正式な騎士だと色々面倒だからね、見習いならマティス家の者も同じようにイスレイン家に見習いを送りやすい」
「マティス家と継ながりがあった方が良いと?」
「同じ場所で訓練すれば、知り合う機会もあるだろう?」
「余計な揉め事になりませんか?」
「それならそれでいいさ、相手を知った上で揉めるならもう仕方がないよ」
確かにウエストリア家は、サウストリアのイスレイン家やティジィス家との交流はあるが、マティス家やバロン家とは殆ど付き合いが無い。
バロン家はランドトリア島を中心に海を治め、造船を主にした家なので、ウエストリアとの交流が無くても問題無いが、マティス家とは何かと張り合って小競り合いもある。
「そう言う事なら、私の方でも交流が持てるか試してみましょう」
貴族同士の付き合いがあるように、使用人にもそれなりの交流がある。
「お前は無理をしないだろうが、程々にしておけよ、“フランツ”を嫌がる者もいるからね」
「かしこまりました」
ウエストリア家の執事は、育てられた中から最も優秀な者が、その約定と共に“フランツ”と言う名前を引き継ぐ。
それ故いつ代替わりしたか分からず、他家の者から信頼と同時に、畏怖を持たれている事は知っている。
付け加えるなら“過去の遺恨”も引き継ぐ場合が多いので、“フランツ”を嫌う使用人も多い。
「旦那様、その様におっしゃるものではありません」
「言いたくもなる」
「ファーネ様からの書状ですか?」
「娘とファーレンの話を進めたいと言って来ている」
「ファーネ様がイスレインの当主を務められて十年になります。そろそろ次の方に当主を譲りたい所でしょう」
「十年務めたなら、そのまま後十年くらいその場所にいればいい」
「それ以上に、ファーレン様の事も心配でしょうから」
「だからと言って、正式な婚約の申し込みでは無く、結婚の申し込みになる意味が分からん」
「余程ラミーネ様が、王都の噂を気にしていらっしゃるのでしょう」
セリス様が亡くなり旦那様はしばらく王都に留まっていたが、半年もするとウエストリアに帰って来た。
ルベス様が既に領主の仕事が出来る状態では無かった為だが、代理で領地を務め、その後一年も経たず後を継いだ。
領主になってからも旦那様はウエストリアを離れず、王都の代理をライオネル様と、昨年からはファーレン様にも任せていたら、ローエングルグ家に王都の貴族から、山の様な婚姻の申し込みが届くようになった。
ファーレン様は笑って取り合わないが、離れている女性からすると、気が気では無いと言う事なのだろう。
「ファーレンが器用に遊べるはず無いのに、何を気にしているんだ?」
「ラミーネ様がおられても、第二、第三夫人にと思う方はいらっしゃいますよ」
「アレにそれが出来るなら、この八年の間に別の相手が出来ているさ」
「そうですね」
「別の相手が出来ていれば、こんな書状など無視してしまうのになぁ」
旦那様が結婚の文字を消し、婚約と書き直した書状に署名する。
本来なら、婚約、結婚などはあくまで貴族の家同士の問題で、領主が何か言えるものでは無い。
イスレイン家がこうしてウエストリア家に許可を求めるのは、主家に対する礼儀であって義務では無い。
ウエストリア家は、ローエングルグ家と約定を結んでいるだけで、その家を出る人を縛る事は出来ない。
だが本当に旦那様がファーレン様をウエストリアから離さない様にするなら、この数年の間にファーレン様と個人的な約定を結べばいいだけだった。
六年前であれば旦那様も約定を結べる年齢になっていたし、ファーレン様もラミーネ様の事を、ちょっと面倒事から逃げる為の相手としか考えていないはずだった。
「婚約をお許しになるのですか?」
「子猿が五月蝿いからな」
「残念ですな」
「アレがローエングルグ家に入ってくれるなら言う事は無いが、それでは向こうが納得しないからな」
「条件をお付けになるつもりですか?」
「当たり前だ、僕の練習相手を連れて行くんだからね、ちゃんと別の相手を育てて貰うさ」
結局、婚約の一年後、ファーレン様はラミーネ様と結婚しイスレイン家に入る事になった。
「旦那様は、イスレイン家にこれらの申し入れをされるつもりですか?」
「そうだね」
「"婚姻後もイスレイン家の当主は、ファーネ様が務める"と言うのは、ファーレン様がお困りにならないためにですか?」
「それは、ファーネ殿への嫌がらせだよ」
「では、"毎年、ウエストリアの見習いを一人、イスレイン家で育てる"と言うのは?」
「これは、ファーレンへの"嫌がらせ"だね」
本来の目的を明らかにせず、"嫌がらせ"と誤魔化す所は旦那様らしい。
確かに"嫌がらせ"である事も間違っていないのだろうが、、、
「なぜ見習いを? 剣の上達が目的なら、騎士をイスレイン家に送った方がよろしいのでは?」
「正式な騎士だと色々面倒だからね、見習いならマティス家の者も同じようにイスレイン家に見習いを送りやすい」
「マティス家と継ながりがあった方が良いと?」
「同じ場所で訓練すれば、知り合う機会もあるだろう?」
「余計な揉め事になりませんか?」
「それならそれでいいさ、相手を知った上で揉めるならもう仕方がないよ」
確かにウエストリア家は、サウストリアのイスレイン家やティジィス家との交流はあるが、マティス家やバロン家とは殆ど付き合いが無い。
バロン家はランドトリア島を中心に海を治め、造船を主にした家なので、ウエストリアとの交流が無くても問題無いが、マティス家とは何かと張り合って小競り合いもある。
「そう言う事なら、私の方でも交流が持てるか試してみましょう」
貴族同士の付き合いがあるように、使用人にもそれなりの交流がある。
「お前は無理をしないだろうが、程々にしておけよ、“フランツ”を嫌がる者もいるからね」
「かしこまりました」
ウエストリア家の執事は、育てられた中から最も優秀な者が、その約定と共に“フランツ”と言う名前を引き継ぐ。
それ故いつ代替わりしたか分からず、他家の者から信頼と同時に、畏怖を持たれている事は知っている。
付け加えるなら“過去の遺恨”も引き継ぐ場合が多いので、“フランツ”を嫌う使用人も多い。
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