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第八章 その後
08 始まり
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「それで、随分先送りで仕事をされているようですが、何かご予定でもあるのですか?」
「彼女が屋敷に来る事になっているからね」
「ハーフスコード家のご令嬢が?」
「そうだね」
「婚約は保留だと、おっしゃっていませんでしたか?」
貴族の令嬢が、婚約もしていない相手の家に来る事は珍しい。
「それはハーフスコード家の方と話をして、済ませているよ」
「ダリオン様とラディア嬢のご婚約が、貴族院から発表されたのは覚えがありますが、、、」
「フランツ、貴族院も色々あったからね、発表に漏れが生じる場合もあるよ」
アッタリア戦で謹慎となった貴族が貴族院のメンバーで、何かと混乱していたのは聞き及んでいるが、、、
「ご令嬢は、ご存知なのですか?」
「そんな事を知られては、屋敷に来なくなるだろう」
つまり家同士の話では婚約が決まっているが、本人の意志では無いので、婚約者の屋敷に滞在して、何か規制事実でもあってはと思っている事になる。
しかし、逆に婚約もしていない相手の屋敷に滞在することも躊躇するはずだった。
「何をエサにされたのです」
「エサとは失礼だな」
「では、何を理由にお誘いになったのです?」
「森にミュルゼの花が、咲きそうなんだよ」
これでは薬師でもある彼女は、逃げる事が出来ない。
ミュルゼの開花など望んで見られるものでは無いので、彼の罠にはまった女性にはご愁傷様と言うしかない。
ミュルゼの花は、元々貴重な物で、開花後の花や実が薬として高額で取引される。
だが花は真夜中に一度しか咲かないので、開花に立ち会える機会を”癒しの使い手”が逃すとは思えない。
「ミュルゼは、開花の香りに酔う方がいらっしゃると記憶しておりますが、、、」
「それは気を付けるよ、意識が無くなっては僕も困るからね」
「もう少しお時間をかけても宜しいかと思いますが、、、」
ハーフスコード家やリステアン家の様に“癒しの使い手”を多く出している家は、王都付きの貴族と呼ばれ領地を持たない。
緑樹院に務める事で報酬は支払われるが、書物で学ぶ事も多く、薬草を育てる費用も必要なので、入るより出て行くものが多く、だいたい懐事情がよろしくない。
ハーフスコード家は、長男が魔道具を作ることを趣味にもしていて借財も多かった。
それを全て肩代わりし、キリニスに緑樹院まで作って援助している家との婚姻を、彼女が拒否する事など出来ないはずだった。
それを援助の事を全く本人に気取らせず、一年の時間をかけたのなら、今更強引に進めなくても良いように感じる。
「ハーフスコード家は、子どもが“癒しの容姿”を引き継ぐ場合が多いからね、彼女はウエストリア家の跡継ぎを産めないと思っているんだ」
「なるほど」
「問題ないと言っているんだけど、ちょっと頑固でね」
癒しの使い手は、緑色の瞳を持つ。
確かにハーフスコード家やリステアン家の者達は、緑色の瞳を持つ者がほとんどで、それ以外を見ることがない。
緑樹院に務める人達なので、当たり前と言えばそうなのだが、他家に嫁いでもその容姿を引き継ぐ場合が非常に多い。
だがウエストリア家の継承には、“緋色の瞳”かそれに代わる “炎を扱う魔力”を持たなければならない。
「それは困りましたな」
「それに僕もそろそろ限界だよ」
アッタリア戦の後、屋敷に連れてきたい女性がいると言われ、無理矢理はいけませんと答えた時から一年になる。
「分かりました。改装させた主寝室をご用意しておけば宜しいのですか?」
「よろしく頼むよ」
「それでロニア様を王都に行かせられたのですか」
「母上には後から紹介するよ、しばらくこちらに戻って来ないようにしておいて欲しいね」
「かしこまりました」
ウエストリア家に仕える執事として、彼女との時間を作るために、数週間分の仕事を嬉々として終わらせる主人を見るのはやはり嬉しいものだった。
それにこれで屋敷が賑やかになる。
奥様の容姿に似た子どもが、数年後には屋敷にやって来るだろう。
その子どもはきっと、旦那様だけで無く屋敷の人々を幸せにしてくれるだろう。
「彼女が屋敷に来る事になっているからね」
「ハーフスコード家のご令嬢が?」
「そうだね」
「婚約は保留だと、おっしゃっていませんでしたか?」
貴族の令嬢が、婚約もしていない相手の家に来る事は珍しい。
「それはハーフスコード家の方と話をして、済ませているよ」
「ダリオン様とラディア嬢のご婚約が、貴族院から発表されたのは覚えがありますが、、、」
「フランツ、貴族院も色々あったからね、発表に漏れが生じる場合もあるよ」
アッタリア戦で謹慎となった貴族が貴族院のメンバーで、何かと混乱していたのは聞き及んでいるが、、、
「ご令嬢は、ご存知なのですか?」
「そんな事を知られては、屋敷に来なくなるだろう」
つまり家同士の話では婚約が決まっているが、本人の意志では無いので、婚約者の屋敷に滞在して、何か規制事実でもあってはと思っている事になる。
しかし、逆に婚約もしていない相手の屋敷に滞在することも躊躇するはずだった。
「何をエサにされたのです」
「エサとは失礼だな」
「では、何を理由にお誘いになったのです?」
「森にミュルゼの花が、咲きそうなんだよ」
これでは薬師でもある彼女は、逃げる事が出来ない。
ミュルゼの開花など望んで見られるものでは無いので、彼の罠にはまった女性にはご愁傷様と言うしかない。
ミュルゼの花は、元々貴重な物で、開花後の花や実が薬として高額で取引される。
だが花は真夜中に一度しか咲かないので、開花に立ち会える機会を”癒しの使い手”が逃すとは思えない。
「ミュルゼは、開花の香りに酔う方がいらっしゃると記憶しておりますが、、、」
「それは気を付けるよ、意識が無くなっては僕も困るからね」
「もう少しお時間をかけても宜しいかと思いますが、、、」
ハーフスコード家やリステアン家の様に“癒しの使い手”を多く出している家は、王都付きの貴族と呼ばれ領地を持たない。
緑樹院に務める事で報酬は支払われるが、書物で学ぶ事も多く、薬草を育てる費用も必要なので、入るより出て行くものが多く、だいたい懐事情がよろしくない。
ハーフスコード家は、長男が魔道具を作ることを趣味にもしていて借財も多かった。
それを全て肩代わりし、キリニスに緑樹院まで作って援助している家との婚姻を、彼女が拒否する事など出来ないはずだった。
それを援助の事を全く本人に気取らせず、一年の時間をかけたのなら、今更強引に進めなくても良いように感じる。
「ハーフスコード家は、子どもが“癒しの容姿”を引き継ぐ場合が多いからね、彼女はウエストリア家の跡継ぎを産めないと思っているんだ」
「なるほど」
「問題ないと言っているんだけど、ちょっと頑固でね」
癒しの使い手は、緑色の瞳を持つ。
確かにハーフスコード家やリステアン家の者達は、緑色の瞳を持つ者がほとんどで、それ以外を見ることがない。
緑樹院に務める人達なので、当たり前と言えばそうなのだが、他家に嫁いでもその容姿を引き継ぐ場合が非常に多い。
だがウエストリア家の継承には、“緋色の瞳”かそれに代わる “炎を扱う魔力”を持たなければならない。
「それは困りましたな」
「それに僕もそろそろ限界だよ」
アッタリア戦の後、屋敷に連れてきたい女性がいると言われ、無理矢理はいけませんと答えた時から一年になる。
「分かりました。改装させた主寝室をご用意しておけば宜しいのですか?」
「よろしく頼むよ」
「それでロニア様を王都に行かせられたのですか」
「母上には後から紹介するよ、しばらくこちらに戻って来ないようにしておいて欲しいね」
「かしこまりました」
ウエストリア家に仕える執事として、彼女との時間を作るために、数週間分の仕事を嬉々として終わらせる主人を見るのはやはり嬉しいものだった。
それにこれで屋敷が賑やかになる。
奥様の容姿に似た子どもが、数年後には屋敷にやって来るだろう。
その子どもはきっと、旦那様だけで無く屋敷の人々を幸せにしてくれるだろう。
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