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第2章
05 旅の途中(5) -アレスside
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彼女が仕事仲間と一緒に戻って行くのを見ながら、暗がりにいる人に声をかける
「後で構わないから時間を貰えるかな。少し話を聞きたい」
「承知しました」
彼女の護衛らしき人が答える。
全く困った人達だ。
知らなかったとは言え、仮にも公爵令嬢を使用人として使っていた、こちらの気持ちも考えて欲しい。
これでロアンが知ったら何と言われるか想像したくも無い。
ロアンは、歳の離れた可哀そうな義妹をとても大切にしている。
幼い頃に両親を亡くした義妹は、ロアンの庇護欲を大いに搔き立てた。
実際、公爵家に来た頃、辺境伯の後ろに隠れてばかりいた少女は、弱く大人しい子どもで、商隊に紛れ込んで他国に行こうと考える様になるとは思いもしなかった。
アイツ、いつの間にか成長した妹に手が掛からなくなったから別の娘に惹かれたのか、、、?
四年前、初めて心惹かれた女性が他人の妻になり落ち込んでいたアレスの所に、妻と余り関係の良く無かったロアンが入り浸り、そこで働いていたミリアにロアンが惹かれた。
確かに働き者の娘だし、これが同じ使用人同士なら賛成もするが、公爵家の跡取りとでは話が違って来る。
平民でも教育を受けた裕福な商家の娘ならともかく、使用人として働いていた娘を夫人に迎える事などあり得ない。
良くて部屋を与えて愛人と言う所だが、ロアンは諦めず、三年以上の時間をかけて、公爵と公爵夫人を納得させた。
ミリアの方も随分努力して、今では以前の状況など感じられない様になっている。
どちらかと言えば、のんびりと自分の立場に満足していたロアンが、今回、アレスの仕事を手伝いたいと言い出したのも、ミリアや彼女の弟達を騎士にするための費用を考えた末での結果だった。
全く、恋と言うのはそんなに人を動かすものなのだろうか?
そんな事を考えていると、天幕の外から声が聞こえる。
「遅くなり、申し訳ありません」
「いや、無理を言って済まなかった。名前を聞いてもいいかな?」
「ソーヤと呼ばれております」
「そうか、ではソーヤ。今回の事は、ウエストリタ伯も承知の事なのだな」
「もちろんです」
「ロートアに着いた後もか?」
「彼女の望むように、と聞いております」
「伯は相変わらずと言う事か」
彼は娘の時もそうだった。
娘を自由に、そして、娘の選択を尊重した。
辺境伯が承知しているなら、ミリオネアに渡る用意もしてあるのだろう。
「ありがとう、それが確認出来れば良かったんだ、カリーナの事をよろしく頼む。何かあれば知らせてくれ」
「承知しました」
伯に文句を言っても仕方がない、いつもの事と女中頭のアンに任せっ放しだったのは事実なのだ。
しかし、三日も前に知った事をアレスにさえ知らせていない事には、一言、言っておかなければならない。
「すまないが、ファリスに私の所に来るように伝えてくれ」
天幕の近くを通った者に頼むと、しばらくして外から声が聞こえる。
「ファリスです、お呼びと伺ったのですが」
「入ってくれ」
「失礼します」
黒髪にブルーグレーの瞳、21歳になっていたと思うが、ここ数年エルメニアにいなかった事もあり、相手は決まっていないはずだった。
剣術の試合などには出ていないので実力は知らないが、ウエストリア伯が彼をカリーナに近づけたなら、その実力もだいたい分かる。
「ファリス、私に伝える事があるのでは無いかな?」
「えっ、あの、、、」
「ロアンに伝える事が出来なくても、せめて私には言って欲しかったかな」
「申し訳ありません」
カリーナが持っていた魔道具は、ラングロア家独特の物だ。
公に知られているものでは無いが、見る人が見れば、それを持っている意味を含め、誰の持ち物かすぐに分かる。
「まぁ、気持ちも分かるがね、今後は気をつけてくれ。
カリーナの事は、それと無く私の方から女中頭にも伝えておこう、下がっていいよ」
「失礼します」
頭を下げ、申し訳無さそうに返って行く青年を見ながら、わざわざ呼び出す程の事だったのかと反省する。
『何だ? 本当に渡したく無いとでも思っているのか?』
勝手なものだ、五年前、妹と言って彼女との話を無かった事にしたのは自分なのだ、今更、手に入れたいと思う方がどうかしている。
「後で構わないから時間を貰えるかな。少し話を聞きたい」
「承知しました」
彼女の護衛らしき人が答える。
全く困った人達だ。
知らなかったとは言え、仮にも公爵令嬢を使用人として使っていた、こちらの気持ちも考えて欲しい。
これでロアンが知ったら何と言われるか想像したくも無い。
ロアンは、歳の離れた可哀そうな義妹をとても大切にしている。
幼い頃に両親を亡くした義妹は、ロアンの庇護欲を大いに搔き立てた。
実際、公爵家に来た頃、辺境伯の後ろに隠れてばかりいた少女は、弱く大人しい子どもで、商隊に紛れ込んで他国に行こうと考える様になるとは思いもしなかった。
アイツ、いつの間にか成長した妹に手が掛からなくなったから別の娘に惹かれたのか、、、?
四年前、初めて心惹かれた女性が他人の妻になり落ち込んでいたアレスの所に、妻と余り関係の良く無かったロアンが入り浸り、そこで働いていたミリアにロアンが惹かれた。
確かに働き者の娘だし、これが同じ使用人同士なら賛成もするが、公爵家の跡取りとでは話が違って来る。
平民でも教育を受けた裕福な商家の娘ならともかく、使用人として働いていた娘を夫人に迎える事などあり得ない。
良くて部屋を与えて愛人と言う所だが、ロアンは諦めず、三年以上の時間をかけて、公爵と公爵夫人を納得させた。
ミリアの方も随分努力して、今では以前の状況など感じられない様になっている。
どちらかと言えば、のんびりと自分の立場に満足していたロアンが、今回、アレスの仕事を手伝いたいと言い出したのも、ミリアや彼女の弟達を騎士にするための費用を考えた末での結果だった。
全く、恋と言うのはそんなに人を動かすものなのだろうか?
そんな事を考えていると、天幕の外から声が聞こえる。
「遅くなり、申し訳ありません」
「いや、無理を言って済まなかった。名前を聞いてもいいかな?」
「ソーヤと呼ばれております」
「そうか、ではソーヤ。今回の事は、ウエストリタ伯も承知の事なのだな」
「もちろんです」
「ロートアに着いた後もか?」
「彼女の望むように、と聞いております」
「伯は相変わらずと言う事か」
彼は娘の時もそうだった。
娘を自由に、そして、娘の選択を尊重した。
辺境伯が承知しているなら、ミリオネアに渡る用意もしてあるのだろう。
「ありがとう、それが確認出来れば良かったんだ、カリーナの事をよろしく頼む。何かあれば知らせてくれ」
「承知しました」
伯に文句を言っても仕方がない、いつもの事と女中頭のアンに任せっ放しだったのは事実なのだ。
しかし、三日も前に知った事をアレスにさえ知らせていない事には、一言、言っておかなければならない。
「すまないが、ファリスに私の所に来るように伝えてくれ」
天幕の近くを通った者に頼むと、しばらくして外から声が聞こえる。
「ファリスです、お呼びと伺ったのですが」
「入ってくれ」
「失礼します」
黒髪にブルーグレーの瞳、21歳になっていたと思うが、ここ数年エルメニアにいなかった事もあり、相手は決まっていないはずだった。
剣術の試合などには出ていないので実力は知らないが、ウエストリア伯が彼をカリーナに近づけたなら、その実力もだいたい分かる。
「ファリス、私に伝える事があるのでは無いかな?」
「えっ、あの、、、」
「ロアンに伝える事が出来なくても、せめて私には言って欲しかったかな」
「申し訳ありません」
カリーナが持っていた魔道具は、ラングロア家独特の物だ。
公に知られているものでは無いが、見る人が見れば、それを持っている意味を含め、誰の持ち物かすぐに分かる。
「まぁ、気持ちも分かるがね、今後は気をつけてくれ。
カリーナの事は、それと無く私の方から女中頭にも伝えておこう、下がっていいよ」
「失礼します」
頭を下げ、申し訳無さそうに返って行く青年を見ながら、わざわざ呼び出す程の事だったのかと反省する。
『何だ? 本当に渡したく無いとでも思っているのか?』
勝手なものだ、五年前、妹と言って彼女との話を無かった事にしたのは自分なのだ、今更、手に入れたいと思う方がどうかしている。
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