33 / 58
第3章
11 サウストリア(11)
しおりを挟む
まるで一枚の絵を見ているみたいだった。
レオーナ様は、金色の髪が部屋の明かりでキラキラと輝いていてとても美しく、アレス様もいつもとは違う服装で、まるで別人のようだった。
二人は楽しそうにベランダで話しているかと思うと、アレス様がレオーナ様を引き寄せて、唇を重ねているのが見える。
「へぇ、姉上があんな事を許すとは思わなかったな。アイツがアレスって言うのか?」
「えぇ」
「確かにいい男だな」
「えぇ」
「それに強いんだろう?」
「えぇ」
「カリーナ?」
「ダナー、恥ずかしいわ、覗き見なんて」
「ごめん、ごめん。今日は無理かな?
叔母上達が帰って来てるみたいだ、こんなに人が集まるとは聞いて無かったよ」
来なければ良かった。
ダナーにアレス様を紹介して欲しいと付いて来たけれど、まさかあんなアレス様を見るとは思わなかった。
彼は知らない大人の人で、カリーナの側にいてくれる時とは全く違う人だった。
「カリーナ、ここに座って?」
ベランダから離れ、庭の椅子に座らされる。
「ごめんなさい、紹介できなくて」
「大丈夫だよ、姉上が良く知っているようだしね。それよりびっくりさせちゃったみたいだ」
「うん」
「ねぇ、カリーナ。僕の昔話、聞いてくれる?」
「なぁに?」
「僕が天使にあった時の話」
「天使?」
「そう、僕が9歳の頃かな。兄貴達に何しても敵わくてさ、悔しくて花畑の中を歩いていたら出会ったんだ」
「天使に?」
「そう、栗色の髪の空灰色の瞳をした女の子が花畑の中にいて、その子がじっと僕を見ていたかと思うとにっこり笑ったんだ」
「それって、、、」
「カリーナの事だよ」
「ダナーったら」
「笑ったね、カリーナ。でも本当に、その位驚いたんだよ」
「良かったわ、幽霊だって思われなくて」
「うん、あれが夜でなくて良かったと思ってる」
「もう、、、」
ダナーはカリーナが落ち込んでいるといつも笑わせてくれる。
「ねぇ、どうして虫の抜け殻をくれたの?」
「あれが僕の宝物だったんだ」
「抜け殻が?」
「僕の持っている抜け殻の中で、あれが一番きれいだったんだよ」
「知らなかったわ」
「あの時も大変だったな、叔母上達には怒られるし、姉上には大笑いされるしさ」
「ごめんなさい」
「本当に悪いと思ってる?」
「思っているわ、でも驚いたのも本当なのよ」
「また驚かせたら、怒られるかな?」
そう言うと、ダナーに引き寄せられ唇がふれる、今度は頬でなくカリーナの唇に。
「驚いた?」
唇を押さえ、そのまま頭を上下に動かす。
「カリーナが好きだよ。花畑の中で、天使を見つけたと思った時からね」
カリーナが何と答えていいか分からず困っているとダナーが続ける。
「大丈夫だよ、そんな顔しないで。カリーナが僕の事をいたずら好きの幼馴染にしか思っていない事くらい知っているからね」
「ダナー」
「だから知っていて貰おうかと思ってさ、僕がカリーナの事をどう思っているか。
僕だって結構いい男だと思うんだよね、だからカリーナの側に置いてみてよ」
「側にいてどうするの?」
「カリーナが一番好きになった男を選べばいいよ」
「え?」
「サウストリアの女性達は、みんなそうだよ。自分を一番大切にしてくれる男を選ぶ。
もちろん、自分が愛している男達の中からね」
「ダナー、それだと私が沢山の男の人を好きみたいに聞こえるわ」
「カリーナは、僕の事、幼馴染として好きだろう?」
「、、、えぇ」
「亡くなった母上の事、愛していただろう?」
「それは、、、もちろん」
「ほら、気にする事ないよ。色々な好きがあるし、色々な愛情もある、それらが変わることもある。
僕の事も、幼馴染の好きから恋人の好きに変わるかもしれない」
何だか上手く丸め込まれている気がするけど、こうした言い合いでダナーに勝てると思えない。
「でもいきなりキスするのは、やめてね?」
「あれは挨拶だよ?」
「えっ?」
「本物のキスじゃない、、、知りたい?」
「まだ知りたくないわ」
「ふ~ん、まだね」
「もう、ダナー!」
「ハハッ、知りたくなったらいつでも教えてあげるからね?」
ダナーがふざけてウインクして見せる。
彼と一緒にいると、嫌な事を忘れてしまう。
アレス様達を見て、落ち込んでいた事もいつの間にか忘れてしまっている。
レオーナ様は、金色の髪が部屋の明かりでキラキラと輝いていてとても美しく、アレス様もいつもとは違う服装で、まるで別人のようだった。
二人は楽しそうにベランダで話しているかと思うと、アレス様がレオーナ様を引き寄せて、唇を重ねているのが見える。
「へぇ、姉上があんな事を許すとは思わなかったな。アイツがアレスって言うのか?」
「えぇ」
「確かにいい男だな」
「えぇ」
「それに強いんだろう?」
「えぇ」
「カリーナ?」
「ダナー、恥ずかしいわ、覗き見なんて」
「ごめん、ごめん。今日は無理かな?
叔母上達が帰って来てるみたいだ、こんなに人が集まるとは聞いて無かったよ」
来なければ良かった。
ダナーにアレス様を紹介して欲しいと付いて来たけれど、まさかあんなアレス様を見るとは思わなかった。
彼は知らない大人の人で、カリーナの側にいてくれる時とは全く違う人だった。
「カリーナ、ここに座って?」
ベランダから離れ、庭の椅子に座らされる。
「ごめんなさい、紹介できなくて」
「大丈夫だよ、姉上が良く知っているようだしね。それよりびっくりさせちゃったみたいだ」
「うん」
「ねぇ、カリーナ。僕の昔話、聞いてくれる?」
「なぁに?」
「僕が天使にあった時の話」
「天使?」
「そう、僕が9歳の頃かな。兄貴達に何しても敵わくてさ、悔しくて花畑の中を歩いていたら出会ったんだ」
「天使に?」
「そう、栗色の髪の空灰色の瞳をした女の子が花畑の中にいて、その子がじっと僕を見ていたかと思うとにっこり笑ったんだ」
「それって、、、」
「カリーナの事だよ」
「ダナーったら」
「笑ったね、カリーナ。でも本当に、その位驚いたんだよ」
「良かったわ、幽霊だって思われなくて」
「うん、あれが夜でなくて良かったと思ってる」
「もう、、、」
ダナーはカリーナが落ち込んでいるといつも笑わせてくれる。
「ねぇ、どうして虫の抜け殻をくれたの?」
「あれが僕の宝物だったんだ」
「抜け殻が?」
「僕の持っている抜け殻の中で、あれが一番きれいだったんだよ」
「知らなかったわ」
「あの時も大変だったな、叔母上達には怒られるし、姉上には大笑いされるしさ」
「ごめんなさい」
「本当に悪いと思ってる?」
「思っているわ、でも驚いたのも本当なのよ」
「また驚かせたら、怒られるかな?」
そう言うと、ダナーに引き寄せられ唇がふれる、今度は頬でなくカリーナの唇に。
「驚いた?」
唇を押さえ、そのまま頭を上下に動かす。
「カリーナが好きだよ。花畑の中で、天使を見つけたと思った時からね」
カリーナが何と答えていいか分からず困っているとダナーが続ける。
「大丈夫だよ、そんな顔しないで。カリーナが僕の事をいたずら好きの幼馴染にしか思っていない事くらい知っているからね」
「ダナー」
「だから知っていて貰おうかと思ってさ、僕がカリーナの事をどう思っているか。
僕だって結構いい男だと思うんだよね、だからカリーナの側に置いてみてよ」
「側にいてどうするの?」
「カリーナが一番好きになった男を選べばいいよ」
「え?」
「サウストリアの女性達は、みんなそうだよ。自分を一番大切にしてくれる男を選ぶ。
もちろん、自分が愛している男達の中からね」
「ダナー、それだと私が沢山の男の人を好きみたいに聞こえるわ」
「カリーナは、僕の事、幼馴染として好きだろう?」
「、、、えぇ」
「亡くなった母上の事、愛していただろう?」
「それは、、、もちろん」
「ほら、気にする事ないよ。色々な好きがあるし、色々な愛情もある、それらが変わることもある。
僕の事も、幼馴染の好きから恋人の好きに変わるかもしれない」
何だか上手く丸め込まれている気がするけど、こうした言い合いでダナーに勝てると思えない。
「でもいきなりキスするのは、やめてね?」
「あれは挨拶だよ?」
「えっ?」
「本物のキスじゃない、、、知りたい?」
「まだ知りたくないわ」
「ふ~ん、まだね」
「もう、ダナー!」
「ハハッ、知りたくなったらいつでも教えてあげるからね?」
ダナーがふざけてウインクして見せる。
彼と一緒にいると、嫌な事を忘れてしまう。
アレス様達を見て、落ち込んでいた事もいつの間にか忘れてしまっている。
0
あなたにおすすめの小説
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる