21 / 82
第2章
07 王宮で
しおりを挟む
「これはリディア嬢、相変らずお美しい。辺境伯が大切にされている様子が見えるようですな」
王宮に来ると声高に近づいて来る人がいる。
嫌な人に捕まったと思うが、そんな様子をつゆほども見せず、にこやかに答える。
「こんにちは、ドルイド伯爵」
リディアは社交が嫌いな訳では無かった。
貴族の友人、知人もいるし、領地での貴族同士の付き合いも普通に楽しんでいる。
が、こうした場で自分に近づいてくる人々が、自分から何らかの利を得ようとするものだと分かっているので、多少憂鬱にはなる。
ウエストリア辺境伯の娘、その意味や恩恵も知っているつもりだし、それに伴う義務と責任も分かっているが、自分に近づくことで不当に利を得ようと画策される事にどうしても抵抗があった。
彼らは少しでも自分に近づき、欲しい物を得る事が出来ないかと機嫌を取ろうとする。
間接的に近づいてくる事には、面倒でも対応に困る事はないが、こうして直接近づいて来られるのが苦手だった。
「はじめまして、ドルイド伯爵」
「おぉ、アルフレッド殿か。ウエストリア伯によく似ておられる。13歳になられたなら、私の娘と年の頃がちょうど良いな」
アルフレッドが伯爵の前に出て、私に近づけないようにしてくれると、今度はアルフレッドの相手まで決めようとする。
だからここには来たくなかった。
友人が招いてくれた社交の場ではこういった事で困る事はない。
面倒な相手に捕まっても、お互いに上手く間に入って助けあう事ができる。
ドルイド伯爵はそういった意味で面倒な相手だ。
伯爵家として歴史は古く、その一族の何人かが王都の政治を司っている。
大きな力は無いが、無視できない相手。
ここで安易に返事を返すと、それが一生の約束になる可能性がある。
こちらが最近の王都の話題や、先日の舞踏会でのこと、果ては天候の話までして話を変えようとするが、全て無視して自分の娘をアルフレッドと個人的に会わせようとする。
「失礼、彼らをお借りしてもよろしいですか?」
聞きなれた声が割って入る。
「おお、殿下」
「ご令嬢とお約束でもしているのですかな?」
「いえ、お二人と約束がありまして」
殿下が弟は関係ないだろうと言うドルイド伯爵から助けてくれる。
さすがに友好国の王子に何の約束があるのかなど聞く事は出来ないので、伯爵も残念そうに離れて行く。
「ありがとうございます」
「少しここから離れましょう」
小さな声で礼を言うと、庭園の方に促されるので、アルフレッドにエスコートされてその後をついて行く。
「ごめん、姉さま。 僕、上手く出来なくて」
「あたりまえよ。あんな腹黒狸の相手はお父様くらいにならないと」
「お父様くらいになれば、いいの?」
「別にならなくても良いのよ。我が家にあの父が二人いるのも問題だわ、あなたはそのままでいてね」
小さな声でいつもの調子で話していると、前を歩いている人の背中が笑っている。
「まぁ、聞こえているのですか?」
「申し訳ない、私たちは耳が良いので」クックッと笑い続け、「確かに狸に似ているな」などと言う。
「しかし、面白いですね。ああいった所での発言は、ウエストリア伯には意味がないと思えるが」
「そうですね、父には全く意味がありません。そう伝えているつもりなのですが、それを理解している方が思いのほか少ないのです」
着いてそうそう来た事を後悔させられたが、しだいに気持ちが落ち着いてくる。
不思議とこの人の側は居心地がよかった。
最初は嫌われているのかと不安になったが、今はそんな風に感じない。
自分と話している時は、とても楽しそうに笑ってくれるし、必要以上に近づいて来ないので安心していられた。
獣人は、自分が望んだ相手に率直に好意を見せると聞いているので、自分はその対象ではないのだろうと納得もする。
「王宮に来られているとは思いませんでしたわ」
「そうですね、苦手ではあるのですが、、、、、、」
話を続けようとしていると、向こうから、カシム王子が自分を呼びながら近づいて来るのが見える。
「秋に、ウエストリア領に伺う事を楽しみにしています」
そう挨拶され、カシム王子にも会釈してザイード様が離れて行く。
彼が離れた後、カシム王子が聞いてくる。
「殿下をよく知っているのか?」
「先程、ドルイド伯爵に捕まっていた所を助けて頂きました」
「ドルイド伯爵か、苦手なのか?」
「カシム様は、お得意なのですか?」
「まぁ、分かりやすいとは思うな」
「私は、分かりやす過ぎて苦手です」
「ハハッ そうかお前はああいうのが苦手なのか」
「ここには私の苦手な人が沢山いますので、ついつい足が遠のきます」
カシム王子がえらく楽しそうに笑うので、王宮に顔を出さない言い訳を伝えておく。
「それは仕方ないだろ? いない事を確かめてくればいい」
「残念ながら私は魔力を持っていませんので、そんな事はできません」
「弟は出来るだろ? 一緒にくるなら大丈夫じゃないか」
「僕は地の魔力が、得意ではありませんから」
「ならあの護衛を連れてくればいい。あいつは得意そうだ」
「彼はそんな事を教えてくれるほど、やさしくありません」
カシム王子は勝手な事を言っているが、さすがに護衛を連れて王宮に入る事は出来ないのでそう答える。
二つ年上の王子とは、今では友人のような関係になりつつある。
出来れば二人の婚約者たちとも仲良くなりたいが、いまのところその気配はない。
王宮に来ると声高に近づいて来る人がいる。
嫌な人に捕まったと思うが、そんな様子をつゆほども見せず、にこやかに答える。
「こんにちは、ドルイド伯爵」
リディアは社交が嫌いな訳では無かった。
貴族の友人、知人もいるし、領地での貴族同士の付き合いも普通に楽しんでいる。
が、こうした場で自分に近づいてくる人々が、自分から何らかの利を得ようとするものだと分かっているので、多少憂鬱にはなる。
ウエストリア辺境伯の娘、その意味や恩恵も知っているつもりだし、それに伴う義務と責任も分かっているが、自分に近づくことで不当に利を得ようと画策される事にどうしても抵抗があった。
彼らは少しでも自分に近づき、欲しい物を得る事が出来ないかと機嫌を取ろうとする。
間接的に近づいてくる事には、面倒でも対応に困る事はないが、こうして直接近づいて来られるのが苦手だった。
「はじめまして、ドルイド伯爵」
「おぉ、アルフレッド殿か。ウエストリア伯によく似ておられる。13歳になられたなら、私の娘と年の頃がちょうど良いな」
アルフレッドが伯爵の前に出て、私に近づけないようにしてくれると、今度はアルフレッドの相手まで決めようとする。
だからここには来たくなかった。
友人が招いてくれた社交の場ではこういった事で困る事はない。
面倒な相手に捕まっても、お互いに上手く間に入って助けあう事ができる。
ドルイド伯爵はそういった意味で面倒な相手だ。
伯爵家として歴史は古く、その一族の何人かが王都の政治を司っている。
大きな力は無いが、無視できない相手。
ここで安易に返事を返すと、それが一生の約束になる可能性がある。
こちらが最近の王都の話題や、先日の舞踏会でのこと、果ては天候の話までして話を変えようとするが、全て無視して自分の娘をアルフレッドと個人的に会わせようとする。
「失礼、彼らをお借りしてもよろしいですか?」
聞きなれた声が割って入る。
「おお、殿下」
「ご令嬢とお約束でもしているのですかな?」
「いえ、お二人と約束がありまして」
殿下が弟は関係ないだろうと言うドルイド伯爵から助けてくれる。
さすがに友好国の王子に何の約束があるのかなど聞く事は出来ないので、伯爵も残念そうに離れて行く。
「ありがとうございます」
「少しここから離れましょう」
小さな声で礼を言うと、庭園の方に促されるので、アルフレッドにエスコートされてその後をついて行く。
「ごめん、姉さま。 僕、上手く出来なくて」
「あたりまえよ。あんな腹黒狸の相手はお父様くらいにならないと」
「お父様くらいになれば、いいの?」
「別にならなくても良いのよ。我が家にあの父が二人いるのも問題だわ、あなたはそのままでいてね」
小さな声でいつもの調子で話していると、前を歩いている人の背中が笑っている。
「まぁ、聞こえているのですか?」
「申し訳ない、私たちは耳が良いので」クックッと笑い続け、「確かに狸に似ているな」などと言う。
「しかし、面白いですね。ああいった所での発言は、ウエストリア伯には意味がないと思えるが」
「そうですね、父には全く意味がありません。そう伝えているつもりなのですが、それを理解している方が思いのほか少ないのです」
着いてそうそう来た事を後悔させられたが、しだいに気持ちが落ち着いてくる。
不思議とこの人の側は居心地がよかった。
最初は嫌われているのかと不安になったが、今はそんな風に感じない。
自分と話している時は、とても楽しそうに笑ってくれるし、必要以上に近づいて来ないので安心していられた。
獣人は、自分が望んだ相手に率直に好意を見せると聞いているので、自分はその対象ではないのだろうと納得もする。
「王宮に来られているとは思いませんでしたわ」
「そうですね、苦手ではあるのですが、、、、、、」
話を続けようとしていると、向こうから、カシム王子が自分を呼びながら近づいて来るのが見える。
「秋に、ウエストリア領に伺う事を楽しみにしています」
そう挨拶され、カシム王子にも会釈してザイード様が離れて行く。
彼が離れた後、カシム王子が聞いてくる。
「殿下をよく知っているのか?」
「先程、ドルイド伯爵に捕まっていた所を助けて頂きました」
「ドルイド伯爵か、苦手なのか?」
「カシム様は、お得意なのですか?」
「まぁ、分かりやすいとは思うな」
「私は、分かりやす過ぎて苦手です」
「ハハッ そうかお前はああいうのが苦手なのか」
「ここには私の苦手な人が沢山いますので、ついつい足が遠のきます」
カシム王子がえらく楽しそうに笑うので、王宮に顔を出さない言い訳を伝えておく。
「それは仕方ないだろ? いない事を確かめてくればいい」
「残念ながら私は魔力を持っていませんので、そんな事はできません」
「弟は出来るだろ? 一緒にくるなら大丈夫じゃないか」
「僕は地の魔力が、得意ではありませんから」
「ならあの護衛を連れてくればいい。あいつは得意そうだ」
「彼はそんな事を教えてくれるほど、やさしくありません」
カシム王子は勝手な事を言っているが、さすがに護衛を連れて王宮に入る事は出来ないのでそう答える。
二つ年上の王子とは、今では友人のような関係になりつつある。
出来れば二人の婚約者たちとも仲良くなりたいが、いまのところその気配はない。
0
あなたにおすすめの小説
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
安全第一異世界生活
朋
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん)
新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが
初
ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる