エルメニア物語 - 辺境の令嬢は大きな獣に愛される -

小豆こまめ

文字の大きさ
25 / 82
第2章

11 弟

しおりを挟む
「姉さま、そろそろ屋敷に戻った方がいいよ」

 アルフレッドに教えられ屋敷に戻る事にする。
 心配性の弟が、自分を守るように動くのは何時もの事なので、その言葉には素直に従う。

「アル、せっかく王都にいるのだから、自分の行きたい所に行っても良いのよ?」
「別に、楽しいよ」

「ファーレン様に剣の指導をお願いしたのでは無いの?」
「大丈夫、そっちも通っているよ」

「なら、いいのだけど」
「それに師匠にも型をまず完全に覚える様に言われたよ」
「あら、正論」

「分かってるよ、あんまり基本ばかりだからさ、ちょっと嫌になっただけ、ちゃんとやるさ」
「ふふっ、会えて良かったわね」
「うん」

 父の部下であったファーレン様は、現在、サウストリアのイスレイン家の当主になっている。
 数年前までは先代の当主がいたので、ウエストリア家にもよく来ていたが、流石に今ではそんな自由は無くなってしまった。

 アルフレッドが、久しぶりに剣の師に会えるのを楽しみにしていたのはよく知っている。

 
 外に出ると、王都で知り合ったもう一人の人から声をかけられる。

「こんな所でお会いするとは、思いもしませんでした」
「こんにちは、アレス様」

「何か調べものですか?」
「いえ、今日は特に、、、、、、そうだわ、アレス様が王都にいらっしゃるのであれば、少しお時間を頂いても宜しいですか?」
「もちろんです」

「では、明日の午後、工房に来て頂いてもよろしいでしょうか?」
「大丈夫です、必ず伺います」

 少し申し訳ない気がするが、王都にいる時間が短くなっているのでアレス様にも協力して貰う。
 自分を追ってくる者達が、ここ数日集まっているようでジャルドもまとめて対処したい問題だった。

 こちらの予定を偶然知ることが出来れば、彼らはそれに合わせて行動する事になる。
 私を追ってくる者達がジャルドの張った網の中に入ってくれれば、その後の事は、彼に任せておけばいい。

「やっぱり申し訳なかったかしら?」
「アレス様?」
「ええ、変に思われたわよね?」
「別に大丈夫だよ、気が付いていないかもしれないでしょ?」

「そうは思えないけど」
「だとしても、確かめる事は出来ないよ」
「そうね」

「それに工房に来て欲しいのは、本当なんでしょう?」
「そうなの! アニタに織って貰った布がとっても素敵なのよ。
 アレス様がミリオネアに見本を持って行きたいと思っているなら、アニタの織ったものを絶対持って行って欲しいの!」

「良かったね、渡せるよ」
「ふふっ、ありがとう、アル」

 馬車の中で話していても、アルフレッドは時々リディアには分からない仕草を見せる。

 ジャルドが離れている事を知っているアルフレッドが、周りを気にしている証拠で、この優しくて心配性の弟は、本当に可愛い。

「精霊達の話もまた聞けるかしら?」
「気に入ってるようだけど、見えないんだからね」

「分かっているわ、でも想像するのは自由だもの」
「羽根が生えていたり、フワフワ飛んでいたり?」
「そう」
「僕は嫌だな」
「どうして?」

「羽根の生えた人に大切なものをさらわれたら、取り返すのが大変だろ?」
「ふふっ、本当だわ、貴方は高い所も苦手だったわね」

 馬車が屋敷に到着して、やっとアルフレッドが安心した顔をする。

 ジャルドが私から離れる時は、必ず彼の下にいる人が付いてくれている。

 アルフレッドが知らされていないのか、ジャルドほど他の人達を信用していないのか、、、私が守っていた小さな男の子が、いつの間にか私を守る立場になろうとしている。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...