エルメニア物語 - 辺境の令嬢は大きな獣に愛される -

小豆こまめ

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第3章

05 メルニアの街(1)

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「ここは?」
「メルニアです、イリノアの街とは全く違うでしょう?」

 イリノアの街に数日滞在した後、メルニアの街に移動する。

「はい、イリノアは特別だとは聞いていましたが、これほど違うとは思いませんでした」
「ウエストリアの主要な街は、メルニアと同じ造りになっています、街の形を知るには分かりやすいと思いますよ」

 時間帯のせいもあるがほとんど人通りのない街を歩く、稀に歩いている人にも会うが軽く頭を下げる程度で、声を掛けてくるような人はいない。

「彼らは?」
「緑色のタイを付けていたから、薬師堂で働いている方かしら?」

「タイ?」
「はい、王都の入門証と同じような物です。ここでは、街に入ることが出来ても許可された場所にしか立ち入ることが出来ません。
 働いている者は、許可証の代わりにタイを身に付けて目印にしています」

「ウエストリアに到着した日に、トレポレの街は通りましたが、この街は全く印象が違いますね」
「トレポレは商業の街、メルニアは政治の街と言ってよいのかしら。
 この街でザイード様達を案内できる場所は少なくて申し訳ないのですが、図書館もありますよ行ってみますか?」
「ええ、是非」

 ザイード様を案内して街を歩く。
 商店も街路樹もない街並みは、整然としていても冷たく感じる。
 おそらく案内している人達も同じように感じていて、図書館と聞いて嬉しそうになった顔も曇ってくる。

『お父様って本当に面倒な人だわ、ここに来る人が同じように感じる事を分かっていてこの街を作っている』

 別の目的でこの街に来ていたアルフレッドと別れて、図書館の中に入ると、外から感じた重々しさはなく柔らかい光に包まれる。

 ザイード様が、言葉を無くして驚いている。

「外から見た印象と違うでしょう?」
「ええ、中庭があるのですか?」

「ええ、メルニアの建物は基本同じような造りになっていて、外から見ると重々しくて堅苦しく感じるけれど、中に入ってみると明るく開放的になっています」

「リディア嬢も人が悪い」
「ごめんなさい、私も初めて来たときは同じ事をされたのよ。これはこの街に初めて来た人が必ずやられる“いたずら”なの、怒らないで下さいね」

「もちろん怒ってなどいませんが」
「一応理由もあるんですよ。この辺りは、ネラ山脈からの風が強くて、こうした中庭の方が過ごしやすいんです。その冷たい風がポロの実を凍らせてくれるのですけれど、人には歓迎されません」

「ウエストリアの貴腐ワインですね」
「ええ、おまけにそのポロの実を狙って、まれに明るいころから魔物が下りてきます。その為にもこうした造りの建物の方が良いのだそうです」

「この街は新しいですね」
「ふふっ、そうですね、この街は、父の代になって整備されています」

 笑いながら話をしていると、彼も父の意図的ものを感じて酷く嫌な顔をするのでまた笑ってしまう。
 この人は、ウエストリア伯と呼ばれる父の事を本当に良く解っている。
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