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第4章
05 リディア
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ウエストリア家を出発した頃から、なんだか心細くて仕方がない。
自分が守られている事は知っていたし、その人達が側にいない方法を選んだのも自分なのに、いつも左手にあるリングは無いし、相談に乗ってくれる人も、口の悪い人も側にいない。
何年も同じ魔鉱石にアルフレッドが魔力を入れていたので、今ではリングに付いた魔鉱石が緋色になっていて、どんなに他人に装っても緋色の石を持っていれば、領主の娘がどこにいるか、大きな鈴を鳴らしながら移動するのと同じ意味がある。
ロニやジャルドも同じで、彼らが側にいれば、誰が旅しているのかすぐ知られてしまうだろう。
セレスティアに心配させられないし、それなりに侍女の仕事もあるので気が紛れているが、寂しいと感じる気持ちは無くならない。
いつも側にいてくれた人の事と同じように、ザイード様の事を考える。
困ったように自分を見つめていた菫色の瞳や、守るように側にいてくれたこと。
本来の姿でいるのも必ず自分の側にいる時だけだったし、彼が触れるのを許していたのも私だけだった。
思い出してみると、サイラス様のようにはっきりとした物では無かったが、彼がとても私を大切にしてくれていたのが分かる。
彼の愛情に守られて、只、甘えていただけだと分かってしまうと、とっても恥ずかしいのに、それを嬉しいと思っているのだから始末におえない。
心の中はふわふわと落ち着きが無くても、旅は楽しく、心配するような問題も無く終わりに近づいていた。
ローエングルグ家の騎士達には顔を知られているので、いつまで誤魔化せるかと思っていたが、もう一人の侍女が助けになってくれた。
彼女は、遠方の街からローエングルグ家に侍女見習いとして来たばかりの娘で、セレスティナの侍女として人前に出る事を喜んで引き受けてくれたので、私は奥向きの仕事をすれば良かった。
そろそろ馬車での移動が辛くなってきた頃、エルメニア最大の港街、ロートアの街に到着した。
ミリオネアに出発する準備の為、アレス様の商館に案内されると、見覚えのある人が近づいて来る。
微笑みながら歩いている人の周りで見惚れている女性たちに、この人が魔術師と呼ばれ、父の部下の中でも一際恐れられた人だと教えてあげたくなる。
平民出身のエリス様は、父が"黄金の狼"と呼ばれるようになったアッタリア戦の後、貴族の称号を得る事も、社交界に出る事も無かったので、容姿があまり知られていない。
彼を見た目で判断し大変な思いをした人は、決して少なく無いはずだった。
それにしても、安全だと言っていた国に行く時になっておじ様が来るなんて、お父様は何を考えているんだろう?
『ミリオネアでゾルド教がお前に手を出して来る事は無いよ、そう言う意味では安全な場所だ。あの国で、お前の命を脅かす者はいないだろう』
本当に面倒な人だわ。
父は良く『考えろ』という言葉を口にする。
幼い頃、ガリウス様と父の話を聞いた私が、アルを誘ってトレポレの街に行く荷馬車に潜り込んで大騒ぎになった事がある。
街をウロウロしている間にアルフレッドとも離れ、出会った少女と街中を走り回り、学び舎に隠れていた所を父やガリウス様に見つかったが、その時も散々同じ言葉を言われた。
「家に入る時は、はめ板を外して入るものでは無いよ」
「リオンが教えてくれたのよ」
「それに、屋台の周りを走り回るものでもね」
「追いかけて来る人がいたんだもの」
「困ったものだね、明日からリディアの真似をする子ども達が増えても、僕はどうする事も出来ないな」
「それは、、、、、、」
「それに屋敷から抜け出して、どうなるか考え無かったのかな?」
「ガリウス様の話を聞いて、私が行きたくなる事くらいお父様は分かっていたでしょう?
行ってはいけないと言われれば、来なかったわ」
「おや、リディアは屋敷から君達がいなくなって、どれだけメリッサが心配するか考えることも出来ないのかな?」
確かに肩に担がれていたので、父の顔は見えなかったが、周りにいた兵士は安心した顔をしていたし、屋敷に残っていたフランツまでトレポレに来ているのだから、母がどれだけ心配していたのかくらい分かる。
「リディアと離れて、アルフレッドがどんな状態だったかも」
「ごめんなさい」
「リディア、怒っている訳では無いよ。お前のする事は、多くの人に影響を与える。その事をよく考えなさい」
考えろと言うのなら、少しくらいヒントをくれてもいいと思うわ。
それで無くてもフワフワと落ち着かず、これから見た事も無い不思議な国に行こうとしているのに、少しくらい考える事が疎かになっても許して欲しい。
自分が守られている事は知っていたし、その人達が側にいない方法を選んだのも自分なのに、いつも左手にあるリングは無いし、相談に乗ってくれる人も、口の悪い人も側にいない。
何年も同じ魔鉱石にアルフレッドが魔力を入れていたので、今ではリングに付いた魔鉱石が緋色になっていて、どんなに他人に装っても緋色の石を持っていれば、領主の娘がどこにいるか、大きな鈴を鳴らしながら移動するのと同じ意味がある。
ロニやジャルドも同じで、彼らが側にいれば、誰が旅しているのかすぐ知られてしまうだろう。
セレスティアに心配させられないし、それなりに侍女の仕事もあるので気が紛れているが、寂しいと感じる気持ちは無くならない。
いつも側にいてくれた人の事と同じように、ザイード様の事を考える。
困ったように自分を見つめていた菫色の瞳や、守るように側にいてくれたこと。
本来の姿でいるのも必ず自分の側にいる時だけだったし、彼が触れるのを許していたのも私だけだった。
思い出してみると、サイラス様のようにはっきりとした物では無かったが、彼がとても私を大切にしてくれていたのが分かる。
彼の愛情に守られて、只、甘えていただけだと分かってしまうと、とっても恥ずかしいのに、それを嬉しいと思っているのだから始末におえない。
心の中はふわふわと落ち着きが無くても、旅は楽しく、心配するような問題も無く終わりに近づいていた。
ローエングルグ家の騎士達には顔を知られているので、いつまで誤魔化せるかと思っていたが、もう一人の侍女が助けになってくれた。
彼女は、遠方の街からローエングルグ家に侍女見習いとして来たばかりの娘で、セレスティナの侍女として人前に出る事を喜んで引き受けてくれたので、私は奥向きの仕事をすれば良かった。
そろそろ馬車での移動が辛くなってきた頃、エルメニア最大の港街、ロートアの街に到着した。
ミリオネアに出発する準備の為、アレス様の商館に案内されると、見覚えのある人が近づいて来る。
微笑みながら歩いている人の周りで見惚れている女性たちに、この人が魔術師と呼ばれ、父の部下の中でも一際恐れられた人だと教えてあげたくなる。
平民出身のエリス様は、父が"黄金の狼"と呼ばれるようになったアッタリア戦の後、貴族の称号を得る事も、社交界に出る事も無かったので、容姿があまり知られていない。
彼を見た目で判断し大変な思いをした人は、決して少なく無いはずだった。
それにしても、安全だと言っていた国に行く時になっておじ様が来るなんて、お父様は何を考えているんだろう?
『ミリオネアでゾルド教がお前に手を出して来る事は無いよ、そう言う意味では安全な場所だ。あの国で、お前の命を脅かす者はいないだろう』
本当に面倒な人だわ。
父は良く『考えろ』という言葉を口にする。
幼い頃、ガリウス様と父の話を聞いた私が、アルを誘ってトレポレの街に行く荷馬車に潜り込んで大騒ぎになった事がある。
街をウロウロしている間にアルフレッドとも離れ、出会った少女と街中を走り回り、学び舎に隠れていた所を父やガリウス様に見つかったが、その時も散々同じ言葉を言われた。
「家に入る時は、はめ板を外して入るものでは無いよ」
「リオンが教えてくれたのよ」
「それに、屋台の周りを走り回るものでもね」
「追いかけて来る人がいたんだもの」
「困ったものだね、明日からリディアの真似をする子ども達が増えても、僕はどうする事も出来ないな」
「それは、、、、、、」
「それに屋敷から抜け出して、どうなるか考え無かったのかな?」
「ガリウス様の話を聞いて、私が行きたくなる事くらいお父様は分かっていたでしょう?
行ってはいけないと言われれば、来なかったわ」
「おや、リディアは屋敷から君達がいなくなって、どれだけメリッサが心配するか考えることも出来ないのかな?」
確かに肩に担がれていたので、父の顔は見えなかったが、周りにいた兵士は安心した顔をしていたし、屋敷に残っていたフランツまでトレポレに来ているのだから、母がどれだけ心配していたのかくらい分かる。
「リディアと離れて、アルフレッドがどんな状態だったかも」
「ごめんなさい」
「リディア、怒っている訳では無いよ。お前のする事は、多くの人に影響を与える。その事をよく考えなさい」
考えろと言うのなら、少しくらいヒントをくれてもいいと思うわ。
それで無くてもフワフワと落ち着かず、これから見た事も無い不思議な国に行こうとしているのに、少しくらい考える事が疎かになっても許して欲しい。
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