エルメニア物語 - 辺境の令嬢は大きな獣に愛される -

小豆こまめ

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第4章

08 精霊の国(1)

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 気がつくと、そこは見た事もない場所で、周りにはキラキラ、ヒラヒラした人達から、「お帰りなさい、アイリーン様」「お帰りなさい」と歓迎される。

 何が起きたのか考える間もなく、さあさあと知らない場所を歩かされ、その間も知らない名前で呼ばれ、良く解らない歓迎を受け続ける。

 さっぱり意味が解らないが、とりあえず体がだるい。
 森の中を一日中歩いたみたいで、疲れて眠たくて仕方がないのに、あちこちで声がするので、それが気になって考える事も出来ない。

「お願い、少し声をかけないでちょうだい、、、」

 そう言うと、さぁっと周りの人達がいなくなり、声も聞こえなくなる。

 とりあえず、落ち着こう。
 さっきまでおじ様とアレス様と一緒に島を歩いているはずだった。

 素晴らしい景色を見た後、大きな木に近づくと光の中に入ってしまって、意識が無くなったと思ったら、ここに来ていた。

 見た事もない部屋に、知らない人達。

『お前は、もう少し考えて行動しなさい』

 昔、父によく言われた言葉を思い出す。

「ここは、どこなのかしら?」

 考えたいのに、眠たくて、頭が思ったように働かない。

『そんな時は、眠ることです。ゆっくり寝て起きれば、ちゃんと考える事が出来ますよ』

 今度は、ロニの言葉を思い出す。
 確かにロニは正しい、こんな時は、父の言葉よりずっと役に立つ。

 そのまま意識を手離す、とりあえず命の危険はないみたい、その後の事は、目が覚めてから考えればいい。

 美味しそうな匂いに釣られて目が覚める。
 よく眠ったので頭はスッキリしているし、気分もいい。

 気が付いてみると、目の前に食事を用意している人達が、じっとこちらを見て何か言いたそうにしている。

 意識を失う前、声をかけるなと言ったので、どうやら話かけて良いか迷っているのだろう。

「私のことを、リディアと呼んでくれるなら、話かけても大丈夫よ」

 声をかけると、嬉しそうに「リディア様」、「リディア様」と話しかけてくる。

「リディア様、お腹は空いていませんか?」
「リディア様、お食事をどうぞ」

「ありがとう」
「あの、召し上がるのですか?」

 食事を勧めてくれるので食べ始めると、一人の精霊がと不思議そうに聞いてくる。

「なぜ? 毒でも入っているの?」
「いいえ、とんでもない。アイリーン様は、怒っていらっしゃると何も召し上がらなかったので」

 相変わらず知らない人の名前が出てくる。

「そうなの? 私は食べるわよ、お腹が空いていい事なんてないもの」

 そう答えると、また、「これも、これも」と勧められる。

 お腹もいっぱいになったので、周りにいる人達に聞いてみる。

「ねぇ、聞いてもいいかしら?」
「なんでしょう」
「アイリーンと言うのは、誰のことなの?」

「それは、、、」と顔を見合わせていたが、少しずつ言葉が出て来る。

「王のお嬢様です」
「ずっと前に居なくなって」
「戻って来られるのを、ずっとお待ちしていました」

「王様って?」

「私達の王、精霊の王様です」
「ずっと待っていらっしゃったのですよ」

 話始めると、溢れ出るように続く。

 要するに、精霊王の娘の名前がアイリーンで、私はその人に似ているらしい。
 おそらく容姿だけでなく、彼らにとっては、もっと別の何かが。

 そう言えば、父の書斎でそんな名前を見た覚えがある。
 だから、エリスおじ様が来ているのだわ、それも魔道具を持って、本当にお父様は相変わらずだわ。

「私を連れてきたのは、その王様なのね」と聞くと、
「そうですよ」「そうですよ」嬉しそうに周りの人達が答える。

 どのくらい眠っていたか分からないけれど、まだエリスおじ様が我慢しているのは分かる。
 いくら精霊でも、向こうの世界で問題が起これば、何も感じ無いはずはない。

 エリス様は、私にとっては誰よりも優しいもう一人の父親だが、父の部下の中では誰よりも気が短い。
 特に父や私に対しては、顕著けんちょで何かあるとすぐ導火線に火がつく。

 それを承知で、父がおじ様を一緒に来させたなら、気を付けないと島の一つや二つすぐ無くなってしまうだろう。
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