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第5章
22 出発
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「アル、いるの?」
出発の前日、部屋に引きこもっているアルフレッドと話をするためにドアをノックする。
「うん、どうしたの?」
顔を見せると直ぐに部屋の中に招いて、長椅子に座らせてくれるので、つい頭を撫ぜる。
「ありがとう」
「姉さまは、明日出発するでしょう? 気をつけて、無理しちゃダメだよ?」
「ふふっ、大丈夫よ。それより、貴方の方こそ気をつけてね」
「僕?」
「そう」
「どうして僕が気を付けるの?」
「まぁ、お父様に話を聞いたのでは無いの?」
相変わらず面倒な人だわ、私から知らせるつもりだったのかしら?
「何を?」
「アルが、イルネラの街に行くって聞いたわ。だからウエストリアに一緒に帰らないって」
イルネラの街は、”トゥグ”の鉱石が取れる場所だった。
数名のメンバーでチームを作り、魔物のいる場所に行き、それらを排除して鉱石を獲る。
取った”トゥグ”は、ウエストリアに納めなくてはならないが、魔物が落とす魔石や森で取れる貴重な薬草は、イルネラの街では高値で取り引きされているため、街には、父との約定に従って仕事をしている者の以外にも、冒険者と呼ばれる流れ者が集まる場所だった。
「僕が行っても役に立たないよ」
「どうして?」
「あそこは強い者が行く場所だろ?」
「アルは、強い者では無いの?」
「僕は強く無いよ」
「アルにとって強い人はだれ?」
「父さまとか、殿下とかかな、姉さまだってそう思うでしょう?」
「そうねぇ、弱くは無いと思うけれど、私にとってお父様は面倒な人で、ザィード様は困った人だから」
「困った人なの?」
「ふふっ、そうね」
「じゃぁ、僕は?」
「アルは、弟よ。きっとこれからどんどん変わっていくわ、楽しみね」
「変わる?」
「ええ。貴方は、これからだもの。お父様だって、昔からあんなに面倒な人では無かったはずよ、絶対かわいい子どもの時代があったはずだと思いたいわ」
「僕も変われるかな」
「きっと。でもお父様を目指さないでね」
「父さまはダメなの? 目標って必要だと思うけど」
「アルがなりたい人になればいいわ」
「僕がなりたい人?」
「そう」
「それって難しくない?」
「そうかしら? アルが決めればいいのよ、先に進む時や何かを行う時、自分が間違っていないと思った方に進めばいいの。その為に何をすればいいか、考えればいいの」
「僕の選択が間違ったらどうするの?」
「それは大丈夫よ」
「どうして?」
「私が知っているから」
「側にいないくせに」
「でも今まで側にいたわ、だからアルフレッドがどんな選択をするか、ちゃんと分かっている」
翌日、ウエストリアに向けて出発する。
転移門を使わずに、街道を通って行くため、ジャルドの他に数名の兵が付き、何台かの馬車が並ぶ。
ザイード様とアルフレッドが何か話しているのを見ていると、この一年で、幼いと思っていた弟がすっかり大きくなっている事に本当に驚く。
昨日、アルフレッドと話したようにきっと彼はこれから変わって行くのだろう。
どんな風に変わるのか見ていたい気もするし、次に会う時を楽しみに取っておきたい気もする。
ただどんな風に変わっても、きっとこの優しい弟の本質は変わらないだろう。
西に向けて馬車が出発する。
これからしばらくの間、二人だけの時間になる。
彼がこわれ物を扱うようにそっとふれる。
優しくて暖かい気持ちになるけれど、初めてキスされた時を思い出すとちょっと物足りないし、これからどう変わるかちょっと楽しみでもある。
そしてウエストリアに戻り、数日後。
私はこの優しい人の腕の中で目覚めるようになる。
出発の前日、部屋に引きこもっているアルフレッドと話をするためにドアをノックする。
「うん、どうしたの?」
顔を見せると直ぐに部屋の中に招いて、長椅子に座らせてくれるので、つい頭を撫ぜる。
「ありがとう」
「姉さまは、明日出発するでしょう? 気をつけて、無理しちゃダメだよ?」
「ふふっ、大丈夫よ。それより、貴方の方こそ気をつけてね」
「僕?」
「そう」
「どうして僕が気を付けるの?」
「まぁ、お父様に話を聞いたのでは無いの?」
相変わらず面倒な人だわ、私から知らせるつもりだったのかしら?
「何を?」
「アルが、イルネラの街に行くって聞いたわ。だからウエストリアに一緒に帰らないって」
イルネラの街は、”トゥグ”の鉱石が取れる場所だった。
数名のメンバーでチームを作り、魔物のいる場所に行き、それらを排除して鉱石を獲る。
取った”トゥグ”は、ウエストリアに納めなくてはならないが、魔物が落とす魔石や森で取れる貴重な薬草は、イルネラの街では高値で取り引きされているため、街には、父との約定に従って仕事をしている者の以外にも、冒険者と呼ばれる流れ者が集まる場所だった。
「僕が行っても役に立たないよ」
「どうして?」
「あそこは強い者が行く場所だろ?」
「アルは、強い者では無いの?」
「僕は強く無いよ」
「アルにとって強い人はだれ?」
「父さまとか、殿下とかかな、姉さまだってそう思うでしょう?」
「そうねぇ、弱くは無いと思うけれど、私にとってお父様は面倒な人で、ザィード様は困った人だから」
「困った人なの?」
「ふふっ、そうね」
「じゃぁ、僕は?」
「アルは、弟よ。きっとこれからどんどん変わっていくわ、楽しみね」
「変わる?」
「ええ。貴方は、これからだもの。お父様だって、昔からあんなに面倒な人では無かったはずよ、絶対かわいい子どもの時代があったはずだと思いたいわ」
「僕も変われるかな」
「きっと。でもお父様を目指さないでね」
「父さまはダメなの? 目標って必要だと思うけど」
「アルがなりたい人になればいいわ」
「僕がなりたい人?」
「そう」
「それって難しくない?」
「そうかしら? アルが決めればいいのよ、先に進む時や何かを行う時、自分が間違っていないと思った方に進めばいいの。その為に何をすればいいか、考えればいいの」
「僕の選択が間違ったらどうするの?」
「それは大丈夫よ」
「どうして?」
「私が知っているから」
「側にいないくせに」
「でも今まで側にいたわ、だからアルフレッドがどんな選択をするか、ちゃんと分かっている」
翌日、ウエストリアに向けて出発する。
転移門を使わずに、街道を通って行くため、ジャルドの他に数名の兵が付き、何台かの馬車が並ぶ。
ザイード様とアルフレッドが何か話しているのを見ていると、この一年で、幼いと思っていた弟がすっかり大きくなっている事に本当に驚く。
昨日、アルフレッドと話したようにきっと彼はこれから変わって行くのだろう。
どんな風に変わるのか見ていたい気もするし、次に会う時を楽しみに取っておきたい気もする。
ただどんな風に変わっても、きっとこの優しい弟の本質は変わらないだろう。
西に向けて馬車が出発する。
これからしばらくの間、二人だけの時間になる。
彼がこわれ物を扱うようにそっとふれる。
優しくて暖かい気持ちになるけれど、初めてキスされた時を思い出すとちょっと物足りないし、これからどう変わるかちょっと楽しみでもある。
そしてウエストリアに戻り、数日後。
私はこの優しい人の腕の中で目覚めるようになる。
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