77 / 82
第5章
21 約定
しおりを挟む
ジャルドが朝の日課のようにやって来て、お茶を飲みながら話して行く。
ロニが作るお菓子目当てでは無いかと思う時もあるけれど、状況が分からない私に色々教えてくれる為なのだと理解している。
もちろん、教えるので大人しくしておけという意味もあるけれど。
屋敷の中の事は、ロニが。
屋敷の外の事は、ジャルドが何かと知らせてくる。
ウエストリアを離れても、彼らが側に居てくれると良いけれど、二人はあくまで父の使用人であって私のではない。
おまけに知らない土地に行く事は、彼らにとっても大変なはずだ。
「ロニにはこれからも一緒にいて欲しいのだけど、良かったのかしら?」
「まぁ、当然ではありませんか」
「ガルスに行く事になってもいいの?」
ロニがウエストリア家の騎士と、個人的な付き合いをしているのは知っているが、おそらく彼をガルスに連れて行くことは難しい。それは彼女も知っているはずだった。
「勿論です」
「でもねぇ、、、せめて婚約くらいなら大丈夫だと思うけど」
「お嬢様、私はカリナ様のようになりたいと思っておりますので、男性と婚姻を結ぶつもりはありません」
マルタの娘であるカリナは、夫を持つことなく二人の子どもを育てている。
「そうなの?」
「はい、お嬢様は反対なさいますか? そうなれば赤ん坊を連れている事もあると思いますので」
「もう子どもがいるの?」
「いえ、残念ながら」
「まぁ、楽しみだわ。 ロニの子どもなら絶対可愛いわね。
なら私も、ロニの子ども達がガルスで暮らせるように、しっかりしないとね」
「お手伝いします」
「ありがとう、ロニ」
それで彼女との話は終わりになった。
お父様の所に相手から申し込みがあった様だが、それを受けなかった理由も私にあるのかも知れないが、今は甘える事にする。
翌日、もう一人の相手とも話をする。
「ねぇ、ジャルド。聞いたこと無かったのだけど、貴方とお父様の約定はどうなっているの?」
「何すか、お嬢が雇ってくれるんすか?」
「それは約定の内容によるわ」
「へぇ、だがお嬢じゃちょっと役不足かなぁ」
「まぁ、そんなに厳しいの?」
「俺、メシが不味いと働けないっすよ」
「えっ、マルタ以上が必要なの? それは大変だわ」
「お嬢の料理に期待してないっすよ」
「正直にありがとう。でも食事ねぇ、それは困ったわね。
サイラス様が、マリのトルテを食べたとき、レテ豆は苦いから小麦が美味しいって言っていたのよね」
「まぁ、少しの間、待っても良いっすよ。お嬢だってメシは美味い方が、って思うっしょ」
「それはそうね。私の料理の腕が上がるかもしれないし」
「それ、時間かかりそうっすね」
「失礼ね、アルは喜んで食べてくれるわ」
「いや、不味いとは言ってないっすよ。俺は、美味い飯って言っているだけで」
「本当に正直な人ね」
「ま、俺の事はいいっすよ。それより昨日は何で殿下を困らせてたんすか?」
「別に困らせるつもりは無いのよ。ザイード様が私に魔力を入れようとするから、ダメって言っただけ」
「別にいいじゃないっすか、少しくらいの魔力、貰っておけばいいでしょう?」
「ジャルド、彼は私が部屋で躓いても心配して大騒ぎするのよ、本当にそれで良いと思うの?」
「まぁ、確かに」
「少しは慣れて貰わないと」
「今は仕方ないっすよ。体調が戻ってないのは本当なんすから」
「それでもよ。時間が経てば体調は戻るわ、この位平気なんだと知って貰わないと困るわ。
それに私は自分の中にある魔力は使えないのもの、勿体ないでしょう?」
「あゝ、なるほど」
「なぁに?」
「お嬢が主人の娘だったと思い出したっすよ」
「まぁ失礼ね、あんなに腹黒くありません」
目の前で相変わらず口の悪い人が、美味しそうにテーブルに置かれたお菓子を食べる。
彼の約定は良く分からないが、どうやら一緒に来てくれるみたい。
知らない北の国に行く事も、二人が側にいてくれると安心していられるし、その国で何があったとしても、この二人はきっと変わらないだろう。
楽しい事や困った事が起きても、一人は相変わらず茶化してくるだろうし、一人は一緒に喜んだり考えたりしてくれるに違いない。
そうしていれば、どんな事でもきっと何とかなる。
ザイード様と二人がいてくれるなら、それがどこであっても、きっと笑っていられるに違いない。
ロニが作るお菓子目当てでは無いかと思う時もあるけれど、状況が分からない私に色々教えてくれる為なのだと理解している。
もちろん、教えるので大人しくしておけという意味もあるけれど。
屋敷の中の事は、ロニが。
屋敷の外の事は、ジャルドが何かと知らせてくる。
ウエストリアを離れても、彼らが側に居てくれると良いけれど、二人はあくまで父の使用人であって私のではない。
おまけに知らない土地に行く事は、彼らにとっても大変なはずだ。
「ロニにはこれからも一緒にいて欲しいのだけど、良かったのかしら?」
「まぁ、当然ではありませんか」
「ガルスに行く事になってもいいの?」
ロニがウエストリア家の騎士と、個人的な付き合いをしているのは知っているが、おそらく彼をガルスに連れて行くことは難しい。それは彼女も知っているはずだった。
「勿論です」
「でもねぇ、、、せめて婚約くらいなら大丈夫だと思うけど」
「お嬢様、私はカリナ様のようになりたいと思っておりますので、男性と婚姻を結ぶつもりはありません」
マルタの娘であるカリナは、夫を持つことなく二人の子どもを育てている。
「そうなの?」
「はい、お嬢様は反対なさいますか? そうなれば赤ん坊を連れている事もあると思いますので」
「もう子どもがいるの?」
「いえ、残念ながら」
「まぁ、楽しみだわ。 ロニの子どもなら絶対可愛いわね。
なら私も、ロニの子ども達がガルスで暮らせるように、しっかりしないとね」
「お手伝いします」
「ありがとう、ロニ」
それで彼女との話は終わりになった。
お父様の所に相手から申し込みがあった様だが、それを受けなかった理由も私にあるのかも知れないが、今は甘える事にする。
翌日、もう一人の相手とも話をする。
「ねぇ、ジャルド。聞いたこと無かったのだけど、貴方とお父様の約定はどうなっているの?」
「何すか、お嬢が雇ってくれるんすか?」
「それは約定の内容によるわ」
「へぇ、だがお嬢じゃちょっと役不足かなぁ」
「まぁ、そんなに厳しいの?」
「俺、メシが不味いと働けないっすよ」
「えっ、マルタ以上が必要なの? それは大変だわ」
「お嬢の料理に期待してないっすよ」
「正直にありがとう。でも食事ねぇ、それは困ったわね。
サイラス様が、マリのトルテを食べたとき、レテ豆は苦いから小麦が美味しいって言っていたのよね」
「まぁ、少しの間、待っても良いっすよ。お嬢だってメシは美味い方が、って思うっしょ」
「それはそうね。私の料理の腕が上がるかもしれないし」
「それ、時間かかりそうっすね」
「失礼ね、アルは喜んで食べてくれるわ」
「いや、不味いとは言ってないっすよ。俺は、美味い飯って言っているだけで」
「本当に正直な人ね」
「ま、俺の事はいいっすよ。それより昨日は何で殿下を困らせてたんすか?」
「別に困らせるつもりは無いのよ。ザイード様が私に魔力を入れようとするから、ダメって言っただけ」
「別にいいじゃないっすか、少しくらいの魔力、貰っておけばいいでしょう?」
「ジャルド、彼は私が部屋で躓いても心配して大騒ぎするのよ、本当にそれで良いと思うの?」
「まぁ、確かに」
「少しは慣れて貰わないと」
「今は仕方ないっすよ。体調が戻ってないのは本当なんすから」
「それでもよ。時間が経てば体調は戻るわ、この位平気なんだと知って貰わないと困るわ。
それに私は自分の中にある魔力は使えないのもの、勿体ないでしょう?」
「あゝ、なるほど」
「なぁに?」
「お嬢が主人の娘だったと思い出したっすよ」
「まぁ失礼ね、あんなに腹黒くありません」
目の前で相変わらず口の悪い人が、美味しそうにテーブルに置かれたお菓子を食べる。
彼の約定は良く分からないが、どうやら一緒に来てくれるみたい。
知らない北の国に行く事も、二人が側にいてくれると安心していられるし、その国で何があったとしても、この二人はきっと変わらないだろう。
楽しい事や困った事が起きても、一人は相変わらず茶化してくるだろうし、一人は一緒に喜んだり考えたりしてくれるに違いない。
そうしていれば、どんな事でもきっと何とかなる。
ザイード様と二人がいてくれるなら、それがどこであっても、きっと笑っていられるに違いない。
0
あなたにおすすめの小説
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
安全第一異世界生活
朋
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん)
新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが
初
ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる