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第6章
02 その後(2)
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案内された場所は、不思議な所だった。
街道から遠く外れた林の中にある家は、高い壁に囲まれ魔物から守ると言うより、人々から隠れる様に作られていた。
一見近づき難いその家も、中は明るく、庭には色とりどりの花が咲いている。
「不思議な場所ね、誰も住んでいないのかしら?」
「知っている人がいるみたいだ」
ザィード様が教えてくれる。
「オルグ様」
「やぁ、遅かったね。もう少し早くなるかと思っていたよ」
「心配して下さったのですか?」
「いや、だが部屋は用意してある。少し休みなさい」
「ありがとうございます」
オルグ様が家の中に案内しながら、誰が住んでいたのか話してくれる。
「ここは、イスハ様が住んでいた家だよ」
「ではカリーナが生まれた家ですか?」
「6歳の頃までここにいらっしゃったね」
「そうですか、少し寂しい所ですね」
「そうかもしれないが、これ以上は難しい立場の方だったし、イスハ様は、元々世俗に興味を持っておられない方だったからね」
「そんな方を王位に就かせようとしたのですか?」
「権力を欲するのは、昔から、だいたい周りにいる人間だよ」
「そうなのかも、知れませんね」
「まぁ、気にする事は無いよ、今では只の空き家だ。
数日分の食糧は用意してあるから、少し休むといい。僕は行くが、何かして欲しい事はあるかい?」
「では、バーナード様にお願いして、アンドラの街に兵を数名送って下さるように伝えて下さい」
「周りでも固めるのかな?」
「お父様の領内ですし、もう無茶な事をする人もいないかも知れませんが、それが一番簡単ですから」
「分かったよ、伝えておこう」
「ありがとうございます」
これで問題が一つ片付いたので、もう一つをどうにかしないといけない。
昨夜、馬で移動するならせめて魔力を入れる様にとザィード様に何度も言われたが、結局、嫌だと言い続けたので、彼が大変な事になっている。
彼は心配し過ぎて朝からずっと機嫌が悪く、ジャルドは笑っているが、騎士達が怖がって近づけない。
家の周囲を確認して来たらしい銀色の狼が、部屋の中に入って来る。
「ザィード様」
辛いことがあれは抱きしめて下さいとお願いしていたので、両手を差し出すと、しばらく迷っていたザィード様が大きなため息をついて、人の姿に変わる。
「なぜそんなに頑固なんだ」
「嫌いになりましたか?」
「そうではないが、、、こう言う所は似ていないのだな」
「まぁ、誰にですか?」
「サイラスの番にだ。彼女は、リディアに似ている」
「まぁ、私とセレスティナが似ていると言った人は初めてです」
「そうなのか?」
「似ているなら、彼女の母親の方が、私に似ているでしょう?」
「確かに同じ様な、髪色をしていたが」
「彼女は、母の異母妹なので、セレスティナは私の従姉妹になります、似ていても不思議では無いですね」
「その割に外見は似ていないな」
「それが、セレスティナの人見知りの原因でしょうね」
「ん?」
「私と母は似ているでしょう?」
「まぁ、そうだな」
「ふふっ、似ているのは母だけでは無いんですよ、金髪に緑色の瞳、ハーフスコード家の人間はみんな同じです」
「同じ?」
「そう。祖父母も母の兄弟達も、その子ども達もですわ、元々、癒やしの使い手を多く出している家なので、嫁いで来る方も、髪の色はともかく瞳は緑色の人がほとんどです」
「それは凄いな」
「ラディア様は社交的な人だし、セレスティナも幼い頃から家の集まりに出席していたのでしょうね」
「確かにその中にいては目立つだろうが、珍しい色では無いと思うが」
「そうですね、世の中を知ってしまえば、一つの家の小さな世界の事なんでしょうが、幼い頃はその小さな世界が全てですから」
それに幼い子どもが集まっていれば、異物を排除しようとする事は良くある話だ。
「リディアはいなかったのか?」
「母は元々社交が苦手な人で、私も森で暮らしていましたから、、、セレスティナと知り合った時も、彼女がハーフスコードの血縁だとは思いもしませんでした」
「そうか」
そのままザィード様が髪を優しく撫ぜてくれるので、少し話を続ける。
「ザィード様、忘れないで下さいね?」
「何をだ」
「ハーフスコード家の者が、みな同じ様な容姿をしている事」
「ん?」
「ザィード様と私の子ども達にも言えるのですからね? ザィード様の、、、」
言い終わらないうちに唇が重なる。
いつもの優しいキスではなく、深く激しいキス。
彼が覆い被さり、強く抱きしめられて、ぼ~となっていると、トントンと扉を叩く音が聞こえる。
部屋から出ていたロニが戻って来たみたい。
ザィード様が名残惜しそうに離れながら、不機嫌に話すのが聞こえて来る。
「リディア、刺激するな、抑えが効かなくなる」
「いけませんか?」
「ダメだ。体調も戻っていないだろう」
そう思っているから、ロニも戻って来たのだろう。
「わかりました、大人しくしています」
それにここは住み慣れた家でも無い。
機嫌を直して貰うつもりだったのに、なんだかまた悪くなったみたい。
ウエストリアの家に戻るまで、本当に大人しくしていないと、別の意味でザィード様に誰も近づけなくなってしまう。
街道から遠く外れた林の中にある家は、高い壁に囲まれ魔物から守ると言うより、人々から隠れる様に作られていた。
一見近づき難いその家も、中は明るく、庭には色とりどりの花が咲いている。
「不思議な場所ね、誰も住んでいないのかしら?」
「知っている人がいるみたいだ」
ザィード様が教えてくれる。
「オルグ様」
「やぁ、遅かったね。もう少し早くなるかと思っていたよ」
「心配して下さったのですか?」
「いや、だが部屋は用意してある。少し休みなさい」
「ありがとうございます」
オルグ様が家の中に案内しながら、誰が住んでいたのか話してくれる。
「ここは、イスハ様が住んでいた家だよ」
「ではカリーナが生まれた家ですか?」
「6歳の頃までここにいらっしゃったね」
「そうですか、少し寂しい所ですね」
「そうかもしれないが、これ以上は難しい立場の方だったし、イスハ様は、元々世俗に興味を持っておられない方だったからね」
「そんな方を王位に就かせようとしたのですか?」
「権力を欲するのは、昔から、だいたい周りにいる人間だよ」
「そうなのかも、知れませんね」
「まぁ、気にする事は無いよ、今では只の空き家だ。
数日分の食糧は用意してあるから、少し休むといい。僕は行くが、何かして欲しい事はあるかい?」
「では、バーナード様にお願いして、アンドラの街に兵を数名送って下さるように伝えて下さい」
「周りでも固めるのかな?」
「お父様の領内ですし、もう無茶な事をする人もいないかも知れませんが、それが一番簡単ですから」
「分かったよ、伝えておこう」
「ありがとうございます」
これで問題が一つ片付いたので、もう一つをどうにかしないといけない。
昨夜、馬で移動するならせめて魔力を入れる様にとザィード様に何度も言われたが、結局、嫌だと言い続けたので、彼が大変な事になっている。
彼は心配し過ぎて朝からずっと機嫌が悪く、ジャルドは笑っているが、騎士達が怖がって近づけない。
家の周囲を確認して来たらしい銀色の狼が、部屋の中に入って来る。
「ザィード様」
辛いことがあれは抱きしめて下さいとお願いしていたので、両手を差し出すと、しばらく迷っていたザィード様が大きなため息をついて、人の姿に変わる。
「なぜそんなに頑固なんだ」
「嫌いになりましたか?」
「そうではないが、、、こう言う所は似ていないのだな」
「まぁ、誰にですか?」
「サイラスの番にだ。彼女は、リディアに似ている」
「まぁ、私とセレスティナが似ていると言った人は初めてです」
「そうなのか?」
「似ているなら、彼女の母親の方が、私に似ているでしょう?」
「確かに同じ様な、髪色をしていたが」
「彼女は、母の異母妹なので、セレスティナは私の従姉妹になります、似ていても不思議では無いですね」
「その割に外見は似ていないな」
「それが、セレスティナの人見知りの原因でしょうね」
「ん?」
「私と母は似ているでしょう?」
「まぁ、そうだな」
「ふふっ、似ているのは母だけでは無いんですよ、金髪に緑色の瞳、ハーフスコード家の人間はみんな同じです」
「同じ?」
「そう。祖父母も母の兄弟達も、その子ども達もですわ、元々、癒やしの使い手を多く出している家なので、嫁いで来る方も、髪の色はともかく瞳は緑色の人がほとんどです」
「それは凄いな」
「ラディア様は社交的な人だし、セレスティナも幼い頃から家の集まりに出席していたのでしょうね」
「確かにその中にいては目立つだろうが、珍しい色では無いと思うが」
「そうですね、世の中を知ってしまえば、一つの家の小さな世界の事なんでしょうが、幼い頃はその小さな世界が全てですから」
それに幼い子どもが集まっていれば、異物を排除しようとする事は良くある話だ。
「リディアはいなかったのか?」
「母は元々社交が苦手な人で、私も森で暮らしていましたから、、、セレスティナと知り合った時も、彼女がハーフスコードの血縁だとは思いもしませんでした」
「そうか」
そのままザィード様が髪を優しく撫ぜてくれるので、少し話を続ける。
「ザィード様、忘れないで下さいね?」
「何をだ」
「ハーフスコード家の者が、みな同じ様な容姿をしている事」
「ん?」
「ザィード様と私の子ども達にも言えるのですからね? ザィード様の、、、」
言い終わらないうちに唇が重なる。
いつもの優しいキスではなく、深く激しいキス。
彼が覆い被さり、強く抱きしめられて、ぼ~となっていると、トントンと扉を叩く音が聞こえる。
部屋から出ていたロニが戻って来たみたい。
ザィード様が名残惜しそうに離れながら、不機嫌に話すのが聞こえて来る。
「リディア、刺激するな、抑えが効かなくなる」
「いけませんか?」
「ダメだ。体調も戻っていないだろう」
そう思っているから、ロニも戻って来たのだろう。
「わかりました、大人しくしています」
それにここは住み慣れた家でも無い。
機嫌を直して貰うつもりだったのに、なんだかまた悪くなったみたい。
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