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第6章
03 その後(3)
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人々から隔離された屋敷での休憩の後、懐かしい我が家に帰るまでの道は、快適なものになった。
バーナード様が用意してくれた仰々しい馬車と騎士達は、見た目はともかく乗り心地も良く、思っていた以上の働きをしてくれた。
面倒な人達に煩わされる事も無く、体調も良くなれば、ザィード様の眉間のシワも自然に無くなってくる。
気になったのは、途中、イリノアの街で友人に会えると思っていたら、今は無理だとザィード様に言われた事くらい。
それにウエストリアの部屋に戻ると、ここが一番落ち着くのも本当で、ゆっくり眠れば体調が悪かった事も忘れてしまいそうになる。
「何しに来た」
「ひどいなぁ、僕は彼女の仕事のパートナーだよ」
「仕事?」
「そう」
赤毛の男が、ニコニコしながら屋敷の入口に立っている。
「僕は、ウエストリアの布やお茶をミリオネアで売っているんだ。彼女にとって大切なパートナーだからね、覚えておいて欲しいなぁ」
「仕事のだろう」
「まぁね。もちろん、人生のパートナーでも構わないけどね」
「帰れ」
「そんな事を言ってもいいのかなぁ、彼女が困ると思うなぁ」
ニコニコと笑っている顔を見ていると、本気で追い返したくなる。
呼び鈴がなって見に行った自分が戻ってこないので、リディアが様子を見に来る。
「ザイード様、お客様ですか?」
「そのようだ」
「まぁ、アレス様。早かったのですね、到着は明後日になると思っていました」
「少しでも早くお会いしたかったので」
アレス様が、手を取ったかと思うと、甲に唇をふれる。
この人は相変わらずだ。
彼とは王都で会った時に話はしているので、彼をわざと困らせているのだと分かっている。
ザイード様が隣で本当に嫌な顔をしているし、それを見て、アレス様が逆に嬉しそうな顔をしている。
父にしても、アレス様にしても、彼と友人になりたいのなら、そう言葉にすればよいのにと思う。
人との間で、一番怖いのは無関心であることだ。
自分の存在を見てもらえない、感じてもらえない事は恐ろしいが、こうして彼を困らせているのは、彼に関心があるからで、本人は歓迎していなくても、良いことだと思う。
元々彼は、とても穏やかな真面目な人で、探求心も強く、人に教えを受けたり、物事を指摘されても強く反応する事はないが、番に対しては、とてもわかり易く反応する。
「アレス様、あまり彼を困らせないで下さいね」
「私の事など、微塵も考えた事がないと教えていないのですか?」
「私がどう思っているかではなく、彼がどう感じているかでしょう?」
「なるほどね」
「ですから、あまり困らせないで下さい」
「喧嘩にでもなりますか?」
「ふふっ、どうかしら?」
「なんだ、つまらないなぁ」
「それより、状況を教えて下さいな」
アレス様から、ミリオネアでの布の売上やお茶の流通の状況。
改善点や商品の見直し、こちらが用意したフレの糸や布の見本を見せて話を続ける。
こうした時、仕事の相手が異性であっても彼は絶対に邪魔をしない。
これが私にとって大切な事だと知っているし、必要な事だとも分かっている。
仕事場に自分がいても仕方ないと分かると、屋敷の内外で使用人達を手伝ってみたり、畑の方まで出かけて行く事さえある。
それが一旦仕事を離れると、途端に変わって、片時も離れようとしない。
それなのに、食事を一緒に取ることを嫌って、自室で済ませようとする。
元々、晩餐でもなければ、自分たちも私室で済ますけれど、一人である必要もない。
「ザイード様、ガルスでは一人で食事をするものなのですか?」
「いや、そうではない。番のいない者は食事場で、番のいる者は部屋で食事をする」
「部屋で、別々に?」
「、、、いや」
妙に言葉を濁す。
ガルスについては、知らない事が多い。
知っている事と言えば、山と深い森のある国で、獣人と人が暮らしている事。
その深い森の奥で、魔鉱石を産出している事。
それに獣人の食事には意味がある事。
「ザイード様、ちゃんと教えて下さい」
「私達にとって食事に意味があると話した事があるだろう?」
「はい」
「ガルスには、エルメニアの様に寝室と居間との区別がない」
「どうしてですか?」
「寒いからな」
確かに部屋を二つ暖めるより、その方が効率もいい。
「では、食事をするのも、眠るのも同じ部屋で?」
「そうだな、夜の食事をした相手とは、そのまま朝まで共に過ごす、わざわざ別の部屋で食べる必要はない」
「まぁ」
いけない、相変わらず私は同じ間違いばかりしてるみたい。
バーナード様が用意してくれた仰々しい馬車と騎士達は、見た目はともかく乗り心地も良く、思っていた以上の働きをしてくれた。
面倒な人達に煩わされる事も無く、体調も良くなれば、ザィード様の眉間のシワも自然に無くなってくる。
気になったのは、途中、イリノアの街で友人に会えると思っていたら、今は無理だとザィード様に言われた事くらい。
それにウエストリアの部屋に戻ると、ここが一番落ち着くのも本当で、ゆっくり眠れば体調が悪かった事も忘れてしまいそうになる。
「何しに来た」
「ひどいなぁ、僕は彼女の仕事のパートナーだよ」
「仕事?」
「そう」
赤毛の男が、ニコニコしながら屋敷の入口に立っている。
「僕は、ウエストリアの布やお茶をミリオネアで売っているんだ。彼女にとって大切なパートナーだからね、覚えておいて欲しいなぁ」
「仕事のだろう」
「まぁね。もちろん、人生のパートナーでも構わないけどね」
「帰れ」
「そんな事を言ってもいいのかなぁ、彼女が困ると思うなぁ」
ニコニコと笑っている顔を見ていると、本気で追い返したくなる。
呼び鈴がなって見に行った自分が戻ってこないので、リディアが様子を見に来る。
「ザイード様、お客様ですか?」
「そのようだ」
「まぁ、アレス様。早かったのですね、到着は明後日になると思っていました」
「少しでも早くお会いしたかったので」
アレス様が、手を取ったかと思うと、甲に唇をふれる。
この人は相変わらずだ。
彼とは王都で会った時に話はしているので、彼をわざと困らせているのだと分かっている。
ザイード様が隣で本当に嫌な顔をしているし、それを見て、アレス様が逆に嬉しそうな顔をしている。
父にしても、アレス様にしても、彼と友人になりたいのなら、そう言葉にすればよいのにと思う。
人との間で、一番怖いのは無関心であることだ。
自分の存在を見てもらえない、感じてもらえない事は恐ろしいが、こうして彼を困らせているのは、彼に関心があるからで、本人は歓迎していなくても、良いことだと思う。
元々彼は、とても穏やかな真面目な人で、探求心も強く、人に教えを受けたり、物事を指摘されても強く反応する事はないが、番に対しては、とてもわかり易く反応する。
「アレス様、あまり彼を困らせないで下さいね」
「私の事など、微塵も考えた事がないと教えていないのですか?」
「私がどう思っているかではなく、彼がどう感じているかでしょう?」
「なるほどね」
「ですから、あまり困らせないで下さい」
「喧嘩にでもなりますか?」
「ふふっ、どうかしら?」
「なんだ、つまらないなぁ」
「それより、状況を教えて下さいな」
アレス様から、ミリオネアでの布の売上やお茶の流通の状況。
改善点や商品の見直し、こちらが用意したフレの糸や布の見本を見せて話を続ける。
こうした時、仕事の相手が異性であっても彼は絶対に邪魔をしない。
これが私にとって大切な事だと知っているし、必要な事だとも分かっている。
仕事場に自分がいても仕方ないと分かると、屋敷の内外で使用人達を手伝ってみたり、畑の方まで出かけて行く事さえある。
それが一旦仕事を離れると、途端に変わって、片時も離れようとしない。
それなのに、食事を一緒に取ることを嫌って、自室で済ませようとする。
元々、晩餐でもなければ、自分たちも私室で済ますけれど、一人である必要もない。
「ザイード様、ガルスでは一人で食事をするものなのですか?」
「いや、そうではない。番のいない者は食事場で、番のいる者は部屋で食事をする」
「部屋で、別々に?」
「、、、いや」
妙に言葉を濁す。
ガルスについては、知らない事が多い。
知っている事と言えば、山と深い森のある国で、獣人と人が暮らしている事。
その深い森の奥で、魔鉱石を産出している事。
それに獣人の食事には意味がある事。
「ザイード様、ちゃんと教えて下さい」
「私達にとって食事に意味があると話した事があるだろう?」
「はい」
「ガルスには、エルメニアの様に寝室と居間との区別がない」
「どうしてですか?」
「寒いからな」
確かに部屋を二つ暖めるより、その方が効率もいい。
「では、食事をするのも、眠るのも同じ部屋で?」
「そうだな、夜の食事をした相手とは、そのまま朝まで共に過ごす、わざわざ別の部屋で食べる必要はない」
「まぁ」
いけない、相変わらず私は同じ間違いばかりしてるみたい。
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