【完結】聖女ディアの処刑

三月

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ユースレス王子の不満

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ユースレス王子は、ディアの『飾らないところ』が好きだった。

貴族の令嬢は、みんなお高くとまっていて、笑うときも口を扇で隠す。ディアはそんなことはしない。笑うときは白い歯を零れさせて、声を上げ、楽しそうに笑う。

貴族の令嬢は、豪奢なドレスを着ていて、髪も結い上げて、近寄りがたい。ディアはいつでも簡素なワンピース姿で、ふわふわの髪をそのまま風になびかせている。

ディアはいつでも飾らない。
だから、彼女の前ではユースレスも気取らなくてよかった。気楽で、心が安らいで、彼女と婚約してよかったと思っていた。

聖女として見出されたディアと婚約して、もうすぐ5年になる。
現在、ユースレスは19歳。拾われっ子のディアは大体17歳くらいだろう。

このまま順当にいけば、成人した頃王太子となって、ディアと結婚して、いつかは王と王妃になるのだ。悪くない未来に思えた。

ディアは平民のわりに可愛い顔立ちをしているし、身体つきも健康的で王子好みだ。聖女としても立派にやっている。彼女がいる限り教会も貴族も王家に絶対服従だろう。

ひとつだけ、ディアに不満があるとすれば、やはり『飾らない』ところだった。

ディアは平民だから、貴族のマナーを知らない。
聖女の仕事で忙しいなか、なんとか淑女教育も頑張っているようだが、王子妃としてどころか令嬢としての最低限の礼儀も全然ダメらしい。パーティーにはとても出せないと、教育係はイライラしていた。

でも、ユースレスはそこまで気にしていなかった。
マナーなんて適当でいいと思っていたし、無邪気で自然体なところがディアの良さでもあったから。

そんな甘い考えが、まるっきり変わったのは2年前。
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