5 / 66
5.こう見えて見たまんまです
しおりを挟む
5
会計待ちをしている間にふとスマホを見れば、姉からメッセージが届いていた。姉はとうに下着は買い終わり、今は化粧品を買っているらしい。車に荷物を置きに戻るから、駐車場入り口近くの出口付近で待っていろ。との返事が来た。
「化粧品の方が時間がかかるよな」
おそらく姉はブランド物のクリスマス限定コスメを予約しているに違いない。毎年職場で同僚と自慢しあっていると聞いている。貴文は下着の入った紙袋を持って指定された出口に向かった。日曜日だから親子連れが多い。レストラン街はすでに行列ができていた。それを眺めながら、こんなところで姉と二人で何を食べようかと考えた。母親から、ここにしか出店していない惣菜店でお土産を買ってくるように言われている。名前だけ聞くと中華っぽいが、画像を見たらとてもおしゃれなカフェで出てきそうなサラダだった。
「この年でファストフードとかはないよな」
道路の向こうに人気のファストフードの店が見えたが、遠目にも満席だとわかる。
ぼんやりと考えながら歩いていたら、路上に停められた車から、慌てた勢いで男が一人おりてきた。
「義隆様」
そんな声が聞こえたが、貴文は気にも留めてはいなかった。だって、どう考えても急いでいたとして、人にぶつかるなんてマナー違反をいい年をした男がするなんて思っていなかったからだ。
だが、そんな貴文の楽観的な考えはあっさりと覆された。
「うわ」
急ぎ足で店内に入ってきた男が貴文の目の前を横切ったのだ。ぶつからなかったといえばそうだけど、それは貴文が体をひねって回避した結果に過ぎなかった。
「なんだよ、もう」
紙袋を握りしめ、貴文がぼそりと文句を呟いたとき、突然貴文の膝から力が抜けた。
「大丈夫ですか?」
背後から声をかけられた。その声はおそらく先ほど貴文にぶつかりそうになった男を呼び止めた人物だろう。「大丈夫です。ちょとびっくりして」と貴文は言うつもりだった。そう、いうつもりだった。それなのに、強い耳鳴りがして目の前があっという間に真っ暗になった。ゴンっという音が聞こえた気がしたが、痛みは感じなかった。そう、痛みを感じる前に貴文の意識がなくなったからだ。
「え、ちょっとあなた」
もちろん慌てたのは貴文に声をかけた男である。自分の主人の不始末を詫びようとしただけなのに、相手が急に倒れてしまったのだ。ちゃんと見ていたが、ぶつかってなどいない。ちょっと無理な体勢だったが、目の前に倒れこんだ男は自分の主人をよけてくれた。それなのになぜ?
会計待ちをしている間にふとスマホを見れば、姉からメッセージが届いていた。姉はとうに下着は買い終わり、今は化粧品を買っているらしい。車に荷物を置きに戻るから、駐車場入り口近くの出口付近で待っていろ。との返事が来た。
「化粧品の方が時間がかかるよな」
おそらく姉はブランド物のクリスマス限定コスメを予約しているに違いない。毎年職場で同僚と自慢しあっていると聞いている。貴文は下着の入った紙袋を持って指定された出口に向かった。日曜日だから親子連れが多い。レストラン街はすでに行列ができていた。それを眺めながら、こんなところで姉と二人で何を食べようかと考えた。母親から、ここにしか出店していない惣菜店でお土産を買ってくるように言われている。名前だけ聞くと中華っぽいが、画像を見たらとてもおしゃれなカフェで出てきそうなサラダだった。
「この年でファストフードとかはないよな」
道路の向こうに人気のファストフードの店が見えたが、遠目にも満席だとわかる。
ぼんやりと考えながら歩いていたら、路上に停められた車から、慌てた勢いで男が一人おりてきた。
「義隆様」
そんな声が聞こえたが、貴文は気にも留めてはいなかった。だって、どう考えても急いでいたとして、人にぶつかるなんてマナー違反をいい年をした男がするなんて思っていなかったからだ。
だが、そんな貴文の楽観的な考えはあっさりと覆された。
「うわ」
急ぎ足で店内に入ってきた男が貴文の目の前を横切ったのだ。ぶつからなかったといえばそうだけど、それは貴文が体をひねって回避した結果に過ぎなかった。
「なんだよ、もう」
紙袋を握りしめ、貴文がぼそりと文句を呟いたとき、突然貴文の膝から力が抜けた。
「大丈夫ですか?」
背後から声をかけられた。その声はおそらく先ほど貴文にぶつかりそうになった男を呼び止めた人物だろう。「大丈夫です。ちょとびっくりして」と貴文は言うつもりだった。そう、いうつもりだった。それなのに、強い耳鳴りがして目の前があっという間に真っ暗になった。ゴンっという音が聞こえた気がしたが、痛みは感じなかった。そう、痛みを感じる前に貴文の意識がなくなったからだ。
「え、ちょっとあなた」
もちろん慌てたのは貴文に声をかけた男である。自分の主人の不始末を詫びようとしただけなのに、相手が急に倒れてしまったのだ。ちゃんと見ていたが、ぶつかってなどいない。ちょっと無理な体勢だったが、目の前に倒れこんだ男は自分の主人をよけてくれた。それなのになぜ?
40
あなたにおすすめの小説
うそつきΩのとりかえ話譚
沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。
舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。
変異型Ωは鉄壁の貞操
田中 乃那加
BL
変異型――それは初めての性行為相手によってバースが決まってしまう突然変異種のこと。
男子大学生の金城 奏汰(かなしろ かなた)は変異型。
もしαに抱かれたら【Ω】に、βやΩを抱けば【β】に定着する。
奏汰はαが大嫌い、そして絶対にΩにはなりたくない。夢はもちろん、βの可愛いカノジョをつくり幸せな家庭を築くこと。
だから護身術を身につけ、さらに防犯グッズを持ち歩いていた。
ある日の歓楽街にて、β女性にからんでいたタチの悪い酔っ払いを次から次へとやっつける。
それを見た高校生、名張 龍也(なばり たつや)に一目惚れされることに。
当然突っぱねる奏汰と引かない龍也。
抱かれたくない男は貞操を守りきり、βのカノジョが出来るのか!?
神託にしたがって同居します
温風
BL
ファンタジー世界を舞台にしたオメガバースです。
アルファ騎士×美人ベータ(?)
【人物紹介】
受け:セオ(24歳)この話の主人公。砂漠地帯からの移民で、音楽の才がある。強気無自覚美人。
攻め:エイダン(28歳)王室付き近衛騎士・分隊長。伯爵家の三男でアルファ。料理好き。過労気味。
【あらすじ】
「──とりあえず同居してごらんなさい」
国王陛下から適当な神託を聞かされたセオとエイダン。
この国にはパートナー制度がある。地母神の神託にしたがって、アルファとオメガは番うことを勧められるのだ。
けれどセオはベータで、おまけに移民。本来なら、地位も身分もあるエイダンと番うことはできない。
自分は彼の隣にふさわしくないのになぜ? 神様の勘違いでは?
悩みながらも、セオはエイダンと同居を始めるのだが……。
全11話。初出はpixiv(別名義での投稿)。他サイト様にも投稿しております。
表紙イラストは、よきなが様(Twitter @4k7g2)にお願いしました。
追記:2024/3/10開催 J. Garden55にて、『神託にしたがって同居します』の同人誌を頒布します。詳しい内容は、近況ボードにまとめます。ご覧頂ければ幸いです!
【完結】エデンの住処
社菘
BL
親の再婚で義兄弟になった弟と、ある日二人で過ちを犯した。
それ以来逃げるように実家を出た椿由利は実家や弟との接触を避けて8年が経ち、モデルとして自立した道を進んでいた。
ある雑誌の専属モデルに抜擢された由利は今をときめく若手の売れっ子カメラマン・YURIと出会い、最悪な過去が蘇る。
『彼』と出会ったことで由利の楽園は脅かされ、地獄へと変わると思ったのだが……。
「兄さん、僕のオメガになって」
由利とYURI、義兄と義弟。
重すぎる義弟の愛に振り回される由利の運命の行く末は――
執着系義弟α×不憫系義兄α
義弟の愛は、楽園にも似た俺の住処になるのだろうか?
◎表紙は装丁cafe様より︎︎𓂃⟡.·
仮面の王子と優雅な従者
emanon
BL
国土は小さいながらも豊かな国、ライデン王国。
平和なこの国の第一王子は、人前に出る時は必ず仮面を付けている。
おまけに病弱で無能、醜男と専らの噂だ。
しかしそれは世を忍ぶ仮の姿だった──。
これは仮面の王子とその従者が暗躍する物語。
Ωだから仕方ない。
佳乃
BL
「Ωだから仕方ない」
幼い頃から自分に言い聞かせてきた言葉。
あの人と番うことを願い、あの人と番う日を待ち侘びていた僕は今日もその言葉を呟く。
「Ωだから仕方ない」
そう、Ωだから仕方ないのだから。
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる