姫の護衛が閨での男の武器の調査をした件

久乃り

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その2

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「んなぁ」

 間抜けな声を上げて、慌てて態勢を整えようとしたけれど、それはかなわなかった。ユノハイムを押さえつける力が思った以上に強かったのだ。しかも、ユノハイムは丸腰だった。帝国に入った際、帯剣を許されなかったからだ。皇帝の住まいにおいて何の危険があるのかと言われてしまったのだ。一応は返却されたものの、ユノハイムが帯剣することは皇帝の名において許可されなかったのである。そんなわけで丸腰で閨にやってきたユノハイムであったが、まさか襲われるとは想定外である。

「おや、我が花嫁はこんな顔をしていたのか」

 上からユノハイムのことを覗き込んできたのは、誰あろうゴールデンバイン帝国皇帝のアインバッハだった。

「げえええ」

 騎士にあるまじき奇声を上げ、ユノハイムは己の不幸を呪った。よりにもよって、閨に皇帝が訪れる前に退散できなかったのは任務失敗である。

「我が花嫁は、なかなか野太い声をしているようだ」

 からかいを含んだような声を声を出してはいるものの、ユノハイムを押さえつける力は本物だった。何より、なにかひんやりとした感触がユノハイムの首元にあった。

「こ、皇帝陛下」

 ようやく相手を認識し、声を出したユノハイムであったが、拘束は解かれないし、首元に当てられた何かは外される気配がない。

「ほう、私を知っているか。さて」

 形の良い顎に手をかけて考える仕草をする皇帝アインバッハであるが、その瞳は恐ろしいほど冷ややかだった。まるでヘビがカエルを睨みつけるかごとく、ユノハイムをねめつけていた。

「さて、我が寝所に忍び込んだ不届き者は誰だ?」

 面白そうに聞いてくる。それに対してユノハイムは気が気ではなかった。何しろ、首元に当てられたモノがピタピタとついては離れるを繰り返しているからだ。その触れ加減から言って、間違いなく刃物である。

「我が剣で首を落とされる名誉が欲しいのか?」

 自分の上に半身を乗せてきて動きを拘束しながら、左手を顎に当てて考える仕草をしながらも、右手には剣を握りユノハイムの生殺与奪の権利を主張していた。

「わ、私はユルガシドからこちらに輿入れをしましたエリシア様の騎士、ユノハイムと申します」

 公式の場ではないが、相手が皇帝とわかりながら名乗らないのは騎士として落第である。ユノハイムは慌てて名乗ってみたものの、どうにもこれが正解な気がしなかった。

「エリシア様が不安がられましたので、閨の様子を確認しに来た次第です」

 目的をすんなりと告げれば、アインバッハが軽く笑った。

「閨の寝心地を確認しに来たというのか?閨で本気で寝られると思っていたのか?」

 あざ笑うかのように言われれば、首をふりたくなるところだが、そうはいかなかった。なにしろユノハイムの首には皇帝の剣がある。

「いいえ、その。おかしなものがないか点検に」
「ほほう、わが帝国を疑うか」
「その、我が姫エリシア様はまだ十六になったばかりでして、いろいろと怯えていらっしゃるのです」
「怯えている?」
「はい。エリシア様は平民の侍女を母に持つ第三王女でありましたから、乳母とご生母様がなくなった後はたいした後ろ盾もなく」
「つまり淑女としての教育が足りず、閨の知識も持ち合わせていない生娘ということか」
「っ、そうなります」

 そんな会話をしながらも、ユノハイムは何とか逃げ出すことを考えた。皇帝アインバッハの機嫌を損ねないようにして、本来ここに寝るべきエリシアと入れ替わる方法だ。
 
「で?目的は何だ?」

 必死で考えるユノハイムを嘲笑うがごとく、皇帝アインバッハにはバレていた。

「……て、いないかを」

 ゴクリと喉を鳴らし、ユノハイムは決心した。

「閨に武器が仕込まれていないかを確認しに来ました」

 言ってしまった。
 もう後戻りはできない。つまりは帝国の管理を信頼していないという意思表明である。著しく皇帝の機嫌を損ねるであろうけれど、これ以上隠しても何もいいことはないのである。

「なるほど、面白い。で?見つかったか?」

 喉を鳴らしながら笑うアインバッハに気おされながらも、何とか口を開いて答えるユノハイムであったが、次の瞬間、あっさりと拘束が解かれた。そして、ユノハイムの胸倉を掴んでアインバッハがユノハイムを引き起こし、寝台の上に膝立ちをしているアインハイムの前に四つん這いの体勢にさせた。

「愚か者が。閨で武器と言ったら一つしかあるまい。お前それでも男か?生娘の精一杯の隠語の真意もわからぬのか」

 そう言ってアインバッハはユノハイムの目の前に、己の股間を見せつけたのだった。

 
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