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その4
しおりを挟む「お前は一体何がしたいのだ」
己の股間に顔を埋める形になったユノハイムの後頭部を眺めながらアインバッハはため息を着くしか無かった。こんなことを言っても失態を犯してしまったユノハイムは顔を上げようとはしない。そもそも、恐れ多くも皇帝陛下の御前である。たとえここが閨であったとしても、やはり許可なく顔を上げることははばかれるのである。
頭を下げて、ほとんどアインバッハの股間に顔を押し付けるようになってしまったユノハイムは、顔のほとんどがアインバッハの繁みの中に埋もれていた。いや、繁みというよりたわわなで巨大な二つの黄金の玉に顔を押し付けていた。
「面を上げてよく見分せよ」
仕方なく皇帝アインバッハが命じると、ようやくユノハイムは顔を上げて再びアインバッハの武器を確認し始めた。
見れば見るほど皇帝アインバッハの武器は凶悪な姿形をしていた。そそり立つその竿の部分には血管が太く浮かび上がり、てっぺんの傘の部分はどす黒いエラがしっかりと広がっているのだ。これは歴戦の夜の蝶たちでも恐れ戦く武器である。相当な手入れが施されていることぐらい、ユノハイムには理解できた。何よりも、その下に垂れ下がる黄金の玉は大きく腫れ上がりそこもまた太い血管が目に見えて、使い込まれた質感がありありとしていたのだ。
「これはまた、素晴らしい武器にございます」
姫の騎士として、いや、男としてもここまで立派な武器にはなかなかお目にかかることは出来ないと、素直にユノハイムは感服した。
「して?その方は姫になんと報告をするつもりでいるのだ?」
皇帝アインバッハが予想外の言葉を投げかけてきたので、ユノハイムは驚いて目を瞬かせた。
「見ればその方、書き物を一つも持参してなどおらぬではないか」
そうは言われても、服を脱いでしまったからこその丸腰である。とは言いつつ、確かにユノハイムは手ぶらであった。何しろ閨に武器が仕込まれていないを確認してこい。と言われたのだから、有るかないかの返答だけで済むと思っていたのだ。
「も、申し訳ございません」
咄嗟に口から出たのは謝罪の言葉である。とにかく謝れ。とは訓練時代に何度も言われてきたことである。高貴な方々の機嫌を損ねたら、兎に角謝れと言われてきた。謝って謝って謝り倒せと指導されてきたのだ。だから、ユノハイムは謝ることしか出来なかった。
「我に謝ってどうするのだ?その方は姫より命を受けてここに来たのであろう?閨での武器、それについてなんと姫に報告するつもりでいたのだ?」
「そ、それは」
なんと報告するかだなんて、全くもって頭の片隅にもなかったことである。いや、簡単に済ませるつもりでいたから、見たまんまを伝えればいい。と軽く考えていた。が、よく考えなくてもわかることである。相手は深窓の姫君である。見たまんまの皇帝の股間に鎮座する閨での武器を報告したら卒倒してしまうかもしれない。何しろまだ、十六歳の生娘なのである。
「その方、まさかとは思えが見たままを包み隠さず報告するつもりでいたか?それはならんぞ」
心の内を見透かされたようで、ユノハイムは口を閉じてしまった。間違っても「はいそうです」なんて答える訳にはいかなかった。相手は皇帝である。自分の仕えるエリシアの結婚相手だ。後に自分も仕える相手である。今は違うとは言えど、ココは帝国、逆らっていい相手ではない。
「では、どのように報告をすればよろしいでしょうか」
実直で真面目な騎士ユノハイムは、目の前に鎮座する皇帝アインバッハに教えを乞うた。
「ふむ、なかなか良い心がけだな。褒めて遣わす」
機嫌よく微笑むアインバッハに安堵しつつも、ユノハイムの心の中は落ち着かない。下手のことを言ってしまえば、皇帝アインバッハの男としての矜恃を傷つけることになるのだ。ただの失態ではない。男の男としての矜恃を傷つけるのはタダでは済まされないだろう。
「まずは、だな」
アインバッハが口を開いた。自然とユノハイムの喉がなる。
「その方、閨での武器でそちらの姫君がどのようなこうげきを受けるか調べるつもりは無いのか?」
「こ、攻撃ですか?」
意外な問いかけにユノハイムは驚いた。それは一大事である。大切な姫が攻撃を受けるだなんて、想定外もいい所である。帝国で閨が一番安全ではなかったのだろうか?
「そうだ。我のこの武器で、姫の身体を貫くぞ?そうであろう?この武器は女に対してそのように振る舞う武器であろう」
言われて見ればそうかもしれない。ユノハイムはまじまじと皇帝の股間に鎮座、いや今はそそり立つ大層ご立派な武器を見つめた。
「姫の身体を、貫く……にございますか」
それはまずい。
そんなことを聞いてはそれこそ卒倒所の騒ぎではない。下手をすれば逃げ出してしまうかもしれない。ようやくあの国の後宮から逃げ出せたと言うのに、ここに来て哀れな姫は串刺しにされてまうと言うのだろうか?そんな残酷なことを伝えることなんて、ユノハイムにはできるわけがなかった。
「そんな恐ろしいこと、その方は姫に伝えられるのか?」
「で、できません」
即答である。
「だが、手合わせをすれば我の武器の威力が推し量れると言うものではないか?」
またもや皇帝アインバッハからの提案である。
「手合わせにございますか?」
意外な提案にユノハイムの瞳が揺れた。閨で手合わせをするだなんて、なんて斬新な提案であろうか。だがしかし、その手合せはどのようにするものなのだろうか?
「そうだ。互いに剣をまじ合わせれば、その剣の威力、鋭さを知ることとなる。その方も騎士であるならば、上官や同僚と手合わせぐらいしてきたであろう」
言われてみれば至極最もである。騎士ならば、己の武器を披露し手合わせを申し出るのが筋である。何しろユノハイムも己の武器を晒し出しているのだ。確かに、ここはひとつ手合わせを申し受けるのが最良である。
「かしこまりました。恐れ多くも皇帝陛下との手合わせを賜らせて頂きたく存じます」
再びユノハイムの頭が深々と下げられた。言うまでもないが、その先は皇帝アインバッハの股間である。
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