高嶺の上司の優しいCommand

久乃り

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その4

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 そのときだった。

「私の部下に何してくれてるんですか?」

 ものすごいGlareが発せられ、芝崎課長がやってきた。いつもの穏やかな顔と違い、完全にDefenseに陥っていた。

「な、なにを……」

 隣の部署の課長が何とか反発しようとしたけれど、芝崎課長が発するGlareの圧が強すぎて、その場に腰砕けのように崩れ落ちていった。圧倒的な格の違いだった。

「私のかわいい部下になにしてくれているんですかね。デスクを叩くのはもちろん、身体を拘束するのは立派なパワハラ行為です。それに、Glareを使っての威圧行為は法令違反ですよ」

 カツカツと靴音を立てて芝崎課長がデスクに近づく。

「それから、この書類は私の部下の仕事ではありませんね」

 そう言ってデスクに乱暴に置かれていた書類をつまみ上げ床に座り込む隣の部署の課長に押し付けた。

「さっさとお帰り願いますか」

 もう一度強いGlareを発すると、隣の部署の課長は床を這うようにして自分の部署に帰っていった。

「さて」

 芝崎課長はぐるりとフロアを見渡した。目の前のデスクの社員は完全にSubdropに陥っている。入り口から離れた社員はそれほどでもないが、それでも一様に顔色が悪かった。

「まったく」

 そんな言葉を呟きながら、柴崎課長は歩みを進める。

「もう大丈夫。安心しなさい」

 一言ずつ声をかけながら頭を優しく撫でて回る。そうして口の中に1粒の飴玉を入れてやる。優しい甘みが口の中に広がるにつれ、柴崎課長の部下たちは顔色が少しずつ良くなっていった。

「いい子だ。《Good》よく耐えた。safewordを言おうとしていたね。偉いよ」

 そう言って一番被害の大きかった部下を労う。不安そうに揺れていた瞳が徐々に落ち着きを取り戻し、しっかりと柴崎課長を見つめた。

「私がそばにいるよ。もう大丈夫、安心しなさい。頑張ったね。《Good》よく出来た」

 そう言って何度も頭を撫で、胸に抱きしめる。氷のように冷たくなっていた指先にほんのりと熱が戻ってきた。
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