3 / 4
一章
感謝状と取材
しおりを挟む
女性を助けてから3日ほど経った。
あれからというもの、東京消防庁から俺のスマホに連絡が入った。
内容は、消防庁から感謝状が出ているとの事だった。
感謝状がどういうものなのか分からなかったが、とりあえず来てほしいとの事だったので俺は東京消防庁に行く事にした。
期待とワクワクで胸を若干躍らせながら、朝食を食べ、薄暗い部屋を出た。
失礼のないようにと思い、俺は今日もベージュのスーツを着て駅に来た。
変わらない光景、あの日は少し特別な日だったと思いながら電車に乗り込んだ。
電車に揺られて人を避けながら歩き、10分ほど歩いて【東京消防庁 本部庁舎】に着いた。
謎の恐怖感があり怯えながら中に入ると、そこには女性を助けた時に居たチャラ男が居た。
「あ、どうもこんにちは。あの時振りですね」
チャラ男は俺に気が付くと、厳つい顔とは裏腹に優しそうな声で挨拶をしてきた。
「あ、どうもこんにちは。そうですね、あの時振りですね」
「自分、感謝状なんて大層な物を貰うの初めてなんですよね~」
大体の人が消防から感謝状なんて貰わないと思うけどな。
そんな風に思いながらも「そうですね~」と相槌を打っているとスーツを身に纏った女性が廊下から歩いて来た。
「池端様、中野様、どうぞこちらです」
真面目そうな表情で歩いて来た女性は顔色を一切変えずに、ヒールの音を鳴らしながらまた廊下を引き返した。
「ついていきますか」
「そうですね」
中野様と言われたチャラ男と一緒に女性の後を追った。
~~~
中野さんと特に会話することなく『会議室1』と書かれた部屋の前まで来た。
「中にお入りください。署長と防災部長が中でお待ちです。」
そう言われながら会議室の扉が女性によって開けられた。
「入りますか、何か緊張しますね!」
「そうですね……ハハハ……」
俺は緊張よりも中野さんと上手くコミュニケーションが取れているか心配で仕方が無かった。
こんな如何にも「THE 陽キャ!」みたいな人と今まで生きて来て関わったことなんて無かった。
一応妹もそんな感じだが、妹と中野さんでは訳が違う。
別の意味で震えながらも俺は中野さんの後を追うようにして中に入った。
中には立派な消防活動服を着た50代ぐらいの小太り気味の男と40代ぐらいの細身の男性が居た。
「どうもこんにちは、署長の中沢と申します。こちらにいるのは防災部長の宮沢です」
中沢と名乗った小太り気味の男が俺の前に出てきて頭を下げる。
そして中沢さんに紹介された宮沢という男も俺の前に出てきて頭を下げた。
「この度は迅速な応急処置、そして救急隊に対する丁寧な引継ぎ誠に感謝いたします」
俺が引き気味に「いえいえ、当然のことをしたまでですよ……」というと中沢さんは俺の背中を押しながら「まあまあ、どうぞこちらに」と俺と中野さんを移動させた。
「では早速ですが表彰の方に入らせて頂きたいのですが、今回はテレビ局の方も来ていますのでよろしくお願いします」
テレビ局……まさか俺の顔や名前が報道されるってことか?
そんな事になったら面倒な事が増えるかもしれない。
俺が断ろうと思い口を出そうと思った矢先、後ろに居た中野さんが興奮気味に口を開いた。
「テレビっすか!? え、もしかして全国放送だったりします!?」
そんな態度の中野さんを見て、中沢さんは少し引きながらも「そうですね、全国的なニュースになると思います。最近は特にこれと言った重大事件もありませんし、ネタに困ったテレビ局が今回の件をネタにしたいと思って依頼が飛んできたのでしょうね」と言った。
本来こういうのって事前に連絡があるものじゃないのか?
と思いつつ俺は早速表彰されることになった。
「それでは本題に入ります。今回、東京駅で60代女性が苦しそうに倒れ、脈が無い中安定かつ迅速な応急措置、この行動を評してここに感謝状をお送りいたします。2026年、6月4日、中沢博之。ありがとうございました」
テレビ局関係者がカメラとマイクを構えて俺の方をじっと見る。
俺は感謝状を受け取ると、テレビ局のためにと思い渾身の笑顔でカメラに目線を送った。
ディレクター(?)から頭を下げられ、今度は中野さんの表彰なので俺は後ろに下がった。
中野さんに感謝状が贈られた後は消防庁のホームページにのせる写真のための撮影とテレビ局から軽くインタビューされた。
アナウンサーさんに「これって、全国放送されますか?」と一応確認を取ると「そうですね、放送させていただくと思います」と言われた。
自分の発言が恥ずかしくないかとインタビューを振り返ろうと思ったが、その前に恥ずかしくなってしまい考えるのを辞めた。
チャラ男の中野さんに「この後暇ですか? 暇なら適当に飯でも食いません?」と言われたが、俺が勝手に気まずくなってしまっているので遠慮させていただいた。
その代わりに連絡先を交換して俺は会議室を出た。
なんだかんだ不満はあったが、気分は最高に良いし良い体験をさせてもらった。
活かせる部分は少ないだろうが、この経験をどこかで使えたら良いな。
そんな風に思いながら、俺は消防庁を出た。
あれからというもの、東京消防庁から俺のスマホに連絡が入った。
内容は、消防庁から感謝状が出ているとの事だった。
感謝状がどういうものなのか分からなかったが、とりあえず来てほしいとの事だったので俺は東京消防庁に行く事にした。
期待とワクワクで胸を若干躍らせながら、朝食を食べ、薄暗い部屋を出た。
失礼のないようにと思い、俺は今日もベージュのスーツを着て駅に来た。
変わらない光景、あの日は少し特別な日だったと思いながら電車に乗り込んだ。
電車に揺られて人を避けながら歩き、10分ほど歩いて【東京消防庁 本部庁舎】に着いた。
謎の恐怖感があり怯えながら中に入ると、そこには女性を助けた時に居たチャラ男が居た。
「あ、どうもこんにちは。あの時振りですね」
チャラ男は俺に気が付くと、厳つい顔とは裏腹に優しそうな声で挨拶をしてきた。
「あ、どうもこんにちは。そうですね、あの時振りですね」
「自分、感謝状なんて大層な物を貰うの初めてなんですよね~」
大体の人が消防から感謝状なんて貰わないと思うけどな。
そんな風に思いながらも「そうですね~」と相槌を打っているとスーツを身に纏った女性が廊下から歩いて来た。
「池端様、中野様、どうぞこちらです」
真面目そうな表情で歩いて来た女性は顔色を一切変えずに、ヒールの音を鳴らしながらまた廊下を引き返した。
「ついていきますか」
「そうですね」
中野様と言われたチャラ男と一緒に女性の後を追った。
~~~
中野さんと特に会話することなく『会議室1』と書かれた部屋の前まで来た。
「中にお入りください。署長と防災部長が中でお待ちです。」
そう言われながら会議室の扉が女性によって開けられた。
「入りますか、何か緊張しますね!」
「そうですね……ハハハ……」
俺は緊張よりも中野さんと上手くコミュニケーションが取れているか心配で仕方が無かった。
こんな如何にも「THE 陽キャ!」みたいな人と今まで生きて来て関わったことなんて無かった。
一応妹もそんな感じだが、妹と中野さんでは訳が違う。
別の意味で震えながらも俺は中野さんの後を追うようにして中に入った。
中には立派な消防活動服を着た50代ぐらいの小太り気味の男と40代ぐらいの細身の男性が居た。
「どうもこんにちは、署長の中沢と申します。こちらにいるのは防災部長の宮沢です」
中沢と名乗った小太り気味の男が俺の前に出てきて頭を下げる。
そして中沢さんに紹介された宮沢という男も俺の前に出てきて頭を下げた。
「この度は迅速な応急処置、そして救急隊に対する丁寧な引継ぎ誠に感謝いたします」
俺が引き気味に「いえいえ、当然のことをしたまでですよ……」というと中沢さんは俺の背中を押しながら「まあまあ、どうぞこちらに」と俺と中野さんを移動させた。
「では早速ですが表彰の方に入らせて頂きたいのですが、今回はテレビ局の方も来ていますのでよろしくお願いします」
テレビ局……まさか俺の顔や名前が報道されるってことか?
そんな事になったら面倒な事が増えるかもしれない。
俺が断ろうと思い口を出そうと思った矢先、後ろに居た中野さんが興奮気味に口を開いた。
「テレビっすか!? え、もしかして全国放送だったりします!?」
そんな態度の中野さんを見て、中沢さんは少し引きながらも「そうですね、全国的なニュースになると思います。最近は特にこれと言った重大事件もありませんし、ネタに困ったテレビ局が今回の件をネタにしたいと思って依頼が飛んできたのでしょうね」と言った。
本来こういうのって事前に連絡があるものじゃないのか?
と思いつつ俺は早速表彰されることになった。
「それでは本題に入ります。今回、東京駅で60代女性が苦しそうに倒れ、脈が無い中安定かつ迅速な応急措置、この行動を評してここに感謝状をお送りいたします。2026年、6月4日、中沢博之。ありがとうございました」
テレビ局関係者がカメラとマイクを構えて俺の方をじっと見る。
俺は感謝状を受け取ると、テレビ局のためにと思い渾身の笑顔でカメラに目線を送った。
ディレクター(?)から頭を下げられ、今度は中野さんの表彰なので俺は後ろに下がった。
中野さんに感謝状が贈られた後は消防庁のホームページにのせる写真のための撮影とテレビ局から軽くインタビューされた。
アナウンサーさんに「これって、全国放送されますか?」と一応確認を取ると「そうですね、放送させていただくと思います」と言われた。
自分の発言が恥ずかしくないかとインタビューを振り返ろうと思ったが、その前に恥ずかしくなってしまい考えるのを辞めた。
チャラ男の中野さんに「この後暇ですか? 暇なら適当に飯でも食いません?」と言われたが、俺が勝手に気まずくなってしまっているので遠慮させていただいた。
その代わりに連絡先を交換して俺は会議室を出た。
なんだかんだ不満はあったが、気分は最高に良いし良い体験をさせてもらった。
活かせる部分は少ないだろうが、この経験をどこかで使えたら良いな。
そんな風に思いながら、俺は消防庁を出た。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
*全28話完結
*辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
*他誌にも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる