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馨の誕生日
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かおるに遅れて翌日博多に着いた涼は、前日にあった景子との話を聞いて大きなため息をついた。
「高野景子は一体何を考えているんですか・・」
「俺もそう思ったよ。多分‥これは売名行為じゃないか?」
「でも彼女はそんな事をしなくても売れてるのに。・・ただ業界での評判が少し落ち始めていますね。売れっ子なのを笠に着てわがまま放題だとか。その辺を分かっていての売名行為か‥単純に馨君に横恋慕してるのかもしれませんね」
「迷惑この上ない。沙耶の話も盗癖があるだの、昔から異性関係が奔放だっただの・・」
「僕が調査した限りではそんな話は出てきませんでしたね。それと・・五瀬家に行った日に高野景子が来ていた服ですが、あれは僕と沙耶さんが一緒に買ったワンピースでしたね。本来なら沙耶さんがあれを着て馨君の家族に対面する予定でした」
「それをどうしてあの女が?」
「沙耶さんの話だと景子と養母からダメ出しされたそうだよ。もっと地味な服を着て行った方がいいと」
「それでその服は景子にあげたと?」
「あげたとは言ってませんでしたねぇ」
「どうも・・高野家で沙耶がどんな生活をしていたのか気になるな」
「僕もですよ・・沙耶さんは何でもポジティブに捕らえる方のようだから、いいように利用されていたのかもしれない。彼女はホントに素直でひたむきで可愛らしい人ですよ」
「ああ・・」沙耶の笑顔が脳裏に浮かんで来た馨はぼんやりとした返事を返した。
(素直でひたむきで可愛らしい・・本当にその通りだ。好きな事を情熱的に話す様子は本当に見ていて楽しくなる)
「契約を白紙にする事、考えはどうなりましたか?」
「いや・・それは止めておこう。沙耶は俺とは必要以上に近づきたくないようだ」
「どうしてそんな風に思うんです? 沙耶さんがそう言った?」
馨は簡単に最近の沙耶の行動の変化について大まかに説明した。
「うーん、接触を避けてるのか・・馨君は女性恐怖症の事を沙耶さんに話しましたか?」
「いや言ってない」
「もし沙耶さんが誰かに聞いて知っていたとしたら、その行動も納得出来ますけど」
「俺とお前しか知らない事なのに一体誰から聞くんだ?」
「まぁ、それはそうですねえ。自然と分かる様な事でもないし・・」
「会長が入籍について何か言って来たら籍を入れるかもしれない。契約結婚は・・このまま継続だな」
「そう・・分かりました! ではここからは仕事の話です・・」
この後は涼も一切プライベートな話はしなかった。
そして金曜には予定通り、馨は東京へ戻ってきた。
「今日は馨君の家に用事があるから僕も一緒に世田谷へ行きますね」そう言って涼は馨と一緒に迎えに来た運転手の車に乗り込んだ。
馨の自宅に着くと涼が荷物を持って先に入って行った。続けて馨がリビングに入った時だった。
パンパーンと乾いた高音が響いて色とりどりの小さな紙切れが馨の頭に降り注いだ。
「「「兄さん、馨さん、馨君、お誕生日おめでとう~~~~!!!」」」
結花と沙耶、先に入った涼もクラッカーを手に笑っている。
「ほらね、自分の誕生日忘れてるでしょ? 兄さん毎年こうなんだもん」
「僕も日にちの話とか誕生日に関係する話題を避けるのに苦労したんですよ」
「ちょうどお誕生日の金曜に帰ってこられると聞いてみんなで準備してたんです。食堂へ行きましょう」
食堂は廊下を挟んでリビングの向かい側にある。ドアを開けると甘い匂いが漂って来た。テーブルにはすでに義久が席に着いていた。驚きで言葉を失っている馨に義久が一言言った。
「はははは、その顔は驚いたようだな」
甘い匂いの元はテーブルの上のドーナツだった。チョコレートやカラフルなシュガーでコーティングされた色々な形、大きさのドーナツがジェンガの様に組み合わさってデコレーションしてあった。所々にフルーツやクリームが飾られている。
「お誕生日ケーキならぬお誕生日ドーナツだよ!」
「夕食は済ませちゃいましたからね、僕は飲み物を用意してきます。みなさんは座ってて下さい」
「これ・・どうやって食べるんだ?」
「一番上のハート型のを兄さんが食べるの。後はぁ~~ジェンガだ!!」
そのピンクのチョコレートでコーティングされた可愛らしいハート型のドーナツを沙耶が馨の皿に取り分けた。
涼がめいめい好みの飲み物をテーブルに配置するとジェンガが始まった。年長順だ、と言いながら義久が先にひとつ小さなドーナツを取った。
「私は1個だけにしておくよ。医者から高カロリーは控える様に言われてるからな。後は若いもので楽しみなさい」そう言って義久は離れに引き上げて行った。
「兄さん、このドーナツ全部私と沙耶さんが作ったのよ」3つ目のドーナツを平らげた結花がドヤ顔を披露した。
「これ全部か?! 大変だっただろう?」馨は結花を見た後、隣の沙耶に顔を向けた。
「大変でしたけど、結花ちゃんと一緒に作るのはとても楽しかったです。お味はどうですか?」
「うん、とても美味いよ。最初に食べたハート型のはコーティングのチョコも美味かった。イチゴの粒が入ってて甘酸っぱくて。このシナモン味も好きだな」
「イチゴのはねぇ沙耶さんが特別丁寧に作ったからね! 沙耶さん、それ作ってる時ずっと笑顔だったよ」
「えっ、そうなの? 気づかなかった。やだわ、恥ずかしい」
「素敵なお姉さんが出来て良かったね、結花ちゃん」涼はコーヒーをすすりながら目を細めた。
「うん。兄さんが沙耶さんと結婚してくれてホントに良かった!」
手作りのドーナツは甘さ控えめで皆食べる手が止まらなかった。
「お腹いっぱいだぁ」
「おっと、随分長居してしまいました。明日はお休みになってますからゆっくりされて下さい。残念ながら日曜はゴルフコンペが入ってます」
「分かった。気を付けて帰ってくれ」
涼が帰った所で賑やかな誕生日はお開きとなった。
「高野景子は一体何を考えているんですか・・」
「俺もそう思ったよ。多分‥これは売名行為じゃないか?」
「でも彼女はそんな事をしなくても売れてるのに。・・ただ業界での評判が少し落ち始めていますね。売れっ子なのを笠に着てわがまま放題だとか。その辺を分かっていての売名行為か‥単純に馨君に横恋慕してるのかもしれませんね」
「迷惑この上ない。沙耶の話も盗癖があるだの、昔から異性関係が奔放だっただの・・」
「僕が調査した限りではそんな話は出てきませんでしたね。それと・・五瀬家に行った日に高野景子が来ていた服ですが、あれは僕と沙耶さんが一緒に買ったワンピースでしたね。本来なら沙耶さんがあれを着て馨君の家族に対面する予定でした」
「それをどうしてあの女が?」
「沙耶さんの話だと景子と養母からダメ出しされたそうだよ。もっと地味な服を着て行った方がいいと」
「それでその服は景子にあげたと?」
「あげたとは言ってませんでしたねぇ」
「どうも・・高野家で沙耶がどんな生活をしていたのか気になるな」
「僕もですよ・・沙耶さんは何でもポジティブに捕らえる方のようだから、いいように利用されていたのかもしれない。彼女はホントに素直でひたむきで可愛らしい人ですよ」
「ああ・・」沙耶の笑顔が脳裏に浮かんで来た馨はぼんやりとした返事を返した。
(素直でひたむきで可愛らしい・・本当にその通りだ。好きな事を情熱的に話す様子は本当に見ていて楽しくなる)
「契約を白紙にする事、考えはどうなりましたか?」
「いや・・それは止めておこう。沙耶は俺とは必要以上に近づきたくないようだ」
「どうしてそんな風に思うんです? 沙耶さんがそう言った?」
馨は簡単に最近の沙耶の行動の変化について大まかに説明した。
「うーん、接触を避けてるのか・・馨君は女性恐怖症の事を沙耶さんに話しましたか?」
「いや言ってない」
「もし沙耶さんが誰かに聞いて知っていたとしたら、その行動も納得出来ますけど」
「俺とお前しか知らない事なのに一体誰から聞くんだ?」
「まぁ、それはそうですねえ。自然と分かる様な事でもないし・・」
「会長が入籍について何か言って来たら籍を入れるかもしれない。契約結婚は・・このまま継続だな」
「そう・・分かりました! ではここからは仕事の話です・・」
この後は涼も一切プライベートな話はしなかった。
そして金曜には予定通り、馨は東京へ戻ってきた。
「今日は馨君の家に用事があるから僕も一緒に世田谷へ行きますね」そう言って涼は馨と一緒に迎えに来た運転手の車に乗り込んだ。
馨の自宅に着くと涼が荷物を持って先に入って行った。続けて馨がリビングに入った時だった。
パンパーンと乾いた高音が響いて色とりどりの小さな紙切れが馨の頭に降り注いだ。
「「「兄さん、馨さん、馨君、お誕生日おめでとう~~~~!!!」」」
結花と沙耶、先に入った涼もクラッカーを手に笑っている。
「ほらね、自分の誕生日忘れてるでしょ? 兄さん毎年こうなんだもん」
「僕も日にちの話とか誕生日に関係する話題を避けるのに苦労したんですよ」
「ちょうどお誕生日の金曜に帰ってこられると聞いてみんなで準備してたんです。食堂へ行きましょう」
食堂は廊下を挟んでリビングの向かい側にある。ドアを開けると甘い匂いが漂って来た。テーブルにはすでに義久が席に着いていた。驚きで言葉を失っている馨に義久が一言言った。
「はははは、その顔は驚いたようだな」
甘い匂いの元はテーブルの上のドーナツだった。チョコレートやカラフルなシュガーでコーティングされた色々な形、大きさのドーナツがジェンガの様に組み合わさってデコレーションしてあった。所々にフルーツやクリームが飾られている。
「お誕生日ケーキならぬお誕生日ドーナツだよ!」
「夕食は済ませちゃいましたからね、僕は飲み物を用意してきます。みなさんは座ってて下さい」
「これ・・どうやって食べるんだ?」
「一番上のハート型のを兄さんが食べるの。後はぁ~~ジェンガだ!!」
そのピンクのチョコレートでコーティングされた可愛らしいハート型のドーナツを沙耶が馨の皿に取り分けた。
涼がめいめい好みの飲み物をテーブルに配置するとジェンガが始まった。年長順だ、と言いながら義久が先にひとつ小さなドーナツを取った。
「私は1個だけにしておくよ。医者から高カロリーは控える様に言われてるからな。後は若いもので楽しみなさい」そう言って義久は離れに引き上げて行った。
「兄さん、このドーナツ全部私と沙耶さんが作ったのよ」3つ目のドーナツを平らげた結花がドヤ顔を披露した。
「これ全部か?! 大変だっただろう?」馨は結花を見た後、隣の沙耶に顔を向けた。
「大変でしたけど、結花ちゃんと一緒に作るのはとても楽しかったです。お味はどうですか?」
「うん、とても美味いよ。最初に食べたハート型のはコーティングのチョコも美味かった。イチゴの粒が入ってて甘酸っぱくて。このシナモン味も好きだな」
「イチゴのはねぇ沙耶さんが特別丁寧に作ったからね! 沙耶さん、それ作ってる時ずっと笑顔だったよ」
「えっ、そうなの? 気づかなかった。やだわ、恥ずかしい」
「素敵なお姉さんが出来て良かったね、結花ちゃん」涼はコーヒーをすすりながら目を細めた。
「うん。兄さんが沙耶さんと結婚してくれてホントに良かった!」
手作りのドーナツは甘さ控えめで皆食べる手が止まらなかった。
「お腹いっぱいだぁ」
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