ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三

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13 嫌われる理由

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「お兄様ぁ~今日もお手伝いに参りましたわ!」

 せっかくレニーと同じ係になりバザーの間中ずっと一緒にいられると思っていたのに、暇があればブリジットが割り込んで来るのだ。

 今日も私とレニーの間に立ち、当たり前の様に販売を行っている。

「あ、あのねブリジットさん、あなたは1年生だし班も違うからここへ来てはいけないわ。ご自分の係のお仕事をしなくては」

「ご心配頂かなくても大丈夫です。私の代わりは見つけてありますから。さ、もう少し離れて下さいね」

 こんな調子でブリジットに阻まれ、ほとんど会話もさせてもらえず、お昼休憩も一緒に取れなくなってしまった。レニーも妹には弱いようで、ブリジットを好きなようにさせている。


「ああっ、もう腹が立つ! せっかくレニーと仲良くボランティアに励めると思ったのに! 二人で同じテントに立ってポーチやハンカチを売るなんて、まるで夫婦でお店をやってるみたいじゃない? この楽しいひと時が終わったらレニーは思うのよ『ジーナと一緒にいるのは楽しい。ジーナと結婚したら、こんな風に色んな事を共にして楽しい生活が送れるだろうな』って! そう感じてもらうチャンスだったのにぃ」

 イライラしながらサンドイッチにかぶりつく私の横で、アロイスは自分のサンドイッチを開いてチキンが入っていないかを細かく確認している。レニーとのお昼休憩をブリジットに奪われた私は、アロイスと教会裏のベンチでお昼をとっていた。

「ねえ、聞いてる?」

「聞いてる聞いてる。レニーがそう思ってくれるかは別として…妹はなんでそんなにお前を嫌ってるんだ?」

「私の事をジェリコにフラれた悪名高い令嬢だって言ってたけど、フラれたからってどうしてそうなるのかしら。まあ確かにおねだりは多かったかもしれないけれど……」

「本人に聞いてみればいいんじゃないか?」

 私が悩んでいる横でアロイスはつらっとしてそう言った。

「それが出来れば……ってそれもそうね! うじうじ悩んでいても始まらないわ。きっとこれ以上嫌われる事もないでしょうし。こうなったら善は急げよ、私ブリジットを探しに行くわ。またね、アロイス」

 そうよ、思い立ったが吉日。私は残りのサンドイッチを口に押し込みベンチを立った。


 ブリジットは礼拝堂にいた。

 礼拝堂は天井が高く、コリウス神の彫像が祭られた祭壇には、像を囲むようにして無数の白い蝋燭が灯されている。ステンドグラスから射す陽光が虹のベールを蠟燭に添えていた。左手には国教会自慢の壮大なパイプオルガンが輝き、彫像の前にクレアが奉納したロザリオが鎮座している。

 祭壇は一般人の立ち入りは禁止され、木製の頑丈な仕切りが立てられている。ロザリオが展示されているバザー期間中は、護衛の兵士も一人つけられていた。ブリジットはその仕切りに頬杖をついてロザリオを眺めていた。

「金ピカの飾り立てられた豪華な物じゃない所が本物らしいわよね」

「そうなの! 清貧を徳とするコリウス教だから、宝石で装飾されたジュエリーみたいなロザリオはあり得ないのよ! それに2千年以上も昔の物なのにまるで新品みたいだわ。きっと神の加護で守られているんだわ」

 後ろから声を掛けると、彼女は私の感想に嬉々として同意しながら振り向いた。だが私の顔を見ると、熱を帯びていたその表情は急激に冷めていった。

「あら、あなただったの」
「ええ、私あなたを探していたの。それにしてもブリジットさんってとても敬虔な信者だったのね」

「私だけじゃない。この国の、特に貴族はそうでしょう」
「…裕福な貴族なら、ああいう由緒ある聖遺物を手元に置きたいと考えるんでしょうね」

 私もブリジットの隣に立ち、仕切りに手を置いてロザリオを眺めた。

「あなたみたいな卑俗な人はそう思うんでしょうけど、それは罪深い考えだわ。ロザリオをはじめとした聖遺物は多くの人の目に触れる事で神の威光を示し、万人の心の拠り所となるべきなの。自己満足や虚栄心の為に自分だけの物にしようとするなんて、罰当たりで浅ましい行為よ」

 きっぱりと言い切ったブリジットは私を睨みつけながら付け加えた。

「私に何の用なの?」
「ええっと、単刀直入にお伺いしますけど…ブリジットさんってどうして私を嫌ってるの?」

 ブリジットは一瞬目を丸くしたがニヤリと笑みを見せ、言った。

「嫌われてる自覚があるのね」
「まぁそれなりには」

 ここ数日の彼女の私への態度や発言を思えば、猫でも気づくと思うけど。これは口にしないでおこう。

「私、キャシーと仲がいいの。あなたの話は前からよく聞いてたわ、ジェリコ殿下に高価な物をねだって、それを見せびらかしていたって。その上、同じ伯爵令嬢でもキャシーが選ばれなかったのは、自分の方が全てにおいて優れていてるからだって自慢してたんでしょ? 挙句、婚約破棄から間もないのにお兄様にアプローチするなんて…。そんなの黙って見てる訳ないわ」

「それは……っ」

 今の自分には身に覚えがない事だ。ゲーム世界のジーナが実際にどんな事をキャシーに言ったのかも分からない。ゲーム上で展開された情報以外は知らないし、私が憑依する前のジーナは悪役にふさわしい人物だったのだろう。一体これをどう弁明したらいいのかしら?

「婚約解消されて、家計は火の車で今は仕方なく働いてるのよね。人のいいお兄様の気を引いた後は、どうせまたお財布代わりに利用しようと思ってるんでしょ? そうはいかないわよ」

「そんなの考えた事もないわ! 私はレニーの優しくて、ちょっと照れ屋さんで純粋な所が好きなの。ただそれだけ…お金のことはちょっと事情があって……」

「とにかくもうお兄様にはちょっかい掛けないで」

 それだけ言うと、ブリジットはさっさと礼拝堂を出ていった。ブリジットの中で私はゲームの中のジーナのままなんだわ。今の私は以前のジーナとは違うって知ってほしいけど『私は変わりました』なんて口で言っても信用してもらえないでしょうね。

 レニーはブリジットをとても可愛がっている。妹に認められないと、私とレニーの関係は進展しないだろう。困ったわ……。
 

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