どうやらこの物語、ヒロインが一度死ぬ仕様です

山口三

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1話 ここはどこ? あなたは誰?

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 目を開けてぼんやりと見えてきたのは派手な色彩の天井だった。宗教画の様な天使まで描かれている。

 窓に掛かったカーテンも、部屋の家具や装飾品もすべてロココ調で、成金趣味の派手な装飾に包まれていた。

 ああ~私ってばテレビ付けっぱで寝ちゃったのか……ってまずい! 今日は仕事じゃん。一体いま何時よ?

 慌てて布団をめくり、ガバッと起き上がると

「▽×ーーーー!」

 女性の金切り声が上がった。

 ふと周囲を見渡すと天蓋付きのベッドに花柄、レースたっぷりの寝具。同じように花柄にフリフリレースのネグリジェを着ている。

「わっ、何これ?!」

 1DKの私の部屋がふたつは入りそうな広さの豪華な部屋で、驚いて立ち尽くすメイド服姿の若い女性がこちらを見つめていた。大きく目を見開いて。

 えっ、誰? メイド喫茶で働いてるお姉さん?……なんで私の部屋にいるの? てか、ここって私の部屋じゃなくない……?

 何が起きているのか分からず、メイドのお姉さんを見つめながら必死にこの状況を説明できる理由を考えていると、お姉さんは「○▽ΠΦΓ」と何か言い残し、慌てて部屋を飛び出していった。

何を言っているのか聞き取れなかったな……そういえば見た目も日本人じゃなかったけど、英語でもなかった。

 そんなことを考えていると、さっきのメイドがまた部屋に戻ってきて、その後からぞろぞろと外国人が何人も入ってきた。

 40代くらいの女性がベッドに横たわる私のもとへ駆け寄ってきた。中世風の髪型にドレスなんか着てる! 彼女は私を抱きしめ、涙を流しながら何かを言っている。

「ΔΓ〇ΧローΠしたΠのよ!」

 あれ、少し聞き取れるかも。

 傍らに立つ同じく40代くらいの男性と、もう一人20代前後の若い男性も、目を潤ませながらこちらを見ている。

「エリー、医◇を呼んでΔ○Π」
「δい、畏まりまΔた」

 さっきのメイドのお姉さんはエリーって言うのね。医者? を呼ぶのかな。私どこも痛くないけど。

「ねえ返事をし×ちょうだい、ど〇してそΨ

 だんだん言っていることが分かるようになってきたわ。

 若い男性は母と呼んだ女性に水を飲ませ、今度は私にも水の入ったグラスを手渡した。

 グラスを受け取った瞬間、自分の手が目に入った……これが私の手? 嘘でしょ……。

 白くて綺麗な肌をしていたが、ふっくらと肉が付き、指も丸みを帯びている。

「か、鏡……」

 最初に思わず口から出たのはこの一言だった。年上の男性が少し首をかしげてから、手鏡を差し出してくれた。

 恐る恐る鏡を覗き込む。

 茶髪……ええ、確かに染めてはいましたが。

 目がラベンダー色なんですが……いえ、カラコンは使ってません。
 
 彫も深め……えええええええっ!

 これ私じゃないです。その上……随分とふくよかです! これじゃあお相撲さんになれるわ、私。

 驚愕しつつ手にしたグラスの水を飲み干した。同時に自分のお腹がぐうぅぅぅ~~っと空腹を訴える。

 その瞬間、ほんの刹那だが、間があった。

 なに、この間。

 周囲の人はピタリと動きを止めて、お互いの顔を見つめ合っている。お腹が鳴ったことがそんなに当惑するようなことなの?

 と、『はい、カット!』とどこからか声が聞こえる。明らかにここの誰かがしゃべったのではない。どうやら頭上の方から聞こえてきたみたいだわ。

 え、なに、今の誰?

 そしてまた間。

 次の瞬間、空気がふっと緩み、周囲の人たちが、まるで『次の台詞を待っていた役者』みたいに一斉に動き出した。

 私は理由も分からないまま、『今、見られている』とだけ感じていた。
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