どうやらこの物語、ヒロインが一度死ぬ仕様です

山口三

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36話 一度あることは二度ある??

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 さてここは帝都からほど近い山の中。

 山と言っても丘に近い、緩やかな登りが続く森のような場所だ。紅葉した葉を拾いにたくさんの人で賑わっている。

 日本の年末は冬で都内でも雪が降ることもあるけど、この世界はまだ秋って感じかなあ。そして今日はお天気もいいし風もなくて暖かい。

 のんびり歩きながらたっぷり落ち葉を拾った私たちは、見晴らしがいい場所に座ってお昼を食べることにした。

「たくさん拾いましたね」
「ええ! 欠けたりしていなくて、色の綺麗な葉を探すのに夢中になってしまいました」

「ローズ様は私が今まで見たことのない、真剣な表情で拾っていましたよ」
「おっ、お恥ずかしいです……」

 ルイスはふふっと笑って私の髪に触れた。

「私はそんなローズ様がとても可愛らしいと思います」

 ボンッ……私の顔が軽く火を噴いた音でしょう、ええ。

「あのっ、サンドウィッチを作って参りましたから、召し上がってください」
「ローズ様の手作りですか?!」

 今朝作ったクロックムッシュは冷えると美味しさが半減してしまう。なのでこの世界にある湯たんぽのような、お湯を入れて保温する道具の上にサンドウィッチを置いて温かい状態を保ってあった。

「まだ暖かいですね! チーズがとろけてとても美味しいです!」
「サラダとポテトもどうぞ」

 ゆっくりとはいえ結構歩いた私たちはお腹が空いていた。サンドウィッチもポテトもサラダも完食して、お茶でほっとひと息ついた。

「ふう~お腹いっぱいになりましたね」
 
 お茶のカップを手にくつろいでいる私を見て、またルイスがふっと笑った。えー、今度は何ですか?

「口元にパンくずが付いています」

 ルイスがハンカチで私の口元をぬぐった。ルイスの顔は私の目の前にある。彼の手が私の頬に触れ、顔が近付いてきた……。

 咄嗟に私は下を向いてしまった。

「あっ、く、口がガーリック臭いです……から」

 下を向いたまま私は言い訳してしまった。頭では分かっている。
 ルイス様は、何も悪くない。

「すみません。いきなり過ぎましたね」

 あああ、ごめんなさい。いきなりではなかったと思う。絶対気を悪くしたよね……。

 気まずい空気が私たちの間を流れた。それに合わせたように【おーーーぅ】とか【ああああ~~~~~】と残念がる声が聞こえてくる。外野、うるさいな、もう!

 帰りの馬車の中でルイスはいつも通りに振る舞っていたが、私はいたたまれない気持ちでたまらなかった。


______


 
「ローズ、なんだか元気がないようだが?」

 皇子の執務室にお茶を運んだ私に、心配そうな目を向けてジェイミー皇子は尋ねてきた。

「いえ、その……少し風邪気味なだけです」

 皇子はデスクから素早く立ち上がり私の横に立った。以前なら考えられないような素早い身のこなしだった。

「風邪を侮ってはいけない。熱はないか?」

 皇子は私の額に手を当てた。「うん、熱はないようだな」

 この様子をじっと見ていたシャルル皇子が口をはさんだ。いつもの様にお茶の時間に、執務室に遊びに来ていたのだ。

「兄上、お熱を測る時は、おでこ同士をあてるんです」
「ん? こうか?」

 皇子は私の額に自分の額をコツンと当ててみた。

 かかかかかかかっか顔、顔、顔がーーーっ、皇子の美しく整った顔が目の前に! 昨日に引き続き、今日もこんな状態に陥るとは!

「あっ、やはり熱があるで、は……」

 皇子は顔を上げたが、私の顔が真っ赤になっているのを見て、ハッと自分も顔を赤らめた。

「やっ、す、すまない。深く考えないでやってしまった」

「は、はい、大丈夫です。それに、熱はないと思いますから」

 振り返ると、シャルル皇子がニンマリと笑みをたたえてこちらを見ている。

「あの……では私は下がらせて頂きます」

「えっ、ローズもう行っちゃうの?」

 シャルル皇子様のせいですからね! 私は恥ずかしいんです! 恥ずかしがりやなんです!

お茶のワゴンを押して部屋を出ようとしたとき、背後から皇子の声が掛かった。

「ローズ、今回は用心しなくてもいいからな!」

 へ? 用心しなくてもいい、何を? 困惑しながら私は皇室の厨房に向かった。今夜と明日の朝の皇子の献立をチェックしてから帰路するために。

 屋敷に戻ってから、私はようやく――
 皇子が言っていた言葉の意味に、思い当たった。
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