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16.いざブルネッタ侯爵領へ
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晩餐会当日、ルチアは朝からリリーに磨かれていた。湯浴みを済ませ、香油を塗られ、着替えに化粧、髪も纏められた。
終わった頃には、ルチアはグッタリとしていた。
だが、ルチアの出来栄えは彼女自身も素晴らしいと思えるものだった。
「完璧です!奥様!」
リリーは一仕事終えた満足そうな顔をしている。
鏡の前で見た自分の姿に、ルチアは驚いた。
「凄い、自分じゃないみたい」
髪はハーフアップで纏められており白い花のバレッタがついている。ドレスはAラインのアンクル丈。フワリと広がるスカートは大振りの花柄をあしらった可愛らしいものだ。
可愛らしいドレスに合わせて、化粧はいつもより濃いが控えめに抑えられている。
「さすが、ヒルベルタさんのドレスですね!!」
「え?このドレス、ヒルベルタさんが?」
「はい!今回の夜会をお話ししたら是非と」
「そ……そう」
王都で人気の仕立て屋ヒルベルタに、2週間しか猶予のない夜会へのドレスを頼むなんて無謀であるとルチアは思った。
だが、それを了承してもらえるコンスタンツィ侯爵家、恐るべしとも思う。
準備が済んだので、ルチアは玄関ホールに向かった。
玄関ホールには、既にレオポルトが待っていた。
いつもと違い、濃紺のタキシードを着込み、髪もオールバックで凛々しい雰囲気を醸し出している。
「お待たせいたしました、レオ様」
ルチアが声を掛けると、レオポルトが振り向いた。
「タキシード、お似合いですね」
ルチアが声をかけたが返事がなく、レオポルトはジッとルチアを見ている。
「あの……レオ様?」
もう一度名前を呼ぶと、レオポルトは気が付いたようだ。
「あ、いや。ドレス……いいな」
「ありがとうございます」
「ああ」
レオポルトはドレスを褒めるのが好きなのだなとルチアは思った。
確かにドレスはヒルベルタ作の素敵なドレスで、素晴らしい事は彼女も分かっている。
けれどたまには、中身も褒めて欲しいものだと少し悲しくなった。
そんな事を考えて、ルチアは慌ててそれを否定した。
悲しくなる必要など無いではないか、自分はあくまで期間限定の妻であり、彼が褒めなければならない理由はないのだから。
「レオ様、そろそろ行きましょうか?」
「あ、ああ。そうだな」
レオポルトが手を差し出したので、ルチアはその上に手を添えた。
こうして彼女達は車に乗ってブルネッタ侯爵家に向かう。
ブルネッタ侯爵領までは、車で2、3時間で到着する。馬車ならば考えられないほど短い時間で別の領まで行く事が出来るのだ。
「レオ様、ブルネッタ卿はどんな方なんですか?」
ずっと黙ったままなのは辛いので、ルチアはレオポルトに声を掛けた。
「そうだな。……明るい方だな」
「明るい方ですか?少し説明が雑過ぎませんか?」
「そ、そうか。いや。色々と説明しだすと愚痴が出てしまいそうでな……」
「レオ様が愚痴ですか?珍しいですね」
レオポルトが誰かの愚痴を話すなど、ルチアには想像出来なかった。
「悪い方ではないんだ。すごく世話になったし、尊敬もしている。ただ、少し……騒がしい人というか」
歯切れ悪く説明するレオポルトに、ルチアは思わず笑ってしまう。
「笑い事じゃないんだぞ」
「す、すみません。少し面白くて……」
ルチアは手で口を覆うが笑いは止まりそうになく、少し声が漏れてしまう。
すると、レオポルトは小さな溜息をついた。
「ブルネッタ卿には、二人の子供がいる。息子のディーノと娘のヴァニア。二人とも私にとっては幼馴染になる。
ディーノとは学校も同じだった。
二人共結婚式に出席してくれていた」
「そ、そうなんですか?すみません。顔は分からないです」
「いや、あの時は人も多かったしな。私も名前が出て来なかった人がいた」
「え?」
「招待客の中には、この人を呼べばあの人も呼ばなくては……と色々あってな。私とほとんど接点がない方も招待しなければならなかったのだ」
「なるほど」
貴族の結婚というのは、複雑な人間関係が入り混じっているようだ。結婚式の時、大半がコンスタンツィ侯爵家側の招待客だった事をルチアは思い出した。
「ディーノ様とヴァニア様はどんな方なんですか?」
「そうだな。ディーノは誰とでも仲良くなれる人懐っこい奴だ。ヴァニアは少し大人しい子だな。
学生時代もディーノのお陰で友人がたくさん出来たと思っている。
私は人付き合いが得意な方ではないから、あいつが間に入ってくれて助かった事が何度もある」
レオポルトはそう言いながら苦笑する。
「いいご友人なんですね」
「そうだな。……私は、周りに恵まれていたと思う」
しみじみと呟くレオポルトに、ルチアは温かい気持ちになった。
「ブルネッタ侯爵家の皆さんと是非仲良くなりたいです」
「ルチアなら、すぐに仲良くなれるだろう」
「はい。楽しみです」
ルチアが笑顔で答えると、レオポルトがフッと笑みを浮かべた。
レオポルトの微笑みに、ルチアは嬉しくなった。
「そういえば、ブルネッタ侯爵家は元々海賊だったと聞いた事があるんですが」
「よく知っているな」
「はい。マウロが昔話してくれたんです」
「ああ、執事の?」
「はい。マウロはとても物知りなんですよ。私も弟もマウロのお陰で教養やマナーを身につける事ができたので」
「そうか。だからルチアは所作も綺麗だしマナーも完璧なんだな」
「あ、ありがとうございます」
ルチアは褒められた事で少し照れくさい気分になってしまう。
「ブルネッタ侯爵家は、ルチアが聞いた通り先祖が海賊だったんだ。建国当初蛮族との戦いにおいて、海を守ったのがブルネッタ侯爵家の先祖である海賊たちだ。
陸を守ったコンスタンツィ家、海を守ったブルネッタ家、両家ともその頃の褒賞として貰い受けたのが爵位だ」
「ブルネッタ家も歴史深い家なんですね」
「ああ、そうだな」
車がブルネッタ領に入ると、街並みが一瞬にして変わった。
ブルネッタ領の街は、とても派手だった。
色とりどりの家が立ち並んでおり、色の統一感は全くないにも関わらず、纏めて見るととてもしっくりくるという不思議な街並み。
ブルネッタ領は海沿いにある為、大きな港がある。
ルチアは海を見た事が無かったので、今日は無理だろうがいつか昼間に海に訪れてみたいと思った。
そして、しばらく車を走らせていると、ブルネッタ侯爵家に到着した。
とうとう晩餐会の始まりだ。
終わった頃には、ルチアはグッタリとしていた。
だが、ルチアの出来栄えは彼女自身も素晴らしいと思えるものだった。
「完璧です!奥様!」
リリーは一仕事終えた満足そうな顔をしている。
鏡の前で見た自分の姿に、ルチアは驚いた。
「凄い、自分じゃないみたい」
髪はハーフアップで纏められており白い花のバレッタがついている。ドレスはAラインのアンクル丈。フワリと広がるスカートは大振りの花柄をあしらった可愛らしいものだ。
可愛らしいドレスに合わせて、化粧はいつもより濃いが控えめに抑えられている。
「さすが、ヒルベルタさんのドレスですね!!」
「え?このドレス、ヒルベルタさんが?」
「はい!今回の夜会をお話ししたら是非と」
「そ……そう」
王都で人気の仕立て屋ヒルベルタに、2週間しか猶予のない夜会へのドレスを頼むなんて無謀であるとルチアは思った。
だが、それを了承してもらえるコンスタンツィ侯爵家、恐るべしとも思う。
準備が済んだので、ルチアは玄関ホールに向かった。
玄関ホールには、既にレオポルトが待っていた。
いつもと違い、濃紺のタキシードを着込み、髪もオールバックで凛々しい雰囲気を醸し出している。
「お待たせいたしました、レオ様」
ルチアが声を掛けると、レオポルトが振り向いた。
「タキシード、お似合いですね」
ルチアが声をかけたが返事がなく、レオポルトはジッとルチアを見ている。
「あの……レオ様?」
もう一度名前を呼ぶと、レオポルトは気が付いたようだ。
「あ、いや。ドレス……いいな」
「ありがとうございます」
「ああ」
レオポルトはドレスを褒めるのが好きなのだなとルチアは思った。
確かにドレスはヒルベルタ作の素敵なドレスで、素晴らしい事は彼女も分かっている。
けれどたまには、中身も褒めて欲しいものだと少し悲しくなった。
そんな事を考えて、ルチアは慌ててそれを否定した。
悲しくなる必要など無いではないか、自分はあくまで期間限定の妻であり、彼が褒めなければならない理由はないのだから。
「レオ様、そろそろ行きましょうか?」
「あ、ああ。そうだな」
レオポルトが手を差し出したので、ルチアはその上に手を添えた。
こうして彼女達は車に乗ってブルネッタ侯爵家に向かう。
ブルネッタ侯爵領までは、車で2、3時間で到着する。馬車ならば考えられないほど短い時間で別の領まで行く事が出来るのだ。
「レオ様、ブルネッタ卿はどんな方なんですか?」
ずっと黙ったままなのは辛いので、ルチアはレオポルトに声を掛けた。
「そうだな。……明るい方だな」
「明るい方ですか?少し説明が雑過ぎませんか?」
「そ、そうか。いや。色々と説明しだすと愚痴が出てしまいそうでな……」
「レオ様が愚痴ですか?珍しいですね」
レオポルトが誰かの愚痴を話すなど、ルチアには想像出来なかった。
「悪い方ではないんだ。すごく世話になったし、尊敬もしている。ただ、少し……騒がしい人というか」
歯切れ悪く説明するレオポルトに、ルチアは思わず笑ってしまう。
「笑い事じゃないんだぞ」
「す、すみません。少し面白くて……」
ルチアは手で口を覆うが笑いは止まりそうになく、少し声が漏れてしまう。
すると、レオポルトは小さな溜息をついた。
「ブルネッタ卿には、二人の子供がいる。息子のディーノと娘のヴァニア。二人とも私にとっては幼馴染になる。
ディーノとは学校も同じだった。
二人共結婚式に出席してくれていた」
「そ、そうなんですか?すみません。顔は分からないです」
「いや、あの時は人も多かったしな。私も名前が出て来なかった人がいた」
「え?」
「招待客の中には、この人を呼べばあの人も呼ばなくては……と色々あってな。私とほとんど接点がない方も招待しなければならなかったのだ」
「なるほど」
貴族の結婚というのは、複雑な人間関係が入り混じっているようだ。結婚式の時、大半がコンスタンツィ侯爵家側の招待客だった事をルチアは思い出した。
「ディーノ様とヴァニア様はどんな方なんですか?」
「そうだな。ディーノは誰とでも仲良くなれる人懐っこい奴だ。ヴァニアは少し大人しい子だな。
学生時代もディーノのお陰で友人がたくさん出来たと思っている。
私は人付き合いが得意な方ではないから、あいつが間に入ってくれて助かった事が何度もある」
レオポルトはそう言いながら苦笑する。
「いいご友人なんですね」
「そうだな。……私は、周りに恵まれていたと思う」
しみじみと呟くレオポルトに、ルチアは温かい気持ちになった。
「ブルネッタ侯爵家の皆さんと是非仲良くなりたいです」
「ルチアなら、すぐに仲良くなれるだろう」
「はい。楽しみです」
ルチアが笑顔で答えると、レオポルトがフッと笑みを浮かべた。
レオポルトの微笑みに、ルチアは嬉しくなった。
「そういえば、ブルネッタ侯爵家は元々海賊だったと聞いた事があるんですが」
「よく知っているな」
「はい。マウロが昔話してくれたんです」
「ああ、執事の?」
「はい。マウロはとても物知りなんですよ。私も弟もマウロのお陰で教養やマナーを身につける事ができたので」
「そうか。だからルチアは所作も綺麗だしマナーも完璧なんだな」
「あ、ありがとうございます」
ルチアは褒められた事で少し照れくさい気分になってしまう。
「ブルネッタ侯爵家は、ルチアが聞いた通り先祖が海賊だったんだ。建国当初蛮族との戦いにおいて、海を守ったのがブルネッタ侯爵家の先祖である海賊たちだ。
陸を守ったコンスタンツィ家、海を守ったブルネッタ家、両家ともその頃の褒賞として貰い受けたのが爵位だ」
「ブルネッタ家も歴史深い家なんですね」
「ああ、そうだな」
車がブルネッタ領に入ると、街並みが一瞬にして変わった。
ブルネッタ領の街は、とても派手だった。
色とりどりの家が立ち並んでおり、色の統一感は全くないにも関わらず、纏めて見るととてもしっくりくるという不思議な街並み。
ブルネッタ領は海沿いにある為、大きな港がある。
ルチアは海を見た事が無かったので、今日は無理だろうがいつか昼間に海に訪れてみたいと思った。
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とうとう晩餐会の始まりだ。
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