「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫

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第3話:復讐のプロデュース

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「……ふん。相変わらず、脱ぐと凄まじいな」
学園の旧校舎、使われていない美術準備室。レンは私の姿を見て、呆れたように、けれどどこか感心したように呟いた。
私は、重たい眼鏡を机に置き、顔にかかっていたボサボサのウィッグを脱ぎ捨てた。
鏡の中に映るのは、透き通るような白い肌と、意志の強さを宿した琥珀色の瞳。特注のウィッグで隠していた腰まで届く艶やかな黒髪が、開放された喜びを謳歌するようにふわりと広がった。

「これ、いつまで被ってなきゃいけないの。蒸れるんだけど」
「あと一週間の辛抱だ。文化祭のステージで『正体』を明かした時のインパクトを最大にするには、今の『地味で惨めな佐藤澪』のイメージを学園中に定着させる必要があるからな」

レンはタブレットを操作し、エマが取り巻きとやり取りしているチャット画面を表示させた。
『佐藤澪、マジでメンタル強いよね。あそこまで言われてまだ学校来るんだ』
『ハルト様、エマにメロメロだし。あいつ、奨学金止まったら路頭に迷うんじゃない?』
 画面には、私の机に落書きした犯人の自慢話や、エマが自作自演の怪我を「名演技」と称え合うメッセージが次々と流れていく。

「エマの背後にいる協力者も特定した。以前の学校で彼女の『汚れ役』を引き受けていた、半グレまがいの集団だ。今回の階段の動画も、彼らが編集している」
「……用意周到ね。でも、詰めが甘いわ。私を誰だと思っているのかしら」
 私はレンから渡された資料に目を通す。そこには、ハルトの父親が経営する不動産会社の経営状態が詳細に記されていた。
「ハルトの家、かなり無理な融資を受けてるわね。私の父の息がかかった銀行から」

「ああ。君の父上、佐藤グループの会長に一言『あの会社、危ないらしいですね』と耳打ちさせるだけで、如月家は一晩で瓦解する」
「それは最後の仕上げよ。まずは、あの子たちの『自尊心』を粉々に砕いてあげないと」

私はレンに、あるリストを手渡した。
「これ、文化祭の実行委員に回しておいて。それから、当日使う大型スクリーンの操作権限。レン、あなたなら取れるわよね?」
「誰に言ってる。……君の言う通り、最高に悪趣味な『公開処刑』の舞台を整えてやるよ」

翌日。学園の廊下を歩く私は、相変わらず「地味なブス」のままだった。
エマの取り巻きにわざと足を引っかけられ、教科書をぶちまける。
「あはは! 見てよ、あの顔。幽霊みたい」
 笑い声の中、ハルトがエマの肩を抱いて通りかかる。
「澪、まだいたのか。お前の退学処分、理事会で正式に検討に入ったからな。今のうちに荷物をまとめておけよ」
 ハルトは汚いものを見るような目で私を見下ろした。その隣で、エマが可哀想なフリをして口を開く。

「ハルト様、もうやめてあげてください。……澪さん、最後に一つだけチャンスをあげるわ。文化祭のミスコン……『学園ベストカップルコンテスト』に、あなたも出ない?」
「コンテスト?」
「そう。そこであなたが私にちゃんと謝ってくれたら、ハルト様にお願いして退学を取り消してもらうよう話してあげる」

エマの提案に、周囲がどっと沸いた。
「いいじゃん! 公開謝罪会見!」「地味ブスがステージに上がるなんて、最高の引き立て役だよ!」
ハルトも面白そうに鼻で笑った。
「いいな、それ。お前の惨めな姿を全校生徒に見せて、最後のお別れにしようぜ」

私は俯き、震える声で――歓喜を必死に隠しながら――答えた。
「……わかったわ。出る、出場するわ」

エマが満足げに、蛇のような笑みを浮かべる。
彼女は気づいていない。
それが、自分たちの処刑台への階段だということに。

私は落ちた教科書を拾い上げ、眼鏡の奥で冷たく微笑んだ。
(ええ、楽しみにしてるわ。……あなたたちが、世界で一番惨めなカップルになる瞬間を)
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