「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫

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第4話:嵐の前の静けさ

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文化祭まであと三日。学園内は浮き足立った空気に包まれていたが、私に向けられる空気だけは冷たく凍りついたままだった。
「ねえ、これ、澪さんの分よね?」
エマの取り巻きの一人が、私の机に大量のチラシの束を叩きつけた。コンテストの告知チラシだ。
「一人で全部、近隣の店に配ってきてね。特待生なんだから、雑用くらい完璧にこなしてよ」
クラス中からクスクスと忍び笑いが漏れる。ハルトは教室の後ろで、エマに甲斐甲斐しくジュースを注ぎながら、こちらを一瞥すらしない。

私は無言でチラシを掴み、教室を出た。
向かったのはチラシ配り先ではなく、いつもの美術準備室だ。

「……遅いぞ。あと三日で、その死人のような猫背を矯正しなきゃならないんだ」
レンが、呆れたように鏡の前で待っていた。
「ごめん。ゴミの片付けに手間取って」
私はウィッグを脱ぎ、重い眼鏡を放り出す。レンが用意したのは、学園の制服ではなく、目の覚めるような深いロイヤルブルーのドレスだった。

「これは……」
「君の家の専属デザイナーに特注させた。当日、大型スクリーンに映る君は、学園の生徒ではなく『佐藤グループの次期後見人』として君臨する必要があるからな」
私はドレスを身に纏い、レンの指導のもとでウォーキングを開始する。
地味な特待生として過ごした数ヶ月で染み付いた「気配を消す癖」を剥ぎ取り、代わりに幼少期から叩き込まれた「支配者の品格」を取り戻していく。

「視線が甘い。敵を殺すのは言葉じゃない、存在そのものだ」
レンの厳しい声が飛ぶ。彼は私の顎を指先でクイと持ち上げた。
「ハルトのような小物に、君の美しさを一秒たりとも安売りするな」
「わかってるわ。……彼には、一生届かない場所から私を見上げてもらうもの」

練習の合間、レンがタブレットである映像を見せてくれた。
「エマのバックについている半グレ共の動きを掴んだ。当日、君がステージに上がった瞬間に、野次を飛ばして卵を投げつける計画を立てているらしい」
「……本当に、やることが下劣ね」
「だが、それこそがチャンスだ。彼らが動けば動くほど、証拠は鮮明に残る。ハルトが彼らに支払った『報酬』の出どころも突き止めた。部活動の予算を横領している」

私は冷ややかな笑みを浮かべた。
横領、名誉毀損、自作自演の怪我。
ハルトとエマが積み上げた罪は、もう言い逃れできないほどに膨れ上がっている。

その日の放課後。チラシ配りを終えた(ふりをした)私が校門を出ようとすると、待ち構えていたハルトに腕を掴まれた。
「おい、地味ブス。コンテストの練習はしてるのか?」
ハルトは私の腕を強く握り、耳元で低く囁いた。
「当日、全校生徒の前で土下座して、エマの靴を舐めて謝れよ。そうすれば、退学だけは勘弁してやるよう親父に言ってやるからさ」
ハルトの吐息が不快で、私は思わず目を伏せる。彼はそれを「恐怖」だと勘違いしたのか、満足げに笑って腕を放した。

「じゃあな。精一杯、惨めな姿を見せてくれよ」

去っていく彼の背中を見つめながら、私は懐にあるスマホを軽く叩いた。
そこには、今ハルトが言った「脅迫」に近い言葉が、鮮明に録音されている。

「ええ、精一杯『最高』の姿を見せてあげるわ。ハルト」

空は赤く染まり、不穏な影を落としている。
いよいよ、処刑台の幕が上がるまで、あとわずか。
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