家族に疎まれて、醜穢令嬢として名を馳せましたが、信用出来る執事がいるので大丈夫です

花野拓海

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一章 汝等ここに入るもの、一切の望みを捨てよ。

鰻って蒲焼きにしたら全然似てないっていう不思議

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前回のあらすじ

使用人A「穢らわしい!跪きなさい!」

レベッカ「虐められすぎて辛い………ぴえん」

ということで深夜に最新話で~す

□■

 レベッカが静かに天井を見上げていると、部屋の扉が静かに開いた。

 先程使用人はお盆に載せていたレベッカの夕食を、レベッカにぶちまけた後は食器だけ回収して帰って行ったので使用人がここに来る理由は無いはずだ。

 ならば、こんな時間にレベッカの部屋を訪ねてくる人物は一人しかいない。

「アイト………」

「はい。僕ですよお嬢様」

 そう言いながらレベッカの専属執事であるアイト・カイトは部屋に入ってくる。
レベッカは視線だけアイトに向ける。

「遅くなってしまい、申し訳ありません………すぐに掃除します」

 アイトは持ってきていたものを机の上に置くと、生活魔法を用いてレベッカを綺麗にし、その後に治癒魔法を使ってレベッカの身体の痛みを取り除いた。

「………ありがとう」

「いえいえ。これも僕の仕事ですから」

 レベッカはアイトにお礼を言いながら静かに立ち上がる。
 アイトはレベッカが立ち上がるのを確認すると、アイトが持ってきていたもの、レベッカの夕食が置いてある机の椅子を静かに引いた。

「いいんだよ?アイト。別に、仕事だからってそんなに色々してくれなくても………」

 そう言いながらも、レベッカは静かに椅子に座る。本気でアイトを拒絶しないのは、この家に味方はアイトしかいないからだ。

 アイトはある日突然レベッカの専属執事に立候補した。
 専属執事と言っても、アイトはこの家の使用人筆頭。レベッカに費やす時間は少なく、レベッカの父親でありである領主がアイトの通常業務を多くしているのも原因のひとつだろう。

 領主は、とある事情からレベッカを毛嫌いしている。いや、この家の人全員がレベッカのことを嫌い、邪魔者扱いしてくるのだ。

 だが、そんな中アイトだけはレベッカに優しくしてくれている。物心ついた時からアイトはレベッカに優しくしてくれ、専属執事になってからは短い時間だけでも、レベッカの助けになってくれる。

「いつもありがとうね。アイト」

 レベッカは常に感謝の言葉をアイトに送っている。

「滅相もありません。それに………」

 だが、感謝の言葉を貰ったアイトは浮かない表情を浮かべる。
 日々の使用人や家族からレベッカが受けている虐待とも言える惨劇に、アイトは何もすることができていないのだから。

 本当はアイトは専属使用人としてレベッカの前に出て守りたい。そうアイトが思ってくれていることはレベッカも知っている。だが、

「そんなに気負わなくても………アイトが私を思ってくれていることは知っているからね」

 レベッカは大丈夫だと言うが、アイトはそれでも気分が晴れなかった。

「本当に大丈夫だよ、アイト。それにお父様も私に関しては何も言ってないでしょ?」

 言ってないも何も、その父親が率先してレベッカを除け者にしてることくらい知っている。そして、アイトと引き離そうとしていることも。

 アイトは使用人としてではなく、一個人としても優秀だった。
 もしアイトが出ていくと言って自由に出ていっても、一人で難なく生きていけるくらいには。
 そして、兵士としても優秀だった。

 レベッカの父も領主ということで、それなりの戦力を抱えてはいるが、その兵士を個人で全滅することができるくらいにはアイトは強い。

 なので、レベッカと関わっているという理由によるクビでは、あまりにも家へのダメージがデカすぎるのだ。そのため、よくアイトにレベッカの専属使用人を辞めるように言っているのだ。

 アイトが専属執事になっているのはアイトが希望したから。了承したのはアイトの気分を害して使用人を辞められると困るから。

「ですので、何も気にしなくても大丈夫ですよ」

 たとえ、他の使用人達がアイトに構ってもらっていることに嫉妬して余計な八つ当たりが増えたとしても、既にレベッカにとっては関係の無いものだった。
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