家族に疎まれて、醜穢令嬢として名を馳せましたが、信用出来る執事がいるので大丈夫です

花野拓海

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一章 汝等ここに入るもの、一切の望みを捨てよ。

喧嘩した時に誰かに相談したからといって、その例が自分に当てはまるかといえばそうではないよね

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 その後はしばらくはトラブルもなく二人は街を歩いていた。

「アイト、あれはなに?」

 と、レベッカがなにかを見つけたので、アイトもそちらに視線を向けると、3人の男が14歳くらいの女の子を路地裏に連れ込もうとしている瞬間であった。

「お嬢様。あれは誘拐の可能性があります」

「誘拐!?」

「はい。ですので………」

「だったら、すぐに助けないと!」

 誘拐の可能性を示唆し、隠れているように言おうとしたアイトだったが、レベッカは静止の声を無視して路地裏を覗き込んだ。

「やめ、て………」

「この、大人しくしろ!」

「このガキ、暴れやがって」

 アイトから何事も疑いから入れと言われていたレベッカは、万が一勘違いだったことを考えて覗いていたのだが、どう見ても誘拐現場だった。

 女の子は嫌そうな声を出しながら悲壮感たっぷりな声を出して男を拒絶。男のうち2人は女の子を拘束しようとしていて、1人は誰か来ないように拘束しているすぐ側からレベッカ達がいる大通りの見張りをしている。
 レベッカが侵入の機会を伺っていると、見張りの男とレベッカの目が合った。

「「あっ………」」

 互いに声を零したあとの対応は速かった。

「おい、誰か………」

「"氷結弾アイシクル・ショット"!」

 2人に警告するために男は叫び、言い終える前にレベッカの魔法が男に炸裂する。

「な!?おい、ダズ!」

 女の子を拘束しようとしていた男がレベッカの魔法によって倒れた男、ダズの元に駆け寄る。

「おい、誰だ!ダズを殺ったのは!」

 ダズさん、殺してないよ?とレベッカは思いながらその姿を現す。

「そこまでよ、悪党たち」

 青色の髪を揺らしながらレベッカは3人の前に立つ。

 男2人はダズが不意打ちでやられたこともあり、遠距離攻撃が得意な衛兵でもやって来たのかと考えていたのだが、まさかの女。しかもかなり可愛い。

 男2人は警戒心も程々に、どうやってレベッカを捕まえるのかで頭がいっぱいだった。

「ははは!これは面白い。嬢ちゃんが俺たちに勝てるとでも?」

 男はレベッカの抵抗する意志を削ぐためにナイフを取り出した。業物でもなんでもない安物の果物ナイフ。

「痛い思いしたくなければ、嬢ちゃんも大人しくしな」

 1人がレベッカにそう言っている隙にもう1人が女の子の拘束の続きをする。

「むー!むー!」

「こら、大人しくしろ」

 だが、レベッカには涙を浮かべながら助けを求める女の子の姿しか見えなかった。

「こら、聞いてるのか?」

 レベッカが恐怖で声も出せなくなったと判断した男はそのまま近づき、

「"別歩空間スペール・イグノー"」

 レベッカを捕まえようとした男の手はレベッカの身体をすり抜けた。

「は?」

 わけがわからない。なにかの見間違えだと思った男はもう一度レベッカを捕まえようとして

「"衝撃インパルム"」

 近づいてきた男の顔面にレベッカは衝撃を放った。

「………は?」

 横目でレベッカと男の様子を見ていた残り1人の男はその光景が信じられなかった。

「おい、ベン?何やってんだよ!」

 その男は倒れた男、ベンに向かって叫ぶも、ベンが起き上がる様子はなかった。

「さて、その子を離してあげて」

 レベッカは女の子の拘束を中断した男に向かって、慈愛のこもった声でそう語りかける。
 だが、混乱して正常な判断ができていない男はそのままナイフを手にレベッカを刺そうとして

「全く、危ないですよお嬢様」

 アイトが背後から男を拘束した。

「かっ………」

 アイトの拘束が想像以上に強く、肺から空気を漏らしてしまった男。

「アイト!」

 アイトが拘束した男は悪足掻きを続ける。

「くそ!離しやがれ!」

 男が大声で叫び続けたことにより、近くを巡回中だった衛兵が気づき、男3人は逮捕されて行った。

「えっと、大丈夫だった?」

 レベッカは座り込んでいる女の子に手を差し伸べた。

「うん………ありがとう」

 そう言って栗色髪の女の子は顔をあげた。

「どういたしまして。私の名前はレベッカ。ねぇ、あなたの名前は?」

 女の子は優しく微笑むレベッカの顔を見て、小さく答えた。

「私は、ステラ………です」
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