家族に疎まれて、醜穢令嬢として名を馳せましたが、信用出来る執事がいるので大丈夫です

花野拓海

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一章 汝等ここに入るもの、一切の望みを捨てよ。

おめでとうございます!当店200万人目のお客様です!え?なにかあるのかって?何も無いよ

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 ルルアリア・ルーズ。レベッカの実の姉の名前だ。
 性格はレベッカとは似ても似つかない。
 レベッカが慈愛に溢れた聖女のような人物であれであれば、ルルアリアはその逆。傲慢で他人を見下すことしかできない女だ。
 そのくせしてルルアリア自身の能力値は低く、貴族令嬢としては減点ものだ。

 ルルアリアの容姿も貴族令嬢としては平凡だ。しかも虐げている筈のレベッカの方が容姿が優れているので、ルルアリアは勝手に劣等感を抱いている。

 そんな2人が、邂逅した。ルルアリアの意図的に。
 片やドレスを着て着飾っている。片や水浸しになり、その時に泥が跳ねたのか泥が少し付着している。

 自分よりも容姿が優れている相手が、見窄らしい姿を晒していたらどうなるのか。わかっている。

 ルルアリアなら

「なに?その姿。穢らわしい」

 絶対にバカにする。

「えっと、これは………」

「なに?私に意見するつもり?生意気ね」

「えっと、そうじゃなくて」

「じゃあなに。私に文句でも言うの?事実を言ってなにが悪いの?そんなことも容認できないなんて………器が小さすぎよ」

 実際器が小さいのはルルアリアなのだが、レベッカはそれを口にはださない。だしたら面倒事になるからだ。

「はい………ごめんなさい」

 レベッカが素直に謝ると、ルルアリアは「ふんっ」と鼻を鳴らすと、レベッカの部屋の中を物色し始めた。

「あの、ルルアリア姉様?」

「その姉様って言うのを辞めて。あんたと血が繋がってるってだけで虫唾が走るんだけど」

 明らかに言い過ぎだが、レベッカが虐待され初めてから度々言われている言葉だ。既に慣れている。心が痛まないのは別だが。

「相変わらずなんにもない部屋ね。私に似合いそうなものがなにもないじゃない。まあ、元々期待してなかったけど………」

 そうして部屋を一通り物色すると、レベッカを見て一言。

「跪きなさい」

「………え?」

 レベッカは突然言われたその言葉の意味がわからなかった。

「聞こえなかったの?耳も悪いのね。もう一度言ってあげるわ。その場で惨めに這い蹲りなさい」

 再度言われたことにより、レベッカの脳の理解が追いついた。
 今現在のレベッカは部屋の中心に立っている状態だ。
 普段はベッドやら床やらに寝転がっているため、立っているのは邪魔だったのだろう。

 仕方がないのでレベッカはその場に座った。

「私は跪けって言ったんだけどね………まあいいわ」

 大人しく床に座ったレベッカの目の前まで歩いてくると、

「ムカつくのよ!」

 レベッカを顎から蹴りあげた。
 それなりの勢いで蹴られたこともあり、口の中が切れて血が飛び出す。

「どいつもこいつも!バカにして!何様のつもりよ!」

 最近行くと言っていた社交パーティーにてなにかあったのか、不満を全てレベッカにぶつけてくる。

「私の態度が気に食わない?私の容姿が好みじゃない!?巫山戯るな!格下の貴族如きが私に逆らうな!」

 ルルアリアは、不満が溜まってもすぐには爆発させない。溜まっていた不満は、レベッカに対して一度に解放する。そして吐き出した後に痛みに悶え苦しむレベッカの姿を見て笑って帰っていくのだ。

 今日も散々殴り、蹴り飛ばし、ルルアリアが息切れするまでレベッカは攻撃され続けた。

「ゼェ………ゼェ………」

 肩で息をしており、疲れているのは目に見えて明らかだった。

「ゼェ………そういえば、ゼェ…あんた、今日、ゼェ…どこかに、出掛けてたでしょ………ゼェ…」

 どこかに。街しか答えはないのだが、レベッカは黙って言葉の続きを聞くことにした。

「なにしようと、してたかは知らないけど、ゼェ…この家から逃げ出そうなんて、ゼェ…無駄なことは、考えない事ね」

 どうせ無駄だから、と。
 そう言い残してルルアリアは部屋から出て行った。

 ルルアリアが部屋から出て行ってから1分程でアイトは帰ってきた。

「お嬢様、遅れてしまい申し訳………お嬢様!?」

 扉をノックして、入ってきたアイトは、レベッカの惨状を見て声をあげた。

「どうしたのですか、この出血は!?まさか、」

 レベッカをこれほどまでに痛みつけるのはこの屋敷には3人しかいない。
 レベッカの父であるヴァインヒルトと、姉であるルルアリア、そして兄であるトリスタンだけだ。
 母は基本的になにもしてこない。暴言も吐いてこないし、痛みつけても来ないので、1番無害だ。

「大丈夫、だから………」

「そんなはずがありません!今すぐ治療しますので少し待っててください」

 そう言うと、濡れた身体を先に拭いて傷を痛めるより、先に傷を治すための治癒をアイトは優先した。
 アイトの手から治癒の、優しい光が灯される。

「あぁ………」

 その優しい光に抱かれて、レベッカはそれだけで心に安らぎがもたらされたような気がした。
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