家族に疎まれて、醜穢令嬢として名を馳せましたが、信用出来る執事がいるので大丈夫です

花野拓海

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一章 汝等ここに入るもの、一切の望みを捨てよ。

いくら希望が舞い降りようが、無理なことっていくらでもあるよね

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「アイトぉ」

 レベッカは、ステラの顔を抱きながら、泣き声でアイトの名前を呼ぶ。

「辛かったですね、お嬢様………」

 アイトは優しくレベッカに寄り添い、そんな2人を、新手の魔獣が襲いかかろうとする。
 アイトと相変わらずレベッカの頭を撫でていて、レベッカはステラの首を落とさないようにしながら、アイトに寄り添っている。

 第三者から見ると、絶体絶命の場面。だがアイトは、見向きもせずに腕を振るうだけでその魔獣を両断した。
 いや、実際には気配は感じ取っていたし、手に持っていた剣で魔獣を両断しただけの話し。

 だが、それを軽々しく行えるのがアイトという執事である。

「大丈夫ですよ、お嬢様。僕が、必ず守りますから」

 アイトはそう言いながら、剣を腰にぶら下げていた鞘に直し、手に風球を生成する。

 魔獣は、あと2体街に侵入していて、殺された仲間の様子を見に、アイトとレベッカの元に向かっている。

 2体がくっついた。その瞬間を狙って、アイトは風球を飛ばす。

 風球は、2体の魔獣の間まで飛んでいき、爆発した。
 風の斬撃により、魔獣は全身をズタズタに斬り裂かれて絶命した。

「お嬢様………」

 魔獣の処理を終えたアイトは、未だに地面に座り込んでいるレベッカの元まで歩み寄った。

 レベッカは、まだステラの頭を抱いている。

「アイトぉ………ステラが、ステラがぁ」

 レベッカのその言葉で、アイトは始めて、その頭が誰のものかを理解した。
 別に、アイトがステラに興味がなかったわけではない。ただ、顔が血に染まっていて、判別がつかなかっただけ。

「すみません、お嬢様」

 アイトは急いでステラの顔に手を当てて、治癒魔法を実行する。
 魂魄魔法を用いり、蘇生を試みるも、

「すみません、お嬢様………」

 アイトのその言葉で、レベッカは全てを理解した。

「僕の力が及ばず、大切な友人を………」

 アイトは、レベッカがステラと仲良くしていたことも、友達になれたことに歓喜していたことも知っていた。だから、本気で蘇生しようとして、ダメだったのだ。

 ステラの魂は、もうどこにもない。時間をかければ治癒魔法で動体は生やせる。魂魄魔法で人工的な魂を作って、ステラをゴーレムにすることもできる。
 だが、人間を素材としたゴーレムの製作は法律で禁止されているし、そもそもレベッカが納得しないだろう。

 一方、レベッカは殺人事件、街の炎上、ステラが殺人犯だった事実、ステラの死などのことが合わさり、ついに

「きゅぅ」

 疲労もあって、その場で気絶してしまった。

「おやすみなさい、お嬢様。あとは全部、なんとかしますから………」

 アイトの、そんな台詞を聴きながら、レベッカの意識は闇の中に沈んでいった。
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