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一章 汝等ここに入るもの、一切の望みを捨てよ。
今、笑っていなければいけない
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アイトとキスをした。その事実がレベッカの頭の中を駆け巡る。
「うぅ………」
レベッカは現在、ベッドでうつ伏せ状態になりながら、足をパタパタと動かしている。
ステラには悪いと思いながらも、どうしても羞恥と歓喜の感情がレベッカの中を駆け巡る。
「不意打ちなんて、狡い………」
確かにアイトはカッコイイし、頼りになる。レベッカもアイトのことは凄く頼りにしていた。
だけど、レベッカの中では、アイトとは壁を作っていた。
執事と、貴族令嬢。レベッカは自分が貴族令嬢と言えるかの疑問もあったが、それはそれとして、アイトとの距離を少しでも作るために、そういった壁を作っていた。
だが、今回の事件。レベッカはレベッカとして動いた。そしてステラを失った。その悲しみをアイトは突いてきたのだ。
人によっては、狡いと言うだろう。
卑怯だと言うだろう。弱った女の子の心に入り込むような真似をしたのだから。
だが、アイトからそのようなことをされては、もうレベッカは自分の心を偽れなかった。
「私は、アイトのことが、好き………」
それを口にして、レベッカはまた羞恥で顔を真っ赤にした。
「うぅ………想像以上に恥ずかしい………」
誰も聞いていないとはいえ、それを口にするには勇気がいる。
「今の私を見たら、ステラはどう思うかな?」
裏切り者と、罵るだろうか。
人の犠牲の上で生きておいて、幸せになるなと、そう言っただろうか。
それとも、祝福してくれただろうか。
わからない。レベッカは、本当のステラがまだわからなかった。だけど、レベッカは死んだステラの分まで生きようとは思ってない。
死者は死者だ。生者は生者。生者が死者を思い、死者の分まで生きよう考えるのは傲慢だろう。
「~ならきっとこうしてくれる」なんて憶測もしない。だけど、
「祝ってくれたら、嬉しいな………」
もしかしたらステラは天国に行けたかもしれない。
現実世界で、最後は散々だったぶん、ステラには天国に赴いてほしいと思うし、来世では幸せになって欲しいと、ほんのりと願う。
「お嬢様。入りますよ」
と、そのタイミングでアイトが扉をノックして入ってきた。
「どうですか?もう気分は治りましたか?」
レベッカがアイトにキスをされて、ここまで動揺してるのに、キスをした張本人であるアイトは一切動揺していない。
「ねぇ、アイト。アイトって、キスし慣れてるの?」
もしキス慣れしてるならば、色々と思うところはあるが、動揺していない理由にも納得だ。
「いえ。僕も初めてでしたが」
だが、アイトもファーストキスだとほざいた。
「じゃあ、なんでそんなに冷静なの!?」
初めてなのに、2人でこんなに差がでるなんて。理不尽だ。
「お嬢様は、僕に動揺してほしいのですか?」
「そうじゃなくて、私だけ恥ずかしがってるのは嫌なの!」
アイトに向かってそう叫ぶと、レベッカは寝転がっていたベッドから降りて、立ち上がった。
「お嬢様?なぜ、こちらにゆっくりと近づいて来るのですか?」
「なぜって?アイトなら、わかるよね?」
レベッカはゆっくりとアイトに近づくと、今度は真正面からアイトの唇を奪った。
身長差故にレベッカが背伸びをして、アイトの顔も手を使って無理矢理近づけてするようなキスだったが、それでもレベッカは幸福感に満たされた。
少しだけ唇が重なり、2人の顔が離れる。
「ねぇ、アイト。私は、アイトのことが好き」
レベッカの突然の告白に、アイトはなにも言わなかった。
「ねぇ、アイトは?アイトは私のこと、好きじゃない?」
「好きですよ」
そんなもの、アイトにとっては考える必要もなかったのだろう。
アイトは即答した。
「僕は、お嬢様が好きです。ずっと一緒にいたいと思っています」
アイトのその言葉に、満面の笑みを浮かべたレベッカは、アイトに抱き着いた。
アイトもそれを容認し、レベッカを抱き締めた。
アイトは胸の中で抱き締められている主を見て安堵する。
ステラが死んで、情緒不安定だったレベッカの心が元に戻って。
ステラのことはアイトも覚えている。だから、ステラのことを知った時は残念に思ったが。
今は、レベッカが笑顔ならば、それでよかった。
「うぅ………」
レベッカは現在、ベッドでうつ伏せ状態になりながら、足をパタパタと動かしている。
ステラには悪いと思いながらも、どうしても羞恥と歓喜の感情がレベッカの中を駆け巡る。
「不意打ちなんて、狡い………」
確かにアイトはカッコイイし、頼りになる。レベッカもアイトのことは凄く頼りにしていた。
だけど、レベッカの中では、アイトとは壁を作っていた。
執事と、貴族令嬢。レベッカは自分が貴族令嬢と言えるかの疑問もあったが、それはそれとして、アイトとの距離を少しでも作るために、そういった壁を作っていた。
だが、今回の事件。レベッカはレベッカとして動いた。そしてステラを失った。その悲しみをアイトは突いてきたのだ。
人によっては、狡いと言うだろう。
卑怯だと言うだろう。弱った女の子の心に入り込むような真似をしたのだから。
だが、アイトからそのようなことをされては、もうレベッカは自分の心を偽れなかった。
「私は、アイトのことが、好き………」
それを口にして、レベッカはまた羞恥で顔を真っ赤にした。
「うぅ………想像以上に恥ずかしい………」
誰も聞いていないとはいえ、それを口にするには勇気がいる。
「今の私を見たら、ステラはどう思うかな?」
裏切り者と、罵るだろうか。
人の犠牲の上で生きておいて、幸せになるなと、そう言っただろうか。
それとも、祝福してくれただろうか。
わからない。レベッカは、本当のステラがまだわからなかった。だけど、レベッカは死んだステラの分まで生きようとは思ってない。
死者は死者だ。生者は生者。生者が死者を思い、死者の分まで生きよう考えるのは傲慢だろう。
「~ならきっとこうしてくれる」なんて憶測もしない。だけど、
「祝ってくれたら、嬉しいな………」
もしかしたらステラは天国に行けたかもしれない。
現実世界で、最後は散々だったぶん、ステラには天国に赴いてほしいと思うし、来世では幸せになって欲しいと、ほんのりと願う。
「お嬢様。入りますよ」
と、そのタイミングでアイトが扉をノックして入ってきた。
「どうですか?もう気分は治りましたか?」
レベッカがアイトにキスをされて、ここまで動揺してるのに、キスをした張本人であるアイトは一切動揺していない。
「ねぇ、アイト。アイトって、キスし慣れてるの?」
もしキス慣れしてるならば、色々と思うところはあるが、動揺していない理由にも納得だ。
「いえ。僕も初めてでしたが」
だが、アイトもファーストキスだとほざいた。
「じゃあ、なんでそんなに冷静なの!?」
初めてなのに、2人でこんなに差がでるなんて。理不尽だ。
「お嬢様は、僕に動揺してほしいのですか?」
「そうじゃなくて、私だけ恥ずかしがってるのは嫌なの!」
アイトに向かってそう叫ぶと、レベッカは寝転がっていたベッドから降りて、立ち上がった。
「お嬢様?なぜ、こちらにゆっくりと近づいて来るのですか?」
「なぜって?アイトなら、わかるよね?」
レベッカはゆっくりとアイトに近づくと、今度は真正面からアイトの唇を奪った。
身長差故にレベッカが背伸びをして、アイトの顔も手を使って無理矢理近づけてするようなキスだったが、それでもレベッカは幸福感に満たされた。
少しだけ唇が重なり、2人の顔が離れる。
「ねぇ、アイト。私は、アイトのことが好き」
レベッカの突然の告白に、アイトはなにも言わなかった。
「ねぇ、アイトは?アイトは私のこと、好きじゃない?」
「好きですよ」
そんなもの、アイトにとっては考える必要もなかったのだろう。
アイトは即答した。
「僕は、お嬢様が好きです。ずっと一緒にいたいと思っています」
アイトのその言葉に、満面の笑みを浮かべたレベッカは、アイトに抱き着いた。
アイトもそれを容認し、レベッカを抱き締めた。
アイトは胸の中で抱き締められている主を見て安堵する。
ステラが死んで、情緒不安定だったレベッカの心が元に戻って。
ステラのことはアイトも覚えている。だから、ステラのことを知った時は残念に思ったが。
今は、レベッカが笑顔ならば、それでよかった。
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