家族に疎まれて、醜穢令嬢として名を馳せましたが、信用出来る執事がいるので大丈夫です

花野拓海

文字の大きさ
27 / 111
二章  しかし、概して人々が運命と呼ぶものは、大半が自分の愚行にすぎない。

修学旅行にまで制服で来る人は控えめに言って頭おかしいと思う

しおりを挟む
 服を見る。
 屋敷からの外出が許可されたことのないレベッカからすると、それは初めての経験であった。
 そして、16歳にして初めてオシャレを経験しようとしているレベッカだったが、

(全然わかんない………)

 なにをどうすればいいのか全くわからなかった。

 自分がどんな色のどんな服が似合うのか全くわからないのだ。

「アイトならすぐわかるんだと思うけど………」

 自分のことなのにわからない。それがどうしようもなく情けなく思えてしまう。

「うーん。これ、どうだろ?」

 レベッカの手に持っているのは黒のスカートに白のYシャツ。

「お嬢様、気に入るものがありましたか?」

 と、別の場所で見ていたアイトがレベッカの元にやってきた。

「あっアイト………」

 レベッカが不安そうな目でアイトを見たことにより、アイトは凡そを理解した。
 アイトは何も言わずにレベッカの持っていた服を見ると、

「いいと思いますが、この服も合わせてみてください」

 アイトはそう言うと、クリーム色のベストを取ってきた。

「ベスト、ですか」

「はい。これならよりよくなると思います」

 更にアイトは別の服も持ってきた。

「そのスカートは膝上までしかないので、このタイツもはきましょう。あとはこの青色の上着なんてどうでしょうか」

 ついでに白いベール帽も持って試着室で着替える。

「ど、どうかな?」

 試着室から出たレベッカはアイトと、なぜか近くに来ていた店員に聞いてみる。

「すごく似合ってますよ。レベッカ」

「はい。お客様にピッタリです」

 そう言われると嬉しくなるが、これを選んだのはほとんどアイトだ。

「ではこれ全部お願いします」

 やめようか悩んでいたレベッカを置いて、アイトは購入を決めてしまった。

「え!?ちょ、ちょっと………」

「わかりました。料金の方は?」

「こちらで」

 レベッカが止める間もなく、アイトは支払いを終わらせてしまった。

「ね、ねぇアイト。本当に良かったの?」

「?お金の心配は………」

「そうじゃなくて」

 買ってくれるのは素直に嬉しいのだ。アイトが似合うと言ってくれた服だ。嫌なはずがない。
 だが、自分で選んだ服を着てみたいという思いもあったし、アイトばかりのコーディネートも飽きたのではないだろうかと考えていたのだ。
 アイトはすぐにその答えを導き出して「ああ、」と頷いた。

「これは別に僕が選んだ服ではありませんよ」

「え?で、でも」

「これは、はじめからレベッカが目をつけていた服ですから」

 レベッカは一瞬呆気にとられた。
 見ていたのだ、ずっと。アイトはレベッカがどんな服を選ぶのか。

「自分には似合わないと判断してすぐに切り捨てていた組み合わせです。最後には簡素な組み合わせを選んだので、追加で組み合わせやすかったです」

 本当に、全部見ててくれてたのだ。

「ありがとう」

「はい」

 そうしてレベッカは再度着替えるために試着室へ向かおうとして

「すみません。着て帰ります」

 アイトがレベッカの考えとは別の答えをだした。

「え!?でも………」

「せっかくなので、ここからはレベッカが選んだ服で一緒にいてほしいです」

 そんなことを言われると、もうなにも言えないじゃないか。アイトはレベッカが断れないことをわかって言っている。

「じゃ、じゃあ………」

 アイトに買ってもらったネックレスをかけて、2人は手を繋いで店から出た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さくら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...