家族に疎まれて、醜穢令嬢として名を馳せましたが、信用出来る執事がいるので大丈夫です

花野拓海

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二章  しかし、概して人々が運命と呼ぶものは、大半が自分の愚行にすぎない。

ぶっちゃけ第一印象だけでその人のことを理解しようとするのって、浅はかじゃない?

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 ナイル・フーラ。そう名乗った令息は、レベッカに手を差し出していた。

「あ、えっと、私はレベッカ・ルーズです」

 レベッカも自己紹介をしながらその手を掴む。
 レベッカが手を掴んだ瞬間、ナイルはニコリと笑った。

「えっと、そんなに自己紹介変、でしたか?」

「いいや。でも、少し驚いたな」

 ナイルは驚いたと言うが、レベッカには、驚かれる心当たりはなかった。

「えっと、驚かれるようなこと私………」

「いいや。君はなにもしていないよ。でも、噂と違いすぎたのでね」

 レベッカに関する噂。レベッカ自身はそれを聞いたことはないので知らなかったのだが、不幸を呼ぶ傲岸不遜な醜穢令嬢という噂が流れていると、先程執事から聞いたばかり。それならば覚えていた。

「その噂って………」

 認識の齟齬があったらいけないので確認をしようとすると、

「どうぞ。welcomeドリンクです」

 お城の使用人が、ドリンクを持ってきてくれた。

「どうも」

 ナイルはそう言って、当たり前のように取ったが、レベッカからしてみると、本当に取っていいのかわからなかった。

「とって、いいのですか?」

「え?もちろんですよ。お好きなドリンクをどうぞ」

 勧められたので、レベッカは少し遠慮しながら適当にドリンクを取った。

「ごゆっくり~」

 使用人はそう言って、残りのドリンクを持って違う令嬢、令息の元に向かって行った。

「慣れてなかったみたいだけど、ルーズ家のお嬢様は、こういう場はあまり来たことないのかな?」

「え、はい。そうなんです。こういった場も、私は今回がはじめてなんですよ」

 はじめての他の貴族の子との会話を成立させれていることに、レベッカは安堵を覚える。

「それで、私に関する噂って?」

「あれ?知らないのかい?」

 ナイルは意外そうな表情をするが、それも仕方がないものだ。

「はい。私、今まで外にあまり出たことがなくて………」

 それを言うと、ナイルは頷きたがら教えてくれた。

「まあ、君に関する噂はいいものではないね。悪魔の子の生まれ変わりや、ルーズ家の恥晒しなどと言われてたよ」

 確かに、それは聞いていて気持ちがいいものではなかった。

「傲岸不遜で自分勝手。なにもかも自分の思い通りにならないと気がすまない。極度のメディア嫌いで、自ら引きこもり運命の相手が迎えに来ることを夢見ている薄汚れた灰かぶり姫、とも呼ばれてるね」

 散々ないいようだった。

「そんなに、言われてたんですね」

「はい。なのであなたの名前を聞いた時は驚いたよ。話し方も、容姿も、態度も噂と全然違うかったからね」

 ナイルは周囲を見渡す。

「見てみなよ。きっと、周りの人に聞いても、君を醜穢令嬢だなんて思う人は誰もいないよ」

 あとから来た令息の中でも、婚約を結んでいなかったり、他に仲のいい令嬢がいない人は、そのほとんどがレベッカに注目している。

「もしかして、私って悪目立ちしてますか?」

「んー?まあ他の令嬢からしてみれば面白くないかもね。でも、男からしてみれば、君ほどの綺麗な人を放っておくなんて無理な話かもしれないけどね」

 そう言いながらウインクしてきたナイルにレベッカが思ったことはただ一つ。

(もしかして、ナンパされてる!?)
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