家族に疎まれて、醜穢令嬢として名を馳せましたが、信用出来る執事がいるので大丈夫です

3章 逆境は真実へと至る最初の道筋である。

夏に結局プール行かなかったんだよね。誘ってくれる子もいなかったし

　ナイルとチノ＆レベッカはそれぞれ別の馬車で水着に着替えて、遊んでいた。ビーチバレーで。

「それ～」

　チノが打ち上げたボールをナイルがレシーブでレベッカにパスをする。

「えいっ」

　そう言いながらレベッカはトスでチノにパスをする。
　なぜ、基本的なプレイをしないのかは、三人しかいないが故の弊害とも言える。3コートにわけても、なにがなんだかわからず、レベッカvs.チノ＆ナイルにしても、レベッカの動体視力で全て捌かれるのだ。

　ちなみにボールもレベッカが注文してた。

「うーん………」

　チノは悩んでるような声を出しながら飛んでくるボールをジャンプしてからアタックでナイルに飛ばす。

「うわっ！いきなりアタック！？」

　びっくりしたナイルの横をボールは通り過ぎていく。

「わ！ごめんね」

　チノは謝りながらボールを取りに行く。

「もしかして、ビーチバレー飽きちゃったかな」

　だが、スイカ割りがここにあるはずもなく、あとは海の中で遊ぶしかないのだ。

「そういえば、一度も海に入ってないな」

「そうだよね。少しは海に入りたいよね」

　ここにいる三人は海に入ったことは無い。だからどんなものか知らず、興味もある。

「でも、海にはクラゲっていう有毒の生物もいるって聞いたことあるよ」

　ボールを回収し、戻ってきたチノがそう助言する。

「え～？」

　まさかの海に潜む脅威。レベッカは少し残念そうな声を出す。

「一掃できたらいいんだけどね」

「一掃………」

　ナイルの言葉に、レベッカは少し考えると、右手を空に向けた。

「えっと？フィアラ、なにをするの？」

　なんとなく予想しながらも、チノが聞くと、

「え？だから、一掃するの」

　一掃。つまり、クラゲを全滅させるということ。

「さすがに脳筋すぎるな………」

「そんなこと言ってないで、ナイルさんも一緒に止めないと！」

　さすがに海の生態系を無闇に破壊するわけにはいかないと理解しているチノが止めようとするも。

「取り敢えず、氷結槍アイシクル・ランス×100」

　天から降り注ぐ氷結の槍がクラゲを殲滅し尽くした。

「うわぁ～………」

　その光景にチノは絶句している。普段は優しくて、綺麗なパフォーマンスをするレベッカが、アッサリと殲滅する光景が衝撃的だったのだろう。

「よしっ！」

　だが、レベッカを見ると、得意げな表情をしているので何も言えない。

「これって、毒が溢れ出てないのかな？」

　チノの不安要素はそれだけだった。
　結局、レベッカとチノの魔法でクラゲを冲に無理矢理流し、レベッカとナイルの魔法で解毒してから遊ぶことになった。

　三人で水を掛け合ったり、レベッカが用意していた浮き輪で浮かんだり、またまたレベッカが用意していた食材と鉄板焼きで焼きそばを作ったりしていると、夕日が沈んできた。

「終わりだね………」

　チノが感慨深そうに夕日を見ながら言う。

「そうだね………」

　ナイルもまた、名残惜しそうにしている。

「………」

　レベッカはポーションを飲みながら2人と一緒に夕日を見ていた。

「どうなるかと思ってたけど、楽しかったよ、フィアラ」

「そうだね。僕も想像以上に楽しめたよ。誘ってくれてありがとう。レベッカさん」

　そうして、二人はレベッカを見て、そこではじめてレベッカがなにかを飲んでるのに気がついた。

「フィアラ、一応聞くけど、それ何？」

　チノが指さした物を、レベッカは口を離しながら言う。

「え？マナポーションだよ？」

　魔力が少ない魔導師やパフォーマーの必需品であるマナポーションをレベッカは飲んでいた。

　よく見ると、レベッカの創り出した太陽は、輝きこそ失っているが、その熱は保たれたままだった。

「二人とも、海はまだ終わってないよ！」

　レベッカはそう言うと、馬車の中に1度戻り、新たに食材を出てきた。
　そして焼きそばを作って、そのまま浜辺に置いていた鉄板焼きの上部分を外し、網にする。

「二人とも！BBQしよ！」

　心の底から楽しそうな表情をするレベッカを見ると、二人ともどうしても断りきれなかった。

「しょうがないね」

「そうだね。ここはレベッカさんと一緒に楽しもうか」

　そのまま三人でBBQを楽しみ、馬車に乗って帰る。
　帰りの馬車の中で、三人は気持ち良さそうに眠っていた。