家族に疎まれて、醜穢令嬢として名を馳せましたが、信用出来る執事がいるので大丈夫です

花野拓海

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3章 逆境は真実へと至る最初の道筋である。

朝ってなんでこんなに眠いんだろうね。もっと眠っていたいな

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 青い空。白い砂浜。輝く太陽。そんな謳い文句が出てくる場所は、一つしかない。

「海だー!」

 レベッカは今、海に来ていた。

「そんなにはしゃがないでよ。フィアラ」

 チノも一緒に。

「だってだって、海ってはじめてだもん」

「まあ、国の端っこまで行かないとないもんね」

「そうそう!だから遊ばないと損だよ!」

 そんな事を話している二人の元に近づく人物がいた。

「2人とも、そんなに急がないでください。海は逃げませんよ」

 そんなことを言いながら二人に近付いてくるのはナイルだった。

「ナイルは楽しみじゃなかったの?」

「楽しみでしたよ。でも、今から急いでも体力が持たないなと思いまして」

 そんな弱音を吐くナイル。なぜナイルがいるのか。それはもちろんレベッカが誘ったからだ。

「二人は疲れてないんですか?パフォーマンスが終わって、睡眠をとったらすぐに馬車で向かいましたよね?」

「私は少し前に怒涛の展開があったから慣れちゃった」

 レベッカはそう返すが、チノはまだ少し欠伸している。

「私は、フィアラほど元気じゃないけど、疲れはそこまで残ってないかな。パフォーマーって、忙しい時はとことん忙しいし」

 レベッカは、二ヶ月前からの生活に、チノはパフォーマー生活故に。疲れはさほど残ってないのだ。

「ナイルさんは疲れちゃった?」

「本音を言うと少し。でも、レベッカさんに誘われたのですから、お供しますよ」

 ナイルがそう言うと、レベッカは少し不服そうな表情を見せた。

「もう、フィアラはそんな付き従うような言い方は嫌いなの。もっと本心から楽しんでもらわないと」

 チノに言われて、ナイルははっとする。先程の言葉は、まるでナイルが嫌々来たみたいになってしまった。

「そうですね。自分の過ちに気が付きました。ありがとうございましす。リリルナ様」

「ちょっと、リリルナ様はやめて。チノでいいよ」

「では、チノ様」

「敬称も敬語もいらない。わかった?今まで接点がなかったとしても、今はフィアラの共通の友人。でしょ?」

 そう言われても、ナイルは少し困ってしまう。ナイルはレベッカの友人とは言い難い立場だからだ。
 正直、今回誘われたのも前回レベッカが協力申請したにも関わらず、拒絶し、罵倒し、殺意を向けたからだと思っている。

「なにを悩んでるのかだいたいわかるけど、フィアラはそんなくだらない理由で誰かを誘ったりしないよ」

「そう、ですね。わかった。じゃあ、よろしくねチノさん」

「うん。よろしくね、ナイル」

 二人は握手をした。

「レベッカさんもすみません」

「ううん。いいの。私が悪いことには変わりないんだから」

 三人の親睦を深めたところで、

「じゃあ、遊ぼっか!」

 レベッカは二人にそう言った。

「海に来た時点で遊ぶことは予想出来たけど、気温はどうするの?暑い程じゃないから入ったら寒いと思うけど………」

「それは任せて!」

 チノの懸念に、レベッカは笑顔で対処した。天に手を向け、

「えいっ!」

 魔力を放出することにより、人工太陽を創り出し、一帯の気温を引き上げた。

「どう?これなら大丈夫だよ!」

 これなら大丈夫だが、これではいずれレベッカの魔力が尽きてしまう。

「レベッカさん、魔力は大丈夫なのかい?」

「それは大丈夫。私の魔力なら自然回復も併せれば夜までもつから」

 かつてアイトから魔力バカとまで称されたレベッカの魔力は、この程度で尽きることは無い。

「でも、水着は………?」

 そう、遊びに来たものの、水着を用意していないのだ。なぜ海に行くのに水着を用意していなかったのか。
 それは、予定の全てはレベッカに任せており、二人がどこに行くのか聞かされたのは馬車の中のことだったからだ。

「それも任せて」

 すると、そのタイミングで新たな馬車が到着した。

「あれって………」

 来た馬車は、リリルナ家の馬車だった。

「あ!ありがとう!」

 レベッカは馬車の行者にお礼を言いながら中に入り、荷物を取り出した。

「はい。私が魔法で二人のサイズを測って注文した水着だよ!」

 用意周到とはこのことだろう。事前に報告を済ませれば、よかったものを。レベッカはサプライズにすることにより、ここまで準備をしていたのだ。

「フィアラ、やる気満々だね」

「レベッカさんがここまでするだなんて………」

 ナイルにとっては予想外であり、チノからしてみれば短い時間とはいえ関わってきたレベッカの変わりように動揺を隠せなかった。

「折角遊ぶんだから、めいいっぱい遊ばないとね!」

 こうして、奇妙な三人組による一日が幕を上げた。
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