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午下の雷
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その日、漆黒アイリスは突然の雷雨に見舞われていた。外地任務から久々に屋敷に戻った元帥閣下は、美しい新妻を傍らに、書斎で執務机に向かっていた。
ダグリード侯爵家を示す蔓薔薇の縁取りが箔押しされた便箋に、羽根筆を走らせる。一切迷うことなく書き上げて署名も済ませると、机の上に筆を置いた。次に、彼は便箋を丸めて書簡筒に仕舞い、別の引き出しから真鍮製の印章と小匙、紫色の染料が練り込まれた封蝋を取り出す。
机の端に置いていたグラスキャンドルを引き寄せ、その炎に翳した真鍮の匙の上で封蝋を溶かすと、書簡筒の上に垂らした。ある程度固まるのを見計らって印章を押しつければ、紫色の蝋の上には蔓薔薇の紋章が刻まれていた。すべての作業が完了するまでの間は、一刻にも満たなかった。
副官時代から見慣れていた姿だったが、一切無駄のない彼の所作に、ブルーデンスは見惚れてしまう。当時からフォーサイスは、事務仕事をまるで親の敵のように嫌っていた。それでも一度手をつけると、途中で集中力を切らさずに、恐るべき勢いで片付けてしまうのだ。
「……っ、やっと終わった」
溜め息を吐くようにキャンドルの炎を吹き消したフォーサイスは、膨大な書類に向けていた視線をようやくブルーデンスに移す。突然の雷雨のためにいつもより室内は薄暗かったが、雷雲に隠された日はまだ高い。見上げる漆黒の双眸は彼女の姿を映すと、本当に嬉しそうに微笑む。
愛されている幸せを噛み締めながら、ブルーデンスも微笑み返したのだが……
「フォーサイス様っ……?」
次の瞬間、無防備な細腰を強引に引き寄せられ、大きく体勢を崩してしまう。無意識に抗おうと足を突っ張るも、ヒールの踵を机の脚にぶつけ、あっと言う間に彼女の身体は、夫の膝の上で横抱きにされていた。
「もう限界だ」
呆気にとられた彼女の頬を、吐き出された吐息が撫でる。ブルーデンスには突然の拘束と、フォーサイスの台詞の意味がまったく理解できなかった……というよりも、鼻先が触れ合うほどの至近距離に迫った彼の顔に、上手く思考力が働かない。
半年前の内乱時にゴーテクスに付けられた傷跡を気にしているのか、最近の彼は、時折、前髪を下ろすようになっていた。前髪の向こうから、昼日中には不釣り合いな感情を見つけた気がして、心臓が跳ねる。
「戯れもほどほどにっ……!」
それでも、さきほどまで羽根筆を操っていた指が肩から肩甲骨の稜線をなぞり始めると、ハッと我に返って抗議の声を上げた。
互いの指を絡め合うように利き手を握り込まれ、両足が地に着かない不自然な体勢では、ろくに抵抗もできない。二人の間に少しの隙間も許さないというように、フォーサイスはもう一方の腕で、自分の腰をガッチリと抱き込んでいた。
「もう十日もお前に触れていない……これでは、何のために現場を退いたのかわからん」
反射的に仰け反ったみずからの首筋に鼻先を埋め、フォーサイスはぼやくように言った。その声は、まるで拗ねた子供のようだ。確かに彼の言う通り、最後に二人で眠ったのは、十日前のこと……フォーサイスは元帥を拝命し、騎士団の現場を退いてからというもの、長く屋敷を空けることがなくなっていた。
しかし、魔法王国ガルシュで新設された魔導研究所の竣工式にサザールとともに招かれた彼は、昨日までアイリスにいなかった。一人の夜を迎えるごとに、ブルーデンスは時間の許す限りそばにいてくれ、触れてほしいと思う前に我が身を抱き締めてくれていたことが、どれだけ贅沢なことだったかを実感した。
「もう一人寝はうんざりだ……ブルーデンス、お前はどうだ?」
伏せた顔を上げ、フォーサイスはそう尋ねてくる。まるで心の中を読んだような問いかけに、ドキリとした。
けれど、そのまま顔を寄せられると、ブルーデンスはまた反射的に逃げを打ってしてしまう。昼下がりの執務机という状況が、彼女を立ち止まらせていた。そんなみずからの反応に機嫌を損ねたらしく、フォーサイスの眉間には微細な皺が寄る。銀色の双眸を探るように見つめる漆黒のそれも、唇に触れる吐息も、惜しみなく劣情を伝えていた。
「……私も、寂しかったです」
ブルーデンスには、震える小さな声でそれだけ伝えるのが精いっぱいだった。
「もうそんな思いはさせない」
それでも、十分に満足そうな笑いを含んだ言葉が、吐息とともに唇を舐める。身悶えするような恥ずかしさとわずかばかりの期待感が、ブルーデンスを瞼の下の闇の中に逃げ込ませるが……
「その続きは、夜の帳が下りてからにしていただけますでしょうか……旦那様、奥方様」
直後、ここにいるはずのない老執事の声が耳朶を打ち、羞恥心ごと身体が凍りつく。
「イーノック、お前っ……?」
「扉も叩きましたし、お声もおかけしました。今日、この刻限にヘザースの上半期の収支決算報告書をお持ちすることは、前々からお伝えしていたはずですが?」
フォーサイスの上擦った呼号に続くことさら淡々とした声に、ブルーデンスが恐々瞼を引き上げると、居間から続く戸口に、分厚い書類の束を手にして立つ彼の姿が見えた。窓の外を走った稲光が、彼のモノクルに反射する。奥の左目は義眼であるはずなのに、二人を見据えるその双眸には尋常でない威圧感があり、雷鳴に怯える子供のように、ブルーデンスは咄嗟にフォーサイスに縋りついた。
かつて、まだフォーサイスに正体を隠していた婚約中にヘザースを訪れた際、ダグリードに弓引くなら排除する、と告げられたときに匹敵する気迫を孕んだイーノックの眼差しに、無意識に両手に力が籠もる。
その手が覚えた感触で、今自分が彼の膝の上に座り、その首に腕を回していたことを思い出した。真っ昼間の執務机での破廉恥極まりない姿に、礼儀に厳しい老執事がここまで怒るのも無理はない……ブルーデンスは今さらながら、無理矢理立ち上がろうとした。
「きゃっ……」
しかし、焦りから向こう脛を椅子の脚にしたたかぶつけ、床の上で派手に尻餅をついてしまう。恥ずかしいやら痛いやらで、すぐには立ち上がれなかった。
「大丈夫かっ、ブルーデンス……!」
「奥方様」
慌てて腕を伸ばしてきたフォーサイスの気遣う声を、反対側からしたイーノックの呼号が遮る。
「痣になっては大変です。チュイニーに氷を用意させましょう、早く手当てを」
いつの間にか傍らにきて、膝をついていた彼は、ぶつけた患部を見ることなくブルーデンスにそう言った。何人たりとも抗うことが許されないというような口調は、暗に部屋から出て行けと告げていることがわかる。
「待て、俺が運っ……」
「フォーサイス様はこちらの報告書に目を通し、一刻も早く承認を。この後、私はマコモ苗の買い付けに行かねばなりません……それも、お伝えしていたはずですが? 折からの雨で、時間も押しております」
立ち上がり、侍女を呼びに行こうとしたイーノックを呼び止めようとしたフォーサイスだったが、老執事は逆に彼から二の句を奪う。
「あ、あのっ……大丈夫です、一人で歩けますので!」
二人の間に入るようにそう口を開きながら、ブルーデンスは慌てて立ち上がった。
「自室に戻って、治療してまいります」
そこまで大騒ぎするような怪我ではない。イーノックが言った通り、すぐに氷で冷やせば腫れもしないだろう。ただ、衣装がますます薄くなるこの時期、ペティコートの裾が翻ったときに見えるかもしれない部位に青痣があっては、フォーサイスの評判を落とす。
口さがない人達に限って、砂漠の中からたった一粒の小麦を見つける術に長けている。社交の場では、ダグリード侯爵夫人として頭の先から爪先まで気が抜けないのだ。
「今日はそのまま、お静かに過ごされるのがよろしいでしょう」
「はい、イーノック。ダグリード侯爵夫人にあるまじき醜態を晒してしまい、申し訳ありませんでした」
さきほどのこともあり、ブルーデンスは一層の慎み深さを心掛けて二人に一礼した。下げた頭を上げたとき、フォーサイスと眼が合ったが、窓の外の雷雲よりもどんよりと暗かった。きっとこの後、彼はイーノックからこってりと絞られるのだろう。自分だけ逃げるような真似はしたくなかったが、下手に居残れば老執事の怒りの火に油を注ぐことにもなりかねない。
フォーサイスもそのことをわかっているのか、引き止めるような言葉も、どうにか取り繕おうとする言い訳も発さなかった。そんなものが通用しないことは、生まれる前からの付き合いである彼の方が身に染みてわかっているのだ。
今後、二人きりのときでも気を抜くまい。寝室以外では、みだりに彼を誘うような言動はせず、嫉妬も控えよう。
後ろ髪引かれる思いで身を翻したブルーデンスは、そんな風に決意を固めるが、正直なところ、二つ目の決意は今から守ることができるか自信がなかった。
ダグリード侯爵家を示す蔓薔薇の縁取りが箔押しされた便箋に、羽根筆を走らせる。一切迷うことなく書き上げて署名も済ませると、机の上に筆を置いた。次に、彼は便箋を丸めて書簡筒に仕舞い、別の引き出しから真鍮製の印章と小匙、紫色の染料が練り込まれた封蝋を取り出す。
机の端に置いていたグラスキャンドルを引き寄せ、その炎に翳した真鍮の匙の上で封蝋を溶かすと、書簡筒の上に垂らした。ある程度固まるのを見計らって印章を押しつければ、紫色の蝋の上には蔓薔薇の紋章が刻まれていた。すべての作業が完了するまでの間は、一刻にも満たなかった。
副官時代から見慣れていた姿だったが、一切無駄のない彼の所作に、ブルーデンスは見惚れてしまう。当時からフォーサイスは、事務仕事をまるで親の敵のように嫌っていた。それでも一度手をつけると、途中で集中力を切らさずに、恐るべき勢いで片付けてしまうのだ。
「……っ、やっと終わった」
溜め息を吐くようにキャンドルの炎を吹き消したフォーサイスは、膨大な書類に向けていた視線をようやくブルーデンスに移す。突然の雷雨のためにいつもより室内は薄暗かったが、雷雲に隠された日はまだ高い。見上げる漆黒の双眸は彼女の姿を映すと、本当に嬉しそうに微笑む。
愛されている幸せを噛み締めながら、ブルーデンスも微笑み返したのだが……
「フォーサイス様っ……?」
次の瞬間、無防備な細腰を強引に引き寄せられ、大きく体勢を崩してしまう。無意識に抗おうと足を突っ張るも、ヒールの踵を机の脚にぶつけ、あっと言う間に彼女の身体は、夫の膝の上で横抱きにされていた。
「もう限界だ」
呆気にとられた彼女の頬を、吐き出された吐息が撫でる。ブルーデンスには突然の拘束と、フォーサイスの台詞の意味がまったく理解できなかった……というよりも、鼻先が触れ合うほどの至近距離に迫った彼の顔に、上手く思考力が働かない。
半年前の内乱時にゴーテクスに付けられた傷跡を気にしているのか、最近の彼は、時折、前髪を下ろすようになっていた。前髪の向こうから、昼日中には不釣り合いな感情を見つけた気がして、心臓が跳ねる。
「戯れもほどほどにっ……!」
それでも、さきほどまで羽根筆を操っていた指が肩から肩甲骨の稜線をなぞり始めると、ハッと我に返って抗議の声を上げた。
互いの指を絡め合うように利き手を握り込まれ、両足が地に着かない不自然な体勢では、ろくに抵抗もできない。二人の間に少しの隙間も許さないというように、フォーサイスはもう一方の腕で、自分の腰をガッチリと抱き込んでいた。
「もう十日もお前に触れていない……これでは、何のために現場を退いたのかわからん」
反射的に仰け反ったみずからの首筋に鼻先を埋め、フォーサイスはぼやくように言った。その声は、まるで拗ねた子供のようだ。確かに彼の言う通り、最後に二人で眠ったのは、十日前のこと……フォーサイスは元帥を拝命し、騎士団の現場を退いてからというもの、長く屋敷を空けることがなくなっていた。
しかし、魔法王国ガルシュで新設された魔導研究所の竣工式にサザールとともに招かれた彼は、昨日までアイリスにいなかった。一人の夜を迎えるごとに、ブルーデンスは時間の許す限りそばにいてくれ、触れてほしいと思う前に我が身を抱き締めてくれていたことが、どれだけ贅沢なことだったかを実感した。
「もう一人寝はうんざりだ……ブルーデンス、お前はどうだ?」
伏せた顔を上げ、フォーサイスはそう尋ねてくる。まるで心の中を読んだような問いかけに、ドキリとした。
けれど、そのまま顔を寄せられると、ブルーデンスはまた反射的に逃げを打ってしてしまう。昼下がりの執務机という状況が、彼女を立ち止まらせていた。そんなみずからの反応に機嫌を損ねたらしく、フォーサイスの眉間には微細な皺が寄る。銀色の双眸を探るように見つめる漆黒のそれも、唇に触れる吐息も、惜しみなく劣情を伝えていた。
「……私も、寂しかったです」
ブルーデンスには、震える小さな声でそれだけ伝えるのが精いっぱいだった。
「もうそんな思いはさせない」
それでも、十分に満足そうな笑いを含んだ言葉が、吐息とともに唇を舐める。身悶えするような恥ずかしさとわずかばかりの期待感が、ブルーデンスを瞼の下の闇の中に逃げ込ませるが……
「その続きは、夜の帳が下りてからにしていただけますでしょうか……旦那様、奥方様」
直後、ここにいるはずのない老執事の声が耳朶を打ち、羞恥心ごと身体が凍りつく。
「イーノック、お前っ……?」
「扉も叩きましたし、お声もおかけしました。今日、この刻限にヘザースの上半期の収支決算報告書をお持ちすることは、前々からお伝えしていたはずですが?」
フォーサイスの上擦った呼号に続くことさら淡々とした声に、ブルーデンスが恐々瞼を引き上げると、居間から続く戸口に、分厚い書類の束を手にして立つ彼の姿が見えた。窓の外を走った稲光が、彼のモノクルに反射する。奥の左目は義眼であるはずなのに、二人を見据えるその双眸には尋常でない威圧感があり、雷鳴に怯える子供のように、ブルーデンスは咄嗟にフォーサイスに縋りついた。
かつて、まだフォーサイスに正体を隠していた婚約中にヘザースを訪れた際、ダグリードに弓引くなら排除する、と告げられたときに匹敵する気迫を孕んだイーノックの眼差しに、無意識に両手に力が籠もる。
その手が覚えた感触で、今自分が彼の膝の上に座り、その首に腕を回していたことを思い出した。真っ昼間の執務机での破廉恥極まりない姿に、礼儀に厳しい老執事がここまで怒るのも無理はない……ブルーデンスは今さらながら、無理矢理立ち上がろうとした。
「きゃっ……」
しかし、焦りから向こう脛を椅子の脚にしたたかぶつけ、床の上で派手に尻餅をついてしまう。恥ずかしいやら痛いやらで、すぐには立ち上がれなかった。
「大丈夫かっ、ブルーデンス……!」
「奥方様」
慌てて腕を伸ばしてきたフォーサイスの気遣う声を、反対側からしたイーノックの呼号が遮る。
「痣になっては大変です。チュイニーに氷を用意させましょう、早く手当てを」
いつの間にか傍らにきて、膝をついていた彼は、ぶつけた患部を見ることなくブルーデンスにそう言った。何人たりとも抗うことが許されないというような口調は、暗に部屋から出て行けと告げていることがわかる。
「待て、俺が運っ……」
「フォーサイス様はこちらの報告書に目を通し、一刻も早く承認を。この後、私はマコモ苗の買い付けに行かねばなりません……それも、お伝えしていたはずですが? 折からの雨で、時間も押しております」
立ち上がり、侍女を呼びに行こうとしたイーノックを呼び止めようとしたフォーサイスだったが、老執事は逆に彼から二の句を奪う。
「あ、あのっ……大丈夫です、一人で歩けますので!」
二人の間に入るようにそう口を開きながら、ブルーデンスは慌てて立ち上がった。
「自室に戻って、治療してまいります」
そこまで大騒ぎするような怪我ではない。イーノックが言った通り、すぐに氷で冷やせば腫れもしないだろう。ただ、衣装がますます薄くなるこの時期、ペティコートの裾が翻ったときに見えるかもしれない部位に青痣があっては、フォーサイスの評判を落とす。
口さがない人達に限って、砂漠の中からたった一粒の小麦を見つける術に長けている。社交の場では、ダグリード侯爵夫人として頭の先から爪先まで気が抜けないのだ。
「今日はそのまま、お静かに過ごされるのがよろしいでしょう」
「はい、イーノック。ダグリード侯爵夫人にあるまじき醜態を晒してしまい、申し訳ありませんでした」
さきほどのこともあり、ブルーデンスは一層の慎み深さを心掛けて二人に一礼した。下げた頭を上げたとき、フォーサイスと眼が合ったが、窓の外の雷雲よりもどんよりと暗かった。きっとこの後、彼はイーノックからこってりと絞られるのだろう。自分だけ逃げるような真似はしたくなかったが、下手に居残れば老執事の怒りの火に油を注ぐことにもなりかねない。
フォーサイスもそのことをわかっているのか、引き止めるような言葉も、どうにか取り繕おうとする言い訳も発さなかった。そんなものが通用しないことは、生まれる前からの付き合いである彼の方が身に染みてわかっているのだ。
今後、二人きりのときでも気を抜くまい。寝室以外では、みだりに彼を誘うような言動はせず、嫉妬も控えよう。
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