至急、君との交際を望む

小田マキ

文字の大きさ
10 / 15

10

しおりを挟む
 ミュラーリヤ第三弓騎兵隊隊長であるクラリス・ヴィアッカは、ミー・ガンの掟により、ザッカー・クワン家令嬢クロエスドイルと干戈を交えることとなった。
 今でこそ至極論理的な人種に思われているサリュート人だったが、太古の祖先は卓越した身体能力に見合った非常に好戦的な民族であったらしい。その血の気の多さから同族間でも諍いが絶えず、絶滅の危機に陥った程に。
 そんな彼らの転換期となったのが、サリュートを突如襲った氷河期の如き大寒波だった。見渡す限りの広大な砂漠地帯は雪に埋もれて永久凍土となり、総人口は一時一万人にまで減少した。残された人々は強い闘争本能を生存本能へ変え、厳格な自己管理を尊ぶ禁欲主義の民族へと進化を遂げたのだ。過酷な環境を補うために技術革新も飛躍的に進み、現在のような謎と神秘の国サリュートが出来上がった。
 逆境から華々しく蘇りと民族的成長を果たしたソリュート人だったが、原始の本能は廃れることなく彼らの血に潜んでいた。
 三年に一度の周期で訪れる覚醒期ミー・ガン……一度その時期に入ると、彼らは本能的に番いを求め、互いに欲望の限りをぶつけ合うのだ。求めた番い相手に拒否されてしまうと、狂気に呑まれて命を落とすらしい。
 理性の権化となった現サリュート人は、その事実を非常に屈辱的で恥ずべきことと捉えていた。血の衝動を抑える研究も続いているが、覚醒期を一時的に先送りする中和剤こそ出来たものの、根本的な解決には至っていない。
 また、ミー・ガンを完全に抑え込めない別の厄介な理由もあった。覚醒期以外に行った生殖行為での出生率が、昨今著しく低下していた。運良く妊娠出来ても死産となったり、生まれても虚弱体質であったり、と何かしら身体的欠陥を抱えていることが多かったのだ。必然的にミー・ガン以外の性交渉は避けられるようになり、サリュートにおいて人口問題は最大の留意すべき課題となっていた。
 出生率の低下は本能を過度に抑え込んだせいだと主張し、原点回帰を主張する者達も出始めている。何の科学的根拠もないのに現在の厳しい感情統制と禁欲主義に反発する彼らは異端と見做され、同族達からも忌諱され始めた。ゆえにミー・ガンの番い相手に他民族を求めるしかなくなり、ムライド達が増加する一因にもなったのだ。
 混血ゆえか生殖能力が著しく低いことも相俟って、ムライドは彼らとともに異端邪説の申し子のように扱われている。そのため、祖国で伴侶を得ることは絶望的で、他国に移住する者は後を絶たなかった。
 ムライドでも半身が神族であり、母方の血が色濃いイエニスタスはそうでもなかったが、身の内に流れる青い血と身体能力以外はほぼソルケット人であるシャトリンへの風当たりは強かった。それでも神族保護を司る国家諮問機関スーシエは、何とかその流れを止めようと努め、その最たるものがザッカー・クワン家の末娘との縁組であったのだ。
 けれども、クロエスドイル本人を筆頭にしたザッカー・クワン家が猛反発したために、二人の婚約は実現しなかった。そもそも覚醒期が合致しない二人を娶わせようとしたことに問題があったのだが……一族総出で手酷く突っ撥ねておいて、今更蒸し返しにくるクロエスドイルは、彼ら特有の言い回しを借りれば非論理的過ぎる。
 彼女がクラリスに挑んできたシェルツァーが、まだ名もなき番いを巡る私闘であった頃、太古の凶暴性に囚われた恋敵達は一方が死ぬまで戦い続け、人口減少に拍車を掛ける事態となった。それゆえに、武器は使用禁止で戦意喪失による降参及びどちらか一方が意識を失うまで、と厳しくミー・ガンの掟に定められたのだ。
 なお、一方がサリュート人でない場合は、筋力増強剤等薬物や殺傷能力の低い武器の利用も許可されている。考え直すよう説得するシャトリンを始め、怪しげな薬を差し出すイエニスタス、六角獣をも瞬時に眠らせてしまう麻酔入りクロスボウを勧めるクラッドの全員に、クラリスは丁重な断りを告げた。
 闘争心にしっかり火が付いていた彼女は、素手で殴り合いたい気分だったのだ。
 覚醒期の理性が働かないサリュート人を相手にするのは自殺行為だろうが、平常時ならば勝機は十二分にある。弓騎兵だからと言って、弓がなければ何も出来ない訳ではなかった。矢を射尽せば、肉弾戦だって臨機応変に熟すのだから。それに、我が身に厳しい訓練を長く課してきた軍人の自分と違い、相手は天性の身体能力こそあれども実践的に鍛えている訳ではない。
 よって、日付が改まった翌日早くに、クラリスとクロエスドイルの二人は、円形の舞台の上で再び会い見えた。
 すり鉢状で天井が高いこの部屋は、ヴォーグ・クワン家地下にあるミー・ガン用特別室だ。サリュートの各家庭の地下には、覚醒期を過ごすために特別頑丈な造りの部屋を備えている。太古な血の覚醒で凶暴になった人々は、無駄な諍いを避けるために地下に潜るのだ。入口は硬く施錠され、中からは絶対に開かない構造になっているそうだ。
 掟により、中に入ることができるのは当事者だけ……つまり今ここには、シャトリンとクラリス、そしてシェルツァーを挑んできたクロエスドイルしかいない。
 一晩で旅の疲れを取り、英気を養ったクラリスは心地良い高揚感に身を任せる。適度な興奮は、神経を研ぎ澄ませてくれた。
“今すぐに跪いて無礼を詫びるならば、許さないこともなくてよ”
 互いの射程距離外で向かい合って立つクロエスドイルは、早速高飛車な思念を飛ばしてきた。露出度の高い黒革のドレスから、ミー・ガンの掟に則った緋色の着衣に着替えている。
「冗談はやめてください。ミー・ガンでもないのに血気盛んに他人の家で暴れて、謝罪が必要なのは貴女の方です。それに、今更謝ってもらっても止める気はありませんから」
 青黒い双眸を静かに見返しながら、クラリスも好戦的に返す。
 彼女もまた式典用の大正装から、サリュートならではの戦闘服に身を包んでいた。クロエスドイルと同じ革製のそれは、各急所に保護材が織り込まれていて、弓騎兵の任務で着ている通常軍服よりも薄手ながらとても防御力が高そうだ。血の色こそ違うが、サリュート人もソルケット人も急所の位置は同じらしい。幸いなことである。
「君達は、何と非論理的なことか……」
 少し高い位置から二人に向かって、確かな落胆を織り交ぜた低音が投げ捨てられるように降り注いでくる。
 後頭部に突き刺さった声音をクラリスが振り仰ぐと、壁面に螺旋階段状に設えられた席の一つから、シャトリンが自分を見下ろしていた。柵のないバルコニーのように迫り出した足場の上で、微動だにせず立つ彼の姿はまるで精密無比な彫像のようだ。
 互いの位置関係とも相俟って、クラリスはミュラーリヤ連合評議会の聴聞会場を思い出す。謹慎処分を進言したその時さえ平静だったシャトリンの顔色は、すっかり蒼褪めていた。理不尽な迫害で後にした祖国であっても、愛する家族と一緒にいれば自然と心が落ち着くのだろうか……ソルケットにいた頃は考えられないくらいに、彼の感情は読み易かった。
 しなくてもいい決闘を受けたクラリスの気持ちが、論理を重んじるサリュート人たろうと努めるシャトリンには、理解出来ないに違いない。彼女はただ単純に、自分に親切にしてくれた人々が謂われなく傷付けられ、愚弄されて黙っていられる程お人好しになれなかっただけなのだ。合法的に反撃出来る機会があるのだから、それを受けない手はない。
「開始の合図をお願いします」
 心配無用だと告げるように小さく頷いて見せた後、正面のクロエスドイルに向き直ったクラリスは、表情筋の硬い面差しを更に引き締めて背中越しに投げた。その姿を暫し見つめていたシャトリンは、諦めた様子で右手を上げ、傍らの壁に設置されたボタンを押す。
 途端に、陽光のように煌々とした照明は四方八方から二人の立つ舞台をあぶり出し、シェルツァーの火蓋が切られた。

   * * *

 最初に動いたのは、クロエスドイルだった。
 床を蹴り、青い弾丸のようにまっすぐ駆ける彼女は、瞬く間にクラリスとの距離を詰めてきた。想像を超えた跳躍力に緊張が走り、ジワリと発汗する。あっと言う間に射程圏内に入ってきたクロエスドイルに、先制攻撃は掛けずに後ろに飛び退いた。
 追い縋る彼女が、クラリスに向かって鋭い掌底を打ち出してくる。上体を反らせてそれを避けると、後ろへ掛かった重心を踵骨腱で受け止めて前へ出た。前傾姿勢で晒された首元を狙った手刀が払い落される。怯まず押しの姿勢で、クロエスドイルの方へ踏み込む……標的はがら空きの腹だ。
 クラリスは膝を繰り出そうとしたが、察知して上体を逸らせた相手に膝頭を踏みつけられ、押し戻されてしまった。間合いに余裕はない。防御すべきか攻撃か……次の行動に移る前に、拳が左頬に素早く打ち込まれた。突き出された威力のある利き手をまともに食らい、足元がよろめく。それでも反射的に後退し、乱れた息を吐いた。
 今一度間合いを取り戻した二人は、互いに静止した。クロエスドイルは意外な健闘だと言うように目を眇めて、こちらの出方を慎重に観察している。青黒い双眸は凶暴に燃え立っていて、殴打された右頬がズキズキと痛むとともに、項の産毛が逆立った。ほんの数分の間ですっかり汗みどろになったクラリスは、呑まれまいと奥歯を噛み締める。
 これで本職の戦闘員ではないとは驚きを禁じ得ない。自分はサリュート人の身体能力を過小評価し過ぎていたようだ。彼女は、想像以上に厄介な敵だった。この種の手合いに対して、取るべき戦法を誤った。最初の攻撃を躊躇い、後手に回ったのは明らかなる失策だ。
 クロエスドイルが、再び床を強く蹴る。一息に間合いを詰められ、クラリスの無表情に焦りが滲んだ。咄嗟に繰り出した拳は僅かにぶれていて、それをクロエスドイルは易々と避ける。次いで、足の甲を踏まれ、動きを封じられた。もう一度突き出された拳を、固めた左腕で防御する。
 次の瞬間、ゴボッとクラリスの肺から空気が押し出された。先の拳は囮で、鳩尾に叩き込まれた重い二打目が、内臓を盛大に震わせたのだ。圧倒的な痛みに、目の前がチカチカと点滅する。酷く分が悪い。焦りの奥から冷たい恐怖が迫り出してくる。
 このままでは負ける。
 それだけは、絶対に嫌だ。
 シャトリンのためでも、カルガゾンヌのためでもなく……クラリス自身が自分を許せなくなる。
「……うっ!」
 風を切る音とともに、クロエスドイルが初めて呼吸を乱した。怯むことなく反撃に出たクラリスの拳が、彼女の頬骨を僅かに掠ったのだ。刹那生まれた隙を狙って続け様に拳を叩き込もうとしたが、それが届く前にクロエスドイルは全身のバネを使って後ろに飛び退いた。すぐにその後を追う。
「……はっ!」
 短い発声とともに繰り出した回し蹴りが初めて決まる。一周目は上体を下げて躱されたが、二連になっていた次の蹴りは避け切れなかったのだ。脇腹に食い込んだそれに、クロエスドイルは顔全体を顰めて踏ん張り、倒れ込むことはなかった。即座に軸足を狙って低い蹴りを返されたが、後退して難を逃れた。いつでも間合いを詰められるように、両者とも足首を効かせて互いにつけ入る隙を狙う。
 フーフーと息を吐くクラリスの目は興奮から瞳孔が開いており、視線は常以上に虚ろだった。とにかく目の前の相手を打ち負かそうとする原始的な凶暴性に支配されている。忍耐を切らした彼女は、再び先手を打った。闘牛が角で突き掛かるような姿勢の低い突進をし掛ける。渾身の頭突きは乳房の下から横隔膜を震わせたが、どうにもまだ倒れそうにない。
「がっ……!」
 一瞬無防備になった脇腹に鋭い突きを受け、クラリスの口から呻き声が上がった。自分の突進を受け止めたクロエスドイルは、それを狙っていたようだ。
 倒れてなるものか、と歯を食い縛ったクラリスも膝を打ち込む。それから互いの脇腹や腹に、膝や拳の応酬が暫く続いた。
 原始的な取っ組み合いの最中、彼女は朧気に気付き始める。クロエスドイルの動きは直感に近い機敏さや力があったが、専門的な訓練を受けていないだけあって連続した技の精度は自分が上だ。それでも長引けば分が悪いのは、身体能力の劣るクラリスの方だろう。まだ体力が残っている内に決するべきだ。
 そう冷静に判断したクラリスは、彼女が上半身の攻撃に意識を取られている隙を突き、素早く足払いを掛ける。大きくぶれた体幹を立て直す暇を与えず、彼女は頭二つ分大きな身体をそのまま床に引き倒すことに成功した。
 硬い床で強かに頭を打ちつけたことが堪えたらしく、彼女は馬乗りになったクラリスに対し、すぐに対処が出来なかった。
「……やっと、捕まえた」
「がっ……!」
 ハッキリとした笑みを口元に刻み、クラリスは眼下に晒された額に再び頭突きをかます。
 強者を組み敷く現状に酷く高揚していたが、目鼻口を狙わない冷静さはさすがに残っていた。相手の意識を奪いたいだけであって、殺したい訳ではないのだ。そのまま胴体に乗り上げた彼女は足で挟み込むように暴れる肢体を抑え込むと、腕で固定するように首を絞め上げ始めた。一層色濃くなった青い顔に、酸欠から目はカッと見開かれ、魚のようにパクパクと口が空を噛む。勝敗は最早決まったようなものだった。
 程なくして青黒い双眸がグルリと回り、白眼を剥いたクロエスドイルの首がガクリと後ろに落ちる。彼女から完全に力が抜けたので、クラリスはようやく頸動脈への圧迫をやめた。慎重に十指を解いても、抱え込んだ長身はピクリとも動かない。念のために指を当てて脈と呼吸を確かめると、多少乱れているが、きちんと呼吸している。
 クラリスは全身の緊張を解き、長い息を吐いた。息が整うのを待ってゆっくり立ち上がると、背後を振り返る。
 視線の先には、中二階辺りで彫像のように佇むシャトリンの姿……無表情の中、一点大きく見開かれた暗灰色の双眸には、薄暗い炎が燃え盛っていた。それを見返しながら、彼女は興奮冷めやらぬままに口角を引き上げる。
 まるでそれが合図となったように、ザシュッと軽い音を立てて舞台に飛び降りたシャトリンは、足早に自らの下へ近寄ってきた。
「骨はやっていないと思いますが、一応医者にっ……」
 彼から視線を背後へと移し、長々と伸びているクロエスドイルの手当てを依頼しようとした台詞は、半ばで途切れる。背中から羽交い絞めにするように、きつくシャトリンに抱き締められていた。
「たっ、大佐……?」
 まるで炎で炙られるような熱い吐息が首筋に掛かり、収まっていた汗が再び全身に噴き出す。
「……クラリス」
 八割が息ではないかと思われる声音で、階級を省いた名を耳朶に吹き込まれ、心臓が跳ね上がった。密着させられた身体が、何処も彼処も熱い。今まで全く感じなかった臭気が、鼻孔を衝く……熟し切って、いっそ腐り掛けた果実のような、ドロドロした甘い匂い。思考力が、五感を埋め尽くす外的刺激に溶かされていく初めての感覚。
「済まない、これから私は理性を失う」
 クラリスの首を捩じって己の方へと向かせると、そう律儀に断ったシャトリンは、噛みつくように彼女の唇を奪った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...