至急、君との交際を望む

小田マキ

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12(R18)

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 ミュラーリヤ第三弓騎兵隊隊長であるクラリス・ヴィアッカは、円筒形の箱の中に横たわり、真っ暗なトンネルを滑るように下っていた。
 トンネルの行き着く先は、件の地下室だ。
 箱の中には弾力のあるマットレスが敷かれていたが、その圧迫感と閉塞感は棺桶さながら。何にしても閉所恐怖症でなくて良かった。まるで埋葬されている気分だ、と実際死体のように胸の前で両手を組んだクラリスは独り言ちる。
 本物の棺桶ならば安らかに眠れる訳だが、自分の場合はここからが本番で、恐らく人生最大の大仕事が待っている。
 鉄壁の防御を誇るヴォーグ・クワン家地下室に続く最短経路の一つは、女主人であるフェレンルイエの部屋に繋がっている。ミー・ガンが訪れた際、速やかかつ安全に向かうための設計だと言う。もう一つがクラッドの部屋に通じているのは、言わずもがな……二人して滑り落ちる先は寝台の上だ。
 遠慮も恥じらいもあったものではないが、そう言う民族文化なのだから受け入れるより他ない。サリュート人にとって性交渉は儀式なのだ。一度は脱却を試みた粗暴な本能による狂気に満ちていたが、避けては通れない大切な……そして、神聖な生殖の儀式である。
 使命感に同情、拭い去れない不安と、ほんの僅かな好奇心、期待。様々な感情がクラリスの胸に入り乱れる。
「ふぁっ……」
 突如背中からマットレスの感触が消え、クラリスの口から間抜けな声が漏れた。フワリと長衣の裾が翻り、外気に晒された二本の素足が粟立つ。暗闇から一転、開き切った瞳孔を刺すように飛び込んできた赤い照明に、思わず目を閉じた……落下する耳に、シャランと短く小さな音が響く。
 そう言えば髪を結った紐に鈴が付いていたな、とどうでもいいことを考えている内に、短い浮遊は終わりを告げる。受け身の必要のない柔らかな感触に、背中から包み込まれていた。それは、実に上等なマットレスだった。
 次いで、何者かが足元から這い上がってくる気配とともに周囲がギシリと軋み、ムッとするような熱気が鼻先と唇を舐める。目を開くより早く鼻孔に忍び込んできた甘ったるい匂いは、意識を失う以前の記憶を誘発し、得体の知れない悪寒とともに全身の毛穴が開いていく。

「……クラリス」

 汗が滴るような熱を持った呼び声に、クラリスの心臓がドクリと跳ね、急激な体温の上昇を感じた。そろそろと目を開くと、自らをシャトリンが見下ろしていた。爛々と輝く深紅の照明を背負ったその顔色は分り辛いが、暗灰色の双眸が暗く潤み、いつも一縷の隙もなく着込んでいた軍衣もしどけなく乱れている。
 両耳の横に着いた十本の指もカタカタと震え、その顔は今にも泣き出しそう……そう思ったと同時に、本当に雫が落ちてきた。頬の凹凸を滑り落ちるそれは、蒸発しそうなくらいに熱い。
「クラ、……しょうぃ……済まないっ、……私は浅ましいっ……!」
 もつれて語尾を跳ねさせ、乱暴に吐き捨てた声は、吐息を過分に孕んでいる。喉を通る息がグルグルと鳴る様は、最早人ではなく獣のようだ。
 原始的な欲求に苛まれる彼の理性は、いつ陥落してもおかしくはないはずなのに。危うい綱渡りのような精神状態にあっても、至極律儀に謝罪してくるシャトリンに、無性に泣きたくなった。感情のまま落涙する彼は、常の完璧さを知る身だけにとても痛々しい。
「……自分が保てないっ、こんな情けない姿を……晒すくらいならっ……いっそ、死のうかとっ……だが、それ以上にっ……どうしても、君に……っ……触れたい」
 暗闇の中でもないのに、瞳孔が完全に開き切った双眸をしとどに濡らし、許しを請う今の彼を拒める人間がいるなら教えてほしい。少なくとも、自分には無理だ。ほんの少し前まで残っていた躊躇いは、何処かへと消え去っていた。
 顔の右側についた掌を擦り、手首から肘、肩口をなぞって、宥めるように汗で湿った首筋を指先で辿る。一際太い血管の中を、青い血がもの凄い勢いで流れていくのを指の腹に感じた。そのまま頬を伝い、なおも懺悔じみた台詞を送り出そうとしたのか、か細く戦慄いた唇を人差し指一本で制圧した。
「……もういいですから、貴方のお気の済むままに。私はそう簡単に壊れませんよ」
 落ち着いた声音を心掛けてそう告げ、クラリスは口角を上げる。
 出来たら優しくしてほしい。
 本心ではそう言いたかったけれど、目の前の彼にそれを要求するのはあまりにも酷だ。初心な自分でも、今の彼がどれだけの忍耐の末にあるかくらい分かる。その忍耐がただひたすらに自分のために費やされていたことも。
 だからこそだ。
「全部受け止めますから……存分に、シャトリン」
 階級ではない名前で呼ぶことで、もう完全に腹は括っていると伝えたかった。
 その言葉を聞き終えると、シャトリンの忙しなく収縮する瞳孔が、瞼と濡れた睫毛の下に隠される。さらに項垂れるように首を落とした彼は、唇からずれた指先に頬を擦り寄せてきた。動物的な仕草を受け入れるように、クラリスは掌全体でその頬を撫でようとしたが……再びグルグルと猫のように喉を鳴らしたシャトリンは、素早い動きで彼女の手をシーツに縫い付けてしまった。
 次いで、己の逆の手の人差し指を口元に持っていくと、強くガリリと噛み締めた。粘度のある血液が、口の端をドロリと伝い落ちていく。青いだろうその色は、真っ赤な逆光の中では濃い紫に見えた。
「……優しくは出来ない」
 自ら流した血を舌先で舐めとる姿に目を奪われるクラリスに向かって、吐息が八割の声音が荒々しく宣言する。情欲にドロリと溶けた暗い双眸からは、最早涙も痛みも消え去っていた。
「……だからっ……だから、せめてっ……私が感じる狂気を、君に……」
 そう言って、半端に開いたままだったクラリスの唇にシャトリンは己のそれを重ねる。カチンと前歯のぶつかる拙い音の後、歯列を割って侵入してきた舌からは、錆びた鉛のような……でも、どこか生々しく痺れる味がした。それがサリュート人に流れる青い血潮の味だと理解したと同時に、絡められた舌先から全身に漣のような淡い衝撃が走る。
 圧し掛かる彼の身体の重みと軋むマットレスの音、僅かな衣擦れに、互いの吐息の熱。いっそ全身の血管を巡る血流まで聞き分けられそうな程に、全神経が酷く研ぎ澄まされていく。反射的に逃げを打った上体の動きは、強く握り締められたままだった彼の左手によってあっさりと封じられた。
 互いの指の股に差し込まれた大きく無骨なそれと、その手の内で縫い止められた己のそれの十本の指の感触と動きが溶け合うような感覚。自分で自分を追い詰め、捕まえられているような不可思議な心持ち。身体の中心からじんわりと滲み出してくる得体の知れない焦燥感に、理性が押し流されていく。
 角度を変えて何度も唇を食まれ、縦横無尽に頬肉を抉る舌先に唾液が巧く嚥下出来ず、ゴキュッと中途半端に喉が鳴った。生々しい水音が耳に響き、頬に熱が集まる。頬を擦る高い鼻頭にさえ煽られた……思考力を大いに脅かす接吻に、クラリスは気付けば夢中になっていた。
 気持ちが良い、とても。
 一頻り唾液と粘膜を貪った後、名残を惜しむように唇を舐められ、互いの顔に蒸れた息が吐き掛かる。互いの口から噎せ返る程の甘く爛れた香りがした。濡れた唇がじわりと冷えていくことに、切なささえ覚える。
「……ミー・ガン中のサリュート人の血には、微弱ながら交感作用がある」
 無意識に唇を舐めていたクラリスに、シャトリンが告げる。口付けを交わす前と比べ、何故かその声は幾分明瞭になっていた。
「こう、かん……?」
 逆に、繰り返した彼女の声は弾み、無様に上擦っている。分かっていても、抗えない。外面を保つ気力が湧かない。全身に全く力が入らなかった。
「肌を合わせていれば全てではないが、強い感情は伝わる……言葉が告げなくても、ちゃんと伝わるから……お互いに」

 どうしても嫌なら、最後まではしない。

 最後の言葉は言葉になっていなかったが、紅を塗るように丁寧に唇をなぞる彼の舌先から伝わった。労わるような感情と、相反する苛烈な情欲とともに。
 だから、クラリスは唇を叩くだけの彼の舌を、自らの舌で口腔に迎え入れた。絡んだ舌先は、きっと言葉なんかよりも雄弁だ……たった一つの接吻だけで、こんなにも劇的に自らの身体が作り変えられてしまうなんて、想像もしてみなかった。

   * * *

 汗を吸って肌に纏わりつく衣服が気持ち悪い。
 そう考えるだけで、もう彼の手は動き始めていた。フェレンルイエが用意してくれた長衣は前の合わせを紐で結んでいるだけで、それも比較的単純な花結びだったのだが、ともかくその数が多い。気が逸るのか、僅かに震える指先は肩口のそれから寛げていった。
 丁寧さを欠く指先は、それでも果物の皮を剥くように前合わせを開き、鎖骨から下の肌が外気に触れる。互いの熱気で湯気が立ち昇るような状態で寒さなど感じはしないが、肌が粟立つのを止められなかった。ドクリと高鳴ったのは、どちらの心臓だったのだろうか? ゴクリと喉を鳴らしたのも、自分か相手か……最初の接吻から互いの心の境界が曖昧で、羞恥心と興奮が綯い交ぜになったドロドロの感情に脳を焼かれる。
 熱くかさついた掌が、直にクラリスの汗ばんだ肌の上を這い回り、鎖骨をなぞって胸へと到達する。脂肪の少ない筋肉質な身体の中で唯一微かに膨らみ、ささやかな柔らかさを持つ胸を、自分ではない手がやわやわと揉み始めた。
「……んっ……」
 親指の腹が淡く色づく乳頭を掠めた途端に背中が弓なりに反り返り、嚙み殺せなかった声が口を衝く。絶対に出さない高音に全身が沸騰した。発熱が触れられている部分の感覚を際立たせ、初めて誰かに肌を良いようにされる快感に震え、慄く。それまで確かめるようだったぎこちない指の動きは、徐々に遠慮をなくしていった。
「あぁっ、……やだぁっ!」
 乳輪を擦り、捏ねるように乳首を弄り始めたその指先に、一層甲高い声が飛び出す。シャトリンの手を押しやろうとクラリスは腕を浮かせるが、半端に脱げた長衣が動きの邪魔をした。絡みつく袖にもたついていると、シャトリンは左手一本で器用に彼女の腕を抜き、頭の上に両手まとめて拘束してしまう。袖の落ちた長衣は単なる敷布に成り果て、辛うじて下半身を覆っているものの、ほとんど衣服としての役割を果たしていない。
「いやっ……!」
 赤い照明の下で暴かれた痴態に、強く羞恥心に駆られたクラリスは首を横に振った。髪結いの紐を飾る鈴の音が、荒い吐息の波間にシャラン、シャランと響く。
「……君の心は、そうは言っていない」
 耳朶に吹き込むように断言した彼に非難めいた視線を注ごうとしたが、その顔はクラリスの胸元に埋められてしまう。五本指では飽き足らないと言うように、先程まで口の中を蹂躙していた舌がザラリと左の乳房を撫で上げた。
「あ、ぁああっ……ひぃ!」
 間髪置かずに立ち上がった乳頭に歯を立てられ、その強烈な刺激に抑え切れずに声が上がる。自分が出しているなんてとても信じられない甘く媚びるような声に、再び体温が上昇した。陸揚げされた魚のようにビクビクと跳ねる身体を、宥めるようにシャトリンの手が這う。右脇腹から綺麗に割れた腹筋をなぞる指先に、まだ触れられてもいない下肢がズクリと疼いた。
 自らの反応にギョッとしたクラリスは、反射的に股を擦り合わせようとした……が、いつの間にかシャトリンは自らの両足の間に身体を滑り込ませていて、急な動きは互いの股座を擦りつけるだけだ。硬く芯を持った熱を布越しに感じて、力いっぱい蟀谷を殴られたように目の前がチカチカと明滅した。

 容れたい。

 強く震える脳に容赦なく突き刺さったのは、自分ではなくシャトリンの欲望だ。咄嗟に背けた瞳からボロボロと零れ出した涙が、シーツへと染み込んでいく。

 嫌だ、怖い……!

 声にならない彼女の思念を、合わせた肌から受け取ったらしいシャトリンの動きが止まる。胸元から顔を上げ、背けた彼女の顔を追った。
「……クラリス?」
 涙で揺らいだ視界はただ赤いばかりで、御し難い興奮の中にも気遣わしげな響きを纏わせた声音の主がどんな表情を浮かべているかは分からない。ただ、震えて縮こまった我が身の上から退こうとする気配が伝わり、咄嗟に膝で下半身を挟むようにして引き留めた。
「……無理強いをする気は……」
「違うっ……!」
 戸惑った様子で続けようとするシャトリンの言葉を、クラリスは強く遮った。上擦ったその声は、本当に無様だ。それ以上に、この土壇場で僅かにも決心の揺らいだ自らに恥を覚える。
「……怖いのは自分自身です」
 クラリスは、痛みならどんな激痛でも耐えられると思っていた。
 男所帯の軍隊生活を送っていれば、猥談の一つや二つは耳にする。初めての性交渉に痛みが付き物だと言うことくらいは知っていた。だからこそ、命懸けの狂気に苛まれたシャトリン以上に、身も世もなく乱れてしまう自分自身が受け入れられなかったのだ……これではまるで。
「君は感受性が強いだけだ、淫乱などではないよ」
 自らの考えを読んだように、シャトリンがキッパリとそれを否定する。
「ミー・ガンにあるサリュートの血には、交感作用があると言っただろう……君は一時的に私の欲に引きずられ、著しく性感が高まっているだけだ。例えれば媚薬に侵されているような状態だ……君に苦痛を強いたくはなかったのだ」
 そして、クラリスの不安を取り除こうとするように殊更丁寧に説明してくれる。その言葉自体はしっかりしていたが、触れ合う皮膚は相変わらず熱く、動悸も激しい。彼が瘦せ我慢をしているのは明白だ。
「触れ合っていなければ、徐々に作用も薄れてくる。だから……少尉」
 それなのに自らの腕の拘束を解き、シャトリンは完全に彼女の身体を解放しようとする。名前から階級に変わった呼び名に、唐突に胸が薄ら寒くなった。クラリスは自由になった両手を彼へと伸ばす。
「……続けて」
 シャトリンの首に両腕を巻き付け、首筋に頭を擦り付けるようにして囁いた。精一杯振り絞ったはずの声は小刻みに震えていたが、息を呑む音を耳朶が拾い、その意が届いたことを知る。
「触れてください、存分に……サリュート人じゃありませんけど、私だって嘘は吐きたくありません」
 怖じ気づきそうになる心を叱咤して、なおも続けた。密着した身体を僅かに引き放すと、瞠目するシャトリンの顔を覗き込むようにして、クラリスは口角を上げる。
「……君はっ、……どこまで私を煽ればっ……!」
 乱暴に吐き捨て、目の前で再びドロリと溶け始めた彼の双眸に、心に不思議な安堵が広がった。
「……んっ……」
 それも嚙み付くように唇を奪われ、シーツに強く背中を押し付けられると、上がる息とともに余裕は瞬く間に奪われる。二匹の蛇が番うように絡まる舌にクラリスが夢中になっている間に、内股をシャトリンの手が這い上がった。ゆるりと折り曲げさせられた膝から薄い下履きが引き抜かれ、恥部を遮る物が何もなくなる。汗と分泌物で濡れた割れ目をなぞられて、ようやく事態に気付いたクラリスは、思わずシャトリンの舌に歯を立ててしまう。
 銅貨のような金属質な血の味が口の中に広がると、好都合とでも言うように彼は唾液とともに己の血をクラリスに嚥下させた。口端から青みを帯びた唾液を零しながら、上下する喉を確認するとともに、緩々と入口を撫でていたシャトリンの指先がズルリと胎内へと埋められる。抵抗なく濡れる胎内へと入り込んだ指を、内膜が強く締め付けた。
「あっ……あ、ぁああーーーーっ!」
 堪らず唇が解け、一際高い声が上がる。先程飲み込まされた血の影響か、埋め込まれた指を締め付ける内膜の感覚は酷く過敏になっていた。舌を絡める接吻や、胸への刺激が完全に霞む快楽を前に、クラリスは成す術もなく翻弄される。
 口にするのも憚れる場所から上がるグチグチと言う淫猥な水音が、耳朶を嬲る。ようやく抜けたと思った指は、本数を増やしてまた埋められた。視界が滲み、シャトリンの顔も分からない。いつの間にか彼も服を脱ぎ去っていたようで、剥き出しの硬い胸板が乳房を擦っていた。
 気持ち良い、辛い、気持ち良い……強過ぎる快楽はいっそ苦しくて、徐々にこの感覚が終わるなら何でもすると言う気持ちになってくる。
 しかし、引き締まった太腿が押し広げられ、内股に指とは比べ物にならない熱く硬い質量が押し当てられると、クラリスの瞳に光が戻った。視線の先に屹立するシャトリン自身を見て、喉の奥で小さく悲鳴を上げた。
 それが正常な形と大きさなのかどうかは、初めて男性器を見た彼女には判じられないが、シャトリンのそれは青く脈打ち、テラテラと濡れ光っている。おまけに恐ろしく長大だった。まさに狂気のなせる業……否、ただの凶器だ。彼の命は助かるかもしれないが、代わりに自分は死ぬかもしれない。死ぬ死ぬ、絶対に死ぬ。
 キュッと身体が縮こまった。
「……済まない、もう止めてはやれない」
 けれど、掠れた声が死の宣告を耳元に吹き込む。次いで気を散らすように喉元に嚙み付かれたと同時に、狭い胎内はミシリと征服されていた。痛みを感じたのはほんの瞬きで、鋭く突き上げてくる熱く硬い質量に、クラリスはそうとは知らずに達していた。強く背中を反らして、ガクガク震える腰骨を掴み、シャトリンは強く収縮する内膜の奥へと、更に自身を押し込める。狭い胎内の最奥に、先端がゴツリと当たった。
「……ぃっ、ひあぁっ、やぁあああぁあーーーーーっ!」
 達したばかりの酷く敏感になっている胎内を掻き回されて、大きく跳ねるクラリスの身体にも、圧し掛かるシャトリンはビクともしない。絶えず与えられる痛い程の快感は、彼女から再び理性を奪った。快感から逃れるために、クラリスはシャトリンの肩に強く嚙み付く。至近距離に見えた喉がグルグルと音を立てた。
 それは苦痛ではなく、興奮からくる咆哮を噛み殺しているのだと感じる。境界線が完全に弾け飛んだクラリスには、彼が限界を迎えつつあることも伝わっていた。最奥に先端がぶつかり、抽挿を止めた彼自身は一層質量を増していて、来たる予感にゾワリと背筋が震える。
「……ぅっ、……ああ、ぁっ……!」
 次の瞬間、身体の奥深くでマグマが噴き上がった……そう錯覚する程に熱く大量の液体が胎内を満たしていく。下腹は次第に重苦しくなっていくが、終わったと言う安堵と達成感が彼女の全身を包んでいた。ふっと緊張の糸が解け、クラリスの意識は段々と遠退いていく。

「……っ、……もう一度」

 霞みゆく意識の片隅で、もう一人の欲望がチリッと火種を燃え上がらせるのを感じたが、泥のような倦怠感はクラリスの思考力を手放してはくれなかった。
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