役立たずと呼ばれた王子、遂に本気出して魔王を倒しにいく!最強スキルが分かりにくすぎだろ?

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3 無敵士団の帰還

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防壁が消滅した日から二年、バーゼル大陸の様相は一変していた。

暗黒界の支配者である魔王は、下部の魔物を使って大陸を蹂躙し、多くの街を廃墟にしていった。
独自の結界で護られた一部の国を除き国家は機能不全に陥り、民衆は徘徊する魔物に怯える日々を送っていた。

ルツェルン王国の王にしてバーゼル大陸連合の代表、大帝ガランテはこれらに対抗する為、魔物を退治した者に多額の報奨金を与えると宣言する。

我こそはという猛者たちが次々に勇者パーティーを設立、各所で魔物狩りが始まる。

「いいぞーがんばれー!」
「逃がすな―行け―!」
「そこだーやっちまえー!」

街の広場には、壁面に映る勇者パーティーの戦いに一喜一憂する人々の歓声が響いていた。
魔物狩りの様子は、従来よりあった伝書魔鳥による長距離通信を応用した中継網を使って、大陸の各地で上映されていた。
この中継網は、報奨金ポイント計算のために魔法道具士たちが作ったものだが、暗澹たる今の時代において、魔物狩り上映は民衆にとって最高のエンターテイメントとなっていた。

「やっぱりブライツ様は最強だわ!」
「いいえ、ルキア様も負けてないわ!」

若い女性たちが推しメンを自慢し合う、上位の勇者パーティーは彼女たちにとってアイドルのような存在だ。
中でも、大帝の第一騎士ブライツ率いるパーティーは「無敵士団」と呼ばれ、実力と共に絶大な人気を誇る。
その無敵士団においてブライツと人気を二分するのが、彼の愛弟子のルキアだ。彼は天使の生まれ変わりで人間離れした美貌を持つ。そして、レアスキルの飛行魔法を操る事ができるため「天空剣士」と呼ばれていた。




無敵士団の五人を乗せた馬車がルツェルン王国に帰還した。通常であれば盛大なセレモニーで迎えられるはずだが、今回はなぜか隠密行動を求められた。

「魔獣に対する警備が薄いな…」

街の様子を目にしたブライツは険しい顔をした。

「やれやれ、二か月ぶりの我が家だというのに仕事熱心な事だ」

長老のドルチェは呆れたようにリーダーを見た。

「おっと、すまない…みんな今日は思う存分飲み食いしてくれ」

「そうこなくてはな」

「飲み過ぎては駄目よドルチェ」

白魔術師のエクセリーヌが釘をさす。

「ドルチェの事はお前に任せるよ」

「ブライツは行かないの?」

「俺は大帝様に呼ばれているからな」

「師匠、俺も城に連れていってください!」

ルキアが懇願した。

「駄目だ、城に呼ばれているのは俺とプレザージュだけだ」

「そう言う事です。ルキアさんはしっかり静養してください」

賢者プレザージュが穏やかにルキアを諭した。



酒場は中々の盛況だった。ルキアたち三人は店の隅の立ち飲みテーブルに陣取った。

「注文してくるわ、何がいい?」

エクセリーヌに聞かれて、ルキアとドルチェは「お任せで」と頼んだ。

「赤ワインを二杯とクランベリージュースを一杯、それからローストビーフとミートパイ、後はエビのフリッターとマッシュポテト…」

エクセリーヌがカウンター越しのマスターに注文していると、

「ヘイ彼女、かわいい顔して大食いだね」

三人組の酔っ払いが絡んできた。

「ねえ、その代金、俺たちが奢るからさ、一緒に飲もうよ」

「連れがいるので」

「そう言わないでさ…」

男がエクセリーヌの肩を掴む。その手を、ルキアが払った。

「俺の仲間にちょっかい出すの止めてくれるかな」

「イケメンくん、俺たちが誰か知ってるのか?市民の安全を護ってる近衛兵さまだぞ!」

それを聞いたルキアの目が鋭くなった。

「近衛兵なら飲んだくれてないで魔獣から市民を護れよ、市中にほとんど警備がいないじゃないか」

「貴様あ、ケンカを売ってんのか!」

「まあまあまあ、どちらも落ち着いて…」

ドルチェが間に割って入った。

「うるせえ、じじいは引っ込んでろ!」

男がドルチェの胸を突いた。

「まあまあ…」

ドルチェは男の手を軽くひねる。

「うわっ!」

次の瞬間、男は吹っ飛んだ。

「じじい!何しやがった…」

別の男が恫喝する。

「いや、ちょっと待て…」

更に別の男が静止する。

「よく見ろ、こいつら…いや、このお方たちは、『無敵士団』のメンバーだ!」

「何だとお?……お、お許しください!」

男は土下座し、頭を地面にこすりつけた。

「国に戻られているとは知らず、とんだご無礼を…謝罪いたします」

もう一人の男も深々と頭を下げる。それから二人の男はのびている男を引きずって店を出て行った。


「ルキア、ごめんね…ありがと。ドルチェもね」

エクセリーヌが声をかける。

「大事にならなくて良かったが…ルキア、お前はワシなんかより遥かに強い、だがな、平和に解決する方法も学ばんといかん」

ドルチェはルキアの肩を叩いた。

「そうだね、相手がどんなクズ野郎でも殺さないように注意するよ」

ルキアは美しい顔に冷たい笑みを浮かべた。
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