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第9話
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調査4日目、国立城杜大学 工学部
章生と丹下がキャンパスを歩いている。
「川田隆仁教授、コンピュータ工学、ロボット工学の専門家でPDの構造設計に深く関わっている人物だそうで‥」
メモを見ながら丹下が言った。
「私の持っている資料の開発スタッフ欄には記載が無かったんですが、何ででしょうね」
章生は眉を顰めた。
「川田教授は初期のPD開発では正式スタッフだったようですが、ここ数年は外部アドバイザーとして一歩引いた立場を守っていた様ですな‥桐生博士との付き合いは長いようなので、何か有用な話が聞けるといいですが」
「そうですね‥ところで、川田教授のいるロボット研究所はこっちでいいんですよね?」
目的の場所に中々着かない事に不安を感じた章生が尋ねた。
「いやあ、これなら受付で案内図を貰っておくんでしたな。刑事の勘で行けると思ったんですが、失敗、失敗‥」
丹下は頭を掻いた。
「何かお困りですか?」
背後からの声に二人が振り返ると、一人の少女が立っていた。
高校生か下手すると中学生にも見える少女は、大学の風景とは馴染まない不思議な雰囲気を持っていた。
「知っていたら教えて欲しいんですが、ロボット研究所の場所を知っていますか?」
章生の問いに少女は何故か困惑したような表情になった。
「これが最適解かどうかは分からないのですが‥わたしは今、ロボット研究所に向かっています。ですのでお二人をロボット研究所にお連れする事ができます」
(変わった話し方をする子だなぁ)と思いながらも章生は提案を受け入れた、
「本当ですか、それは助かります」
* * *
三人はキャンパスの外れに建つ二階建てプレハブにやってきた。窓にはロボットアニメのポスターが貼られている。
チーフマネージャーの久慈護治が章生たちを迎えた。
「おはようございます蓼丸女史、そちらの方達は‥」
「‥ほほう、国土交通省の調査官の方ですか。あの事故は存じておりますよ、私どもで役立てる事があれば、協力は惜しみません」
「ところで、川田教授はどちらにいらっしゃいますか?」
章生が尋ねると、久慈は明らかに落胆して答えた。
「なるほど‥調査官は勘違いされておられるようです。ここはロボット研究所ですが、あなたの行きたい場所はロボット研究室だと思われます。こちらは研究所、あちらは研究室ですので‥」
ハッとする章生。
「ロボット研究室!言われてみれば確かに‥」
すると護治が、部屋の隅で熱心にノートブックパソコンを打っている男を呼んだ。
「省吾《しょうご》くん。君は向こうにも所属していたよね、この方たちをロボット研究室にお連れしてさしあげなさい」
ノートブックパソコンを閉じてのっそりと立った省吾。
「いいっすよ。じゃあ俺に付いて来て‥」
部屋を出て行く章生達に少女が言った、
「申し訳ありません、こうなる可能性をもっと考慮するべきでした」
「いえ、私のミスですから。ありがとうございます、えっと‥」
「私は蓼丸綾可と申します」
* * *
「城杜大学にはロボット研究室、通称『ファクトリー』と、ロボット研究所、通称『ラボ』があるんだ」
ロボット研究室に向かう道すがら省吾は章生達に説明した、
「ファクトリーは川田教授の研究グループで、産学官の共同プロジェクトとしてVR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術を使ってロボットの設計や運用のシミュレーションをしている。それに対してラボは‥まあ、純粋にロボットを愛する連中の集まりだな」
「それってただのサークル活動じゃ‥」
「今でこそそんな感じだけど、元々は何とかっていうAI研究では有名な教授が開設した講座で、歴史はラボの方がファクトリーより長いんだ」
「君は両方に所属しているんだよね?」
「ファクトリーでプログラミングのバイトすると金になるからね。趣味でロボット造るにも何かと金は必要だし‥」
しばらく歩いていると、近代的な研究棟の前に着いた。
「ファクトリーはこの中だよ。じゃあ俺は別のバイトが入ってるから‥」
そう言って省吾は去って行った。
章生と丹下がキャンパスを歩いている。
「川田隆仁教授、コンピュータ工学、ロボット工学の専門家でPDの構造設計に深く関わっている人物だそうで‥」
メモを見ながら丹下が言った。
「私の持っている資料の開発スタッフ欄には記載が無かったんですが、何ででしょうね」
章生は眉を顰めた。
「川田教授は初期のPD開発では正式スタッフだったようですが、ここ数年は外部アドバイザーとして一歩引いた立場を守っていた様ですな‥桐生博士との付き合いは長いようなので、何か有用な話が聞けるといいですが」
「そうですね‥ところで、川田教授のいるロボット研究所はこっちでいいんですよね?」
目的の場所に中々着かない事に不安を感じた章生が尋ねた。
「いやあ、これなら受付で案内図を貰っておくんでしたな。刑事の勘で行けると思ったんですが、失敗、失敗‥」
丹下は頭を掻いた。
「何かお困りですか?」
背後からの声に二人が振り返ると、一人の少女が立っていた。
高校生か下手すると中学生にも見える少女は、大学の風景とは馴染まない不思議な雰囲気を持っていた。
「知っていたら教えて欲しいんですが、ロボット研究所の場所を知っていますか?」
章生の問いに少女は何故か困惑したような表情になった。
「これが最適解かどうかは分からないのですが‥わたしは今、ロボット研究所に向かっています。ですのでお二人をロボット研究所にお連れする事ができます」
(変わった話し方をする子だなぁ)と思いながらも章生は提案を受け入れた、
「本当ですか、それは助かります」
* * *
三人はキャンパスの外れに建つ二階建てプレハブにやってきた。窓にはロボットアニメのポスターが貼られている。
チーフマネージャーの久慈護治が章生たちを迎えた。
「おはようございます蓼丸女史、そちらの方達は‥」
「‥ほほう、国土交通省の調査官の方ですか。あの事故は存じておりますよ、私どもで役立てる事があれば、協力は惜しみません」
「ところで、川田教授はどちらにいらっしゃいますか?」
章生が尋ねると、久慈は明らかに落胆して答えた。
「なるほど‥調査官は勘違いされておられるようです。ここはロボット研究所ですが、あなたの行きたい場所はロボット研究室だと思われます。こちらは研究所、あちらは研究室ですので‥」
ハッとする章生。
「ロボット研究室!言われてみれば確かに‥」
すると護治が、部屋の隅で熱心にノートブックパソコンを打っている男を呼んだ。
「省吾《しょうご》くん。君は向こうにも所属していたよね、この方たちをロボット研究室にお連れしてさしあげなさい」
ノートブックパソコンを閉じてのっそりと立った省吾。
「いいっすよ。じゃあ俺に付いて来て‥」
部屋を出て行く章生達に少女が言った、
「申し訳ありません、こうなる可能性をもっと考慮するべきでした」
「いえ、私のミスですから。ありがとうございます、えっと‥」
「私は蓼丸綾可と申します」
* * *
「城杜大学にはロボット研究室、通称『ファクトリー』と、ロボット研究所、通称『ラボ』があるんだ」
ロボット研究室に向かう道すがら省吾は章生達に説明した、
「ファクトリーは川田教授の研究グループで、産学官の共同プロジェクトとしてVR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術を使ってロボットの設計や運用のシミュレーションをしている。それに対してラボは‥まあ、純粋にロボットを愛する連中の集まりだな」
「それってただのサークル活動じゃ‥」
「今でこそそんな感じだけど、元々は何とかっていうAI研究では有名な教授が開設した講座で、歴史はラボの方がファクトリーより長いんだ」
「君は両方に所属しているんだよね?」
「ファクトリーでプログラミングのバイトすると金になるからね。趣味でロボット造るにも何かと金は必要だし‥」
しばらく歩いていると、近代的な研究棟の前に着いた。
「ファクトリーはこの中だよ。じゃあ俺は別のバイトが入ってるから‥」
そう言って省吾は去って行った。
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