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第11話
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章生と丹下が話しながら大学のキャンパスを歩いていると、ラボのメンバー5、6人がグランドで実験しているのに出くわした。
そのロボットは車のシートに足が生えたようなシンプルなもので、その上にはプロテクターを装着したドライバーが乗っていた。
ロボットが走り出す。しかし、すぐにバランスを崩すと、転倒してドライバーを勢い良く振り落とした。
「モンタくん、無事ですかっ!」
チーフマネージャーの久慈護冶が大声で呼びかける。
ロボットから投げ出されたドライバーの門田は、立ち上がると両腕で大きな丸を作った。
「良かった‥しかし、何が問題なんでしょうねぇ‥」
護冶は頭をかいた。
「メカニカル動作が設計値と違うんだな、だからコンピュータの処理に動作が置いてかれてるんだ。」
護冶の弟でロボットを設計した久慈省吾がパソコンのモニターデータを見ながら言う。
「省吾君の設計そのままは予算的に厳しいのですよ‥」
「また予算の話かよ」
二人の会話に綾可が割り込む、
「分かりました、それではバランスを取るタイミングを一歩毎から三歩置きに変更しましょう。それなら足の動作を微調整する回数が減らせますから、メカニカル動作の追従性が確保できると思います。」
そう言いながら既に制御プログラムを書き換え始めていた。
「どうも、先ほどは失礼しました」
ロボット研究所のメンバーに声をかける章生。
「これは国交省の調査官殿、事故の件は何か分かりましたか?」
護冶が尋ねる。
「調査の内容は部外秘なもので‥」
「そうですか、そうでしょうとも」
「105の事故はサイバーテロだって噂やん?PDってセンターコンピュータで制御してるやろ、優秀なハッカーなら痕跡を残さずにハッキングして105を暴走させるくらい造作もないんやて」
噂好きの宮地が口を挟む。
「違うな、事故原因は105に搭載された裏OSだ」
省吾は確信的に言った、
「ハヤセはPDを軍事兵器としてアメリカに売り込もうとしていて、それを政府も黙認している。その為に開発されたのが裏OSさ。
裏OSの売りは無人で敵陣に突入し制圧する『自立戦闘モード』。ハヤセはモーターショーのデモバトルでそれをテストするつもりだった。ところが想定以上に105が派手に動き回ったせいで事故になってしまった。管轄の経産省は火消しに躍起って話だぜ」
「また政府陰謀論ですか、省吾くんもネットの噂好きですね‥」
「これは『革命家J』の情報だ、今まで彼の情報が間違っていた事は一度も無い。どうなんです?調査官」
急に話を振られて章生は焦った。それを察したかの様に綾可が言った、
「プログラム修正が終わりました」
「早いですねぇ、さすがは部長」
護冶が拍手する。
「えっ、彼女が部長なんですか、あなたじゃなくて?」
章生は護冶と綾可を交互に見た。
「はい、蓼丸女史は高校一年生にしてプログラミングコンテスト日本代表、そして城杜大学の特待生、部長に相応しい人物です」
「えっ、彼女は高校生なんですか、それに‥」
章生は情報量の多さに混乱した。
「部長と言っても一日警察署長的な権限を伴わない役です。大体にして研究所なのに所長ではなく部長という段階で話が破綻していますし‥三井さん、ダンパーの調整をお願いします。2.5上げで」
綾香は冷静なフォローを入れながら、同時にてきぱきと指示を出した。
無口なメカニックの三井は無言でロボットのもとに向かった。
「こういうのにはお金もかかるんでしょうな」
丹下が護冶に尋ねた。
「メーカーみたいにノルマがあるわけではないので、やれる範囲でコツコツとやっています」
三井が両手で輪を作りOKサインを出す。
「では、テストを再開します」
護治の合図で動き出すロボット、今度は快調に走り続ける。
部員達から歓声が上がる。
「いいですね、こういう感じ‥」
章生はしみじみと言った。
「みなさん純粋にロボットが好きだから情熱を注げるんだと思います。わたしもこの雰囲気が大好きです」
この綾可の言葉に章生はハッとさせられた、
「そうか‥開発者は誰だって、初めは純粋にロボットが好きだった筈なんですよね」
そのロボットは車のシートに足が生えたようなシンプルなもので、その上にはプロテクターを装着したドライバーが乗っていた。
ロボットが走り出す。しかし、すぐにバランスを崩すと、転倒してドライバーを勢い良く振り落とした。
「モンタくん、無事ですかっ!」
チーフマネージャーの久慈護冶が大声で呼びかける。
ロボットから投げ出されたドライバーの門田は、立ち上がると両腕で大きな丸を作った。
「良かった‥しかし、何が問題なんでしょうねぇ‥」
護冶は頭をかいた。
「メカニカル動作が設計値と違うんだな、だからコンピュータの処理に動作が置いてかれてるんだ。」
護冶の弟でロボットを設計した久慈省吾がパソコンのモニターデータを見ながら言う。
「省吾君の設計そのままは予算的に厳しいのですよ‥」
「また予算の話かよ」
二人の会話に綾可が割り込む、
「分かりました、それではバランスを取るタイミングを一歩毎から三歩置きに変更しましょう。それなら足の動作を微調整する回数が減らせますから、メカニカル動作の追従性が確保できると思います。」
そう言いながら既に制御プログラムを書き換え始めていた。
「どうも、先ほどは失礼しました」
ロボット研究所のメンバーに声をかける章生。
「これは国交省の調査官殿、事故の件は何か分かりましたか?」
護冶が尋ねる。
「調査の内容は部外秘なもので‥」
「そうですか、そうでしょうとも」
「105の事故はサイバーテロだって噂やん?PDってセンターコンピュータで制御してるやろ、優秀なハッカーなら痕跡を残さずにハッキングして105を暴走させるくらい造作もないんやて」
噂好きの宮地が口を挟む。
「違うな、事故原因は105に搭載された裏OSだ」
省吾は確信的に言った、
「ハヤセはPDを軍事兵器としてアメリカに売り込もうとしていて、それを政府も黙認している。その為に開発されたのが裏OSさ。
裏OSの売りは無人で敵陣に突入し制圧する『自立戦闘モード』。ハヤセはモーターショーのデモバトルでそれをテストするつもりだった。ところが想定以上に105が派手に動き回ったせいで事故になってしまった。管轄の経産省は火消しに躍起って話だぜ」
「また政府陰謀論ですか、省吾くんもネットの噂好きですね‥」
「これは『革命家J』の情報だ、今まで彼の情報が間違っていた事は一度も無い。どうなんです?調査官」
急に話を振られて章生は焦った。それを察したかの様に綾可が言った、
「プログラム修正が終わりました」
「早いですねぇ、さすがは部長」
護冶が拍手する。
「えっ、彼女が部長なんですか、あなたじゃなくて?」
章生は護冶と綾可を交互に見た。
「はい、蓼丸女史は高校一年生にしてプログラミングコンテスト日本代表、そして城杜大学の特待生、部長に相応しい人物です」
「えっ、彼女は高校生なんですか、それに‥」
章生は情報量の多さに混乱した。
「部長と言っても一日警察署長的な権限を伴わない役です。大体にして研究所なのに所長ではなく部長という段階で話が破綻していますし‥三井さん、ダンパーの調整をお願いします。2.5上げで」
綾香は冷静なフォローを入れながら、同時にてきぱきと指示を出した。
無口なメカニックの三井は無言でロボットのもとに向かった。
「こういうのにはお金もかかるんでしょうな」
丹下が護冶に尋ねた。
「メーカーみたいにノルマがあるわけではないので、やれる範囲でコツコツとやっています」
三井が両手で輪を作りOKサインを出す。
「では、テストを再開します」
護治の合図で動き出すロボット、今度は快調に走り続ける。
部員達から歓声が上がる。
「いいですね、こういう感じ‥」
章生はしみじみと言った。
「みなさん純粋にロボットが好きだから情熱を注げるんだと思います。わたしもこの雰囲気が大好きです」
この綾可の言葉に章生はハッとさせられた、
「そうか‥開発者は誰だって、初めは純粋にロボットが好きだった筈なんですよね」
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