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第12話
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荒廃した市街地の中を、戦闘ロボットの一個小隊が周囲を警戒しながら進んでいた。
ここはオンラインゲーム『バトルボッツ』の中、戦闘ミッション遂行中だ。
―2時間前、ハヤセモータース PD開発課 ポートタウン工事現場事務所
「急に休みって言われてもな‥」
冬馬が不服そうに言う。
「しょうがないじゃない、105は動かせないし、やる事無いのよ。冬馬もこの機会に有給消化しときなさい‥」
佐伯も不本意そうな口調で言った。―
という訳で久しぶりにゲームセンターに来た冬馬は、オンラインゲーム『バトルボッツ』のシートに居た。
『ようチャンプ、久しぶりじゃない』
一人のプレイヤーが通信で妙に馴れ馴れしく話しかけてきた。
「チャンプ?誰の事だ」
『去年のバトルボッツグランプリ優勝者、KAIでしょ』
「あんた誰だ?」
『覚えてない?グランプリ準優勝のRevHだよ』
「ああ、思い出したよ。戦略部門では一位だったな」
『総合順位では勝てなかったけどね、チャンプ』
「その呼び方はやめてくれないか、というか名前未定にしといたのに良く分かったな」
『機体がいつものカスタムだったからね。僕、チャンプのファンなんだよ』
「ファン‥」
冬馬は絶句した。
『ゲーマーとしてもPDのエースドライバーとしてもね。そういえば、事故の原因は分かったのかい?』
「分からないからこうやってのんびりゲームなんてやってる‥」
『そっか、原因が分かるまでPD-105は動かせないのか』
その時、ビルの陰から小隊の前に頭部が赤く塗られたロボットが現れる。
『テスタロッサだ!』誰かが叫ぶ。
銃を構える隙も与えず、テスタロッサと呼ばれたロボットは手にしたヒートナイフで先頭に立つロボットを切り裂くと、再び物陰へと消え去った。
「速い‥ビームライフルじゃなく、敢えてヒートナイフで接近戦とは、何者なんだ‥」
冬馬が感嘆する。
『現在、全国ランキング一位のテスタロッサだよ。ここでチャンプとの対決が見れるなんてラッキーだな』
RevHはうれしそうに言った。
散開する小隊、
『違う、それじゃ数的優位を保てない』
駄目だしするRevH。テスタロッサは1機ずつ確実に仕留めていく。
『ほらー、言わんこっちゃない』
RevHはテスタロッサの行動を先読みして身を隠した。
冬馬の前に立ちはだかるテスタロッサ。
「お手並み拝見かな‥」
ヒートサーベルを構え直す冬馬。
次の瞬間、テスタロッサの姿が消滅した。
『テスタロッサ ガ ログアウト シマシタ 作戦未完了 ノ為 今回ノ戦闘ハ リセット 原状復帰シマス』
メッセージ音声と共に破壊されたロボットが復活する。
「このタイミングでログアウトだと‥」
訝《いぶか》しげな冬馬に対してRevHは相変わらず楽し気だった、
『いやあ世紀の対決が見れなくて残念。でも何があったんだろうね』
* * *
城杜《しろもり》大学 ロボット研究所(ラボ)
「アヤカ、何すんのよ!」
VRゴーグルを外した新谷ろんり(本名、蓼丸論里)は目の前にいる双子の姉、綾可を睨んでいた。
「もうちょっとで敵を殲滅出来たのに、勝手にログアウトさせる事ないじゃない」
「勝手に部室に入って、勝手に他人のPCを使用している人が言うセリフではありませんね」
「ここのPCは無駄にハイスペックだからバトルボッツやるのには丁度いいのよ。あたし一応アイドルだし、ゲーセンとか行きにくいじゃん?」
「それで、わざわざ大学まで来た要件は何ですか。ゲームをやりに来た訳ではないですよね」
「そう、それで待ってたのよ!アヤカ、あの事故について何か知ってるでしょ、隠してもムダだからね」
「別に何も隠すつもりはありませんが、事故調査員の方がここに来た件を言っているなら、もう帰られましたよ」
「えー、何で引き止めといてくれなかったのよ!」
「ロンリ、何をそんなに躍起になっているんですか?」
「それは今回の事故とあの日の事故が関係あるからじゃない!」
そう言うと、ろんりは綾可の手を握った。
―回想
慌しく動き回る大人たちを綾可はぼんやりと見ていた。
「意識レベル、低下しています」
「何が起こっているのか、ちゃんと説明してください!」
(叫んでいるのはお母さんだ‥)
「落ち着きなさい」
(なだめているのはお父さん‥)
「話が違う、テストに危険性はないと言っていたじゃないですか」
「奇跡が起きたんです、アルファは人間を理解しようとしている」
「そんな事どうでもいいわ、早く何とかしてください!」
「待ってください、これは素晴らしい成果なんですよ。今、人類の夢だった人口知性が誕生しようとしているです」
(今しゃべっているのは誰だっけ‥)
「何を言ってるんですか!論里に何かあったらどうするんです!」
「電源を切りましょう。それしかない!」
「待ってください!アルファはまだ不安定です。安定さえすれば全ては落ち着きます、危険はありません。もし今、電源を切ったら、せっかく完成しつつある量子リンクが崩壊し、人口知性は消滅してしまいます」
「電源を切断するんです!この子の精神がアルファに取り込まれてしまう前に‥」―
「5年前の出来事、あたしにとってはアヤカと共有したこの記憶が全てなのよ。
でもあの事故の時、抜け落ちてる記憶が一瞬蘇ったような気がした‥ねえ、これはあの時の真実を知るチャンスなんだわ!」
「それならば尚更協力は拒否します。5年前、ロンリは3日間も意識不明になったんですよ。みんなどれだけ心配したか‥もしまた同じ事が起こって、取り返しの付かない事にでもなったら、わたしは‥」
いつも冷静な綾香が珍しく目に涙を浮かべた。
「分かったわよ、アヤカには頼まない、あたし一人で何とかするわ」
「その言い方は卑怯です。そういう言われ方をされたら‥わたしは協力するしかないじゃないですか‥」
ここはオンラインゲーム『バトルボッツ』の中、戦闘ミッション遂行中だ。
―2時間前、ハヤセモータース PD開発課 ポートタウン工事現場事務所
「急に休みって言われてもな‥」
冬馬が不服そうに言う。
「しょうがないじゃない、105は動かせないし、やる事無いのよ。冬馬もこの機会に有給消化しときなさい‥」
佐伯も不本意そうな口調で言った。―
という訳で久しぶりにゲームセンターに来た冬馬は、オンラインゲーム『バトルボッツ』のシートに居た。
『ようチャンプ、久しぶりじゃない』
一人のプレイヤーが通信で妙に馴れ馴れしく話しかけてきた。
「チャンプ?誰の事だ」
『去年のバトルボッツグランプリ優勝者、KAIでしょ』
「あんた誰だ?」
『覚えてない?グランプリ準優勝のRevHだよ』
「ああ、思い出したよ。戦略部門では一位だったな」
『総合順位では勝てなかったけどね、チャンプ』
「その呼び方はやめてくれないか、というか名前未定にしといたのに良く分かったな」
『機体がいつものカスタムだったからね。僕、チャンプのファンなんだよ』
「ファン‥」
冬馬は絶句した。
『ゲーマーとしてもPDのエースドライバーとしてもね。そういえば、事故の原因は分かったのかい?』
「分からないからこうやってのんびりゲームなんてやってる‥」
『そっか、原因が分かるまでPD-105は動かせないのか』
その時、ビルの陰から小隊の前に頭部が赤く塗られたロボットが現れる。
『テスタロッサだ!』誰かが叫ぶ。
銃を構える隙も与えず、テスタロッサと呼ばれたロボットは手にしたヒートナイフで先頭に立つロボットを切り裂くと、再び物陰へと消え去った。
「速い‥ビームライフルじゃなく、敢えてヒートナイフで接近戦とは、何者なんだ‥」
冬馬が感嘆する。
『現在、全国ランキング一位のテスタロッサだよ。ここでチャンプとの対決が見れるなんてラッキーだな』
RevHはうれしそうに言った。
散開する小隊、
『違う、それじゃ数的優位を保てない』
駄目だしするRevH。テスタロッサは1機ずつ確実に仕留めていく。
『ほらー、言わんこっちゃない』
RevHはテスタロッサの行動を先読みして身を隠した。
冬馬の前に立ちはだかるテスタロッサ。
「お手並み拝見かな‥」
ヒートサーベルを構え直す冬馬。
次の瞬間、テスタロッサの姿が消滅した。
『テスタロッサ ガ ログアウト シマシタ 作戦未完了 ノ為 今回ノ戦闘ハ リセット 原状復帰シマス』
メッセージ音声と共に破壊されたロボットが復活する。
「このタイミングでログアウトだと‥」
訝《いぶか》しげな冬馬に対してRevHは相変わらず楽し気だった、
『いやあ世紀の対決が見れなくて残念。でも何があったんだろうね』
* * *
城杜《しろもり》大学 ロボット研究所(ラボ)
「アヤカ、何すんのよ!」
VRゴーグルを外した新谷ろんり(本名、蓼丸論里)は目の前にいる双子の姉、綾可を睨んでいた。
「もうちょっとで敵を殲滅出来たのに、勝手にログアウトさせる事ないじゃない」
「勝手に部室に入って、勝手に他人のPCを使用している人が言うセリフではありませんね」
「ここのPCは無駄にハイスペックだからバトルボッツやるのには丁度いいのよ。あたし一応アイドルだし、ゲーセンとか行きにくいじゃん?」
「それで、わざわざ大学まで来た要件は何ですか。ゲームをやりに来た訳ではないですよね」
「そう、それで待ってたのよ!アヤカ、あの事故について何か知ってるでしょ、隠してもムダだからね」
「別に何も隠すつもりはありませんが、事故調査員の方がここに来た件を言っているなら、もう帰られましたよ」
「えー、何で引き止めといてくれなかったのよ!」
「ロンリ、何をそんなに躍起になっているんですか?」
「それは今回の事故とあの日の事故が関係あるからじゃない!」
そう言うと、ろんりは綾可の手を握った。
―回想
慌しく動き回る大人たちを綾可はぼんやりと見ていた。
「意識レベル、低下しています」
「何が起こっているのか、ちゃんと説明してください!」
(叫んでいるのはお母さんだ‥)
「落ち着きなさい」
(なだめているのはお父さん‥)
「話が違う、テストに危険性はないと言っていたじゃないですか」
「奇跡が起きたんです、アルファは人間を理解しようとしている」
「そんな事どうでもいいわ、早く何とかしてください!」
「待ってください、これは素晴らしい成果なんですよ。今、人類の夢だった人口知性が誕生しようとしているです」
(今しゃべっているのは誰だっけ‥)
「何を言ってるんですか!論里に何かあったらどうするんです!」
「電源を切りましょう。それしかない!」
「待ってください!アルファはまだ不安定です。安定さえすれば全ては落ち着きます、危険はありません。もし今、電源を切ったら、せっかく完成しつつある量子リンクが崩壊し、人口知性は消滅してしまいます」
「電源を切断するんです!この子の精神がアルファに取り込まれてしまう前に‥」―
「5年前の出来事、あたしにとってはアヤカと共有したこの記憶が全てなのよ。
でもあの事故の時、抜け落ちてる記憶が一瞬蘇ったような気がした‥ねえ、これはあの時の真実を知るチャンスなんだわ!」
「それならば尚更協力は拒否します。5年前、ロンリは3日間も意識不明になったんですよ。みんなどれだけ心配したか‥もしまた同じ事が起こって、取り返しの付かない事にでもなったら、わたしは‥」
いつも冷静な綾香が珍しく目に涙を浮かべた。
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「その言い方は卑怯です。そういう言われ方をされたら‥わたしは協力するしかないじゃないですか‥」
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