スピードスケープ2025 -ロボット暴走!調査編-

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第19話

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「解体されたアルファの制御ユニットは廃棄はいきされず、桐生きりゅう博士が隠し持っていた。そして博士は自ら姿を隠し研究を続けていた‥黒崎さん、あなたは、博士からアルファを託された、もしくは‥、違いますか?」
章生あきおの言葉に黒崎は怒りを露わにした。
「盗んだのは博士の方だ、アルファは元々僕のアイディアだったんだ!」

―7年前
「完全自立行動型AIロボットですか‥」
桐生は困惑した表情で黒崎を見た。
「部外者の僕が言うのもなんですが、博士のAIコンピューターなら人間より早くて正確な状況判断ができます。どうしてロボットの操縦を人間が行う事にこだわるんですか?」
「AIが高い知能を持つほど、主導権は人間が握っておく必要があるのです」
「何故です?これは平和に貢献する技術なんですよ!これが実現すれば人間は危険な作業から解放されるわけですし‥」
「危険な作業をリモートで行わせる事には賛成です。瞬間的な判断をAIに頼るのもいいでしょう。でも最終決定は人間が行わなければならない、これは絶対マストです」
「リモートではレスポンスに限界があります。それじゃ人間の操縦を超える事ができない」
「人が作ったものに、人は最後まで責任を持たなければならない‥君は人間を超える事にこだわっているようですが、同時にその危険性を考慮しなければなりません」
特異点シンギュラリティですか、博士からそんな言い古された話を聞かされるとは‥幻滅げんめつしました」
「残念です、君になら理解してもらえると思ったのですが‥」

―3年前
ハヤセモーター社長室
社長の早瀬正造しょうぞうとその前に立つ黒崎。
「入社間もないが君の才能を信じて重要プロジェクトを任せる事にしたよ」
「ありがとうございます」
「経産省の一部とロボット推進委員会の議員が、日本の兵器輸出解禁に向けて水面下で動いている。その目玉となるのがロボット兵士だ。
君にはPDの開発と共に兵器への転用作業も進めてほしい」

―2年6ヶ月前
ハヤセモーター資料室
桐生博士の殴り書きがされた資料を見つけ、震える手で握り締める黒崎。
「‥アルファ‥そういう事だったのか‥くそ、博士が本当に研究していたものはこれだったんだ‥」

―2年前
モスクワ郊外の廃倉庫、棚に置かれた埃まみれの小箱を取り上げる黒崎。
「遂に見付けたぞ、僕はを手に入れたんだ‥」
入り口に立つ人影。
「どなたかな‥」
「お忘れですか博士?黒崎ですよ」
「ああ、思い出しました、よく講演会に来てくれていましたね。何か御用でしょうか」
桐生は穏やかな笑顔を向ける。
「僕は今、ハヤセモーターでPD設計開発のリーダーをしています」
黒崎は挑戦的に睨んだ。
「‥そうですか、それはおめでとうございます」
言葉とは逆に桐生の表情がくもった。
小箱を桐生にかざす黒崎。
「僕のアイディアを盗みましたね」
「どういう意味ですか?」
「これは何です?そう、僕が考えた完全自立行動型AIロボットの制御ユニットだ!」
「君は勘違いしています、アルファはあくまでも人を目的地に運ぶ為の移動手段です。行動をナビゲートはしても勝手に行動する事はありません」
「嘘だ!僕は知っていますよ、ペドロギスタン紛争に投入されたロボット兵の存在を‥すぐ分かりました、あれこそ博士が目指していた理想のロボットだって」
「違います!あれは間違った選択でした。最後までアルファを破壊の道具に用いてはいけなかったのです」
「間違った?何を言ってるんです、人間に代わって危険な任務を遂行する、これが最良の形じゃないですか。これは僕が使わせてもらいます、僕にはアルファが必要なんだ」
「君が今もそう思っているなら、アルファは渡せません、絶対に」―

「盗んだんじゃない、僕はアルファを取り返したんだ‥」
黒崎は自分に言い聞かせる様に言った。
「それで、桐生きりゅう博士はどうしたんですか?今どこにいるんですか?」
章生の質問に黒崎は口籠くちごもった。
「し、知らないな‥」
その一瞬の沈黙は最悪の結末を想像させるに十分だった。
「まさか‥」
「署で詳しい話を聞かせてもらえますかな?黒崎さん‥」
丹下たんげが黒崎の腕を取った。
「・・・・・」
「電源を切断してPCを押収します」
科捜研の樺島かばしまが黒崎のPCを操作する。
「そこ、勝手な事をするな!」
黒崎が血相を変えて振り返った。
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